シリーズ・学びを変える新しい学習評価

ぎょうせい

【新刊紹介】「小学校 社会」 単元の目標を踏まえ、学習と指導に生きる評価を―『シリーズ・学びを変える新しい学習評価 理論・実践編2 各教科等の学びと新しい学習評価』より

授業づくりと評価

2019.12.16

(株)ぎょうせいはこのほど、新しい指導要録にもとづく学習評価が、新学習指導要領の完全実施と同じく、小学校は2020年度、中学校は2021年度スタートすることを受け、『2019年改訂指導要録対応 シリーズ・学びを変える新しい学習評価』(全5巻)を一斉刊行いたしました。

ここでは、特に『シリーズ・学びを変える新しい学習評価 理論・実践編2 各教科等の学びと新しい学習評価』第8章 各教科の学習評価のポイント から内容の一部を抜粋してお届けいたします。(編集部)

 

第8章 各教科の学習評価のポイント
小学校 社会 単元の目標を踏まえ、学習と指導に生きる評価を

(1)社会科の単元目標と評価規準

 学習評価の基本は目標に準拠して評価することであり、そのためには単元(小単元)の目標設定の在り方が課題になる。目標を設定することには、指導においてすべての子どもたちに実現させるという極めて重い役割がある。学習の結果がどうだったかを評定する前に、指導の過程において目標のより高い実現を目指すことは授業者の責務である。
 今回の学習指導要領では、教科目標をはじめ、各学年の目標が「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の3項目(「資質・能力」の「三つの柱」)から示されている。これを踏まえると、単元(小単元)の目標は上記の3項目を踏まえて構成することが妥当であると考える。例えば、4年の「自然災害から人々を守る活動」に関する単元を例にすると、次のような目標を設定することができる。
 ①  地域の関係機関や人々は、自然災害に対して、様々な協力をして対処してきたことや今後想定される災害に対して、様々な備えをしていることを理解するとともに、聞き取り調査をしたり地図や年表などの資料で調べたりして、まとめる技能を身に付けることができる。
 ②  過去に発生した地域の自然災害、関係機関の協力などに着目して、災害から人々を
守る活動を捉え、その働きを考え、表現することができる。
 ③  主体的に問題解決に取り組む態度や学習したことを社会生活に生かそうとする態度とともに、地域社会に対する誇りや愛情、地域社会の一員としての自覚を養うようにする。
 これらを一文に表すこともできるが、長蛇になり、わかりにくくなる。これらの各項目は学習評価の観点ともリンクしており、文末を変えるだけで観点ごとの評価規準として読み変えることができる。作業の手間も省ける。③の後半に示された誇りや愛情、自覚といった内心に関わる部分は個人内評価が実施され、評価規準から除外される。
 なお、北 俊夫編著『平成29年改訂 小学校教育課程実践講座 社会』(ぎょうせい、2018)には、全学年、全単元(小単元)の目標と指導計画が紹介されているので参考にしていただきたい。

(2)観点別評価の課題とポイント

 学習評価の基本は従来から観点別評価とされてきた。社会科においては、これまでの観点名と大きく改められたところはないが、各観点の趣旨を確認しておきたい。
 「知識・技能」の観点は、従来の「知識・理解」と「観察・資料活用の技能」を合体したものである。知識に関しては、用語や具体的知識の習得状況だけでなく、それらの知識を活用して汎用性のある概念的知識(学習指導要領の各内容のアの(ア)などに示されている事項)を理解しているかを合わせて評価する。指導する内容を明確にした「知識の構造図」を作成することが一層重要になる。技能については、観察や見学、調査、資料活用を通して情報の収集・分析・整理などの技能を習得しているかだけでなく、それらの技能を効果的に活用しているかについても評価する。
 「思考・判断・表現」の観点は、思考力、判断力、表現力等の能力が身に付いているかどうかを評価するものである。思考する、判断する、表現するなどの活動を評価することで留まらないようにしたい。活動を通して能力の育成状況を評価することがポイントである。そのためには、思考力とは何か。判断力とは何か。表現力とはどのような能力なのかを改めて確認し、それらの能力を育てる指導方法を開発することが急務である。
 「主体的に学習に取り組む態度」の観点は、自らの学習の方向を見定め、自己調整しながら問題解決に粘り強く取り組んでいるか。学習したことを社会生活に生かそうとしているかを評価するものである。そのためには、単元や学期など長期的な視点に立って、子ども一人一人の成長の状況を評価することが重要になる。

(3)「学習と指導」に生きる評価の在り方

 従来から、「指導に生きる評価」とか「指導と評価の一体化」などと言われてきたように、学習評価が教師の指導の一環として捉えられてきた。これからは、評価情報を子どもにも日常的にフィードバックさせ、子ども自身が自らの学習を改善していくようにする。子どもが自らの学習を改善する行為は、粘り強さを発揮しながら学習を自己調整していることであり、学びをより深まりのあるものにしようとしている姿である。
 そのためには、子どもたちに評価結果を単元末や学期末に提供するのでは遅い。教師が把握した評価情報を一人一人に日常的に提供し、それらの活用状況を見守りたい。教師が評価結果をもとに授業改善を図るように、子どもも結果を踏まえ自らの学習改善を図ること、これが「子どもの学習と教師の指導に生きる評価」である。
 指導計画を作成する際に、子どもたちがつまずいたり壁に遭遇したりしたとき、どのような手だてをとるかを予め計画しておくとよい。例えば、ヒントになる資料を用意しておく。助言の言葉を考えておく。補足の活動を計画しておくなどが考えられる。
(北 俊夫)

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