誌上ワークショップ! 目からウロコの働き方改革 [リレー連載・第5回] だれもが、何かの改革者になることができる
トピック教育課題
2023.03.17
誌上ワークショップ! 目からウロコの働き方改革 [リレー連載・第5回]
だれもが、何かの改革者になることができる
先生の幸せ研究所 学校向けの業務改革・組織風土改革コンサルタント
大野大輔
「1人の10歩より、10人の1歩」という言葉を、尊敬する先輩からいただきました。カリスマ的な改革者1人が推進し、いくつも改革を成す例もあります。これはもちろん素晴らしいことですが、実際にはカリスマ的な改革者がいない職場がほとんどです。
働き方改革と聞くと、「管理職や行政が進めること」という捉えをされることもあり、当事者どころか、「うちの学校の校長は、本当に改革をしてくれない」とむしろ第三者として嘆く声を聞くこともあります。でも見方を変えれば、その嘆きはチャンスです。「変わってほしい」という願いがあるからです。愚痴や嘆きの裏には、必ず改革の糸口があります。つまり、「だれもが、何かの改革者になることができる」と確信しています。
では、どうすれば改革の当事者を増やすことができるのか。そのカギは「日常的な対話」です。【図1】をご覧ください。これらは、私が日常的な対話を中心に働き方改革を進めたことで実現できた改革のまとめです。
これらは、大きなワークショップをしたわけではなく、日常的な対話の中から生まれたアイデアをアクションにつなげた、改革の当事者6名の方々の成果です。さらに「いつでも、どこでも、だれでも実践できる対話」ですので、みなさんの職場でも実践してみてください。
改革の当事者を増やす対話
[対話の流れ]
2 自分の分掌に関する裁量権を探る対話
1 理想と現在地のギャップに気付く対話
「毎日勤務時間の中で1時間、好きなことに使える時間があったら何をしたいですか?」この問いはワクワクを引き出すことができます。「そうだ。私はこれがやりたいから先生になったんだ」と、しまっていた自分にとって本当に価値のある時間が一人一人にあるはずです。
この問いにより、ワクワクと理想と現在地のギャップに気付くことができると考えています。すると、働き方改革の必要感をもつことができ、「そのためにはどうしたらよいのか?」と当事者へ誘えると考えます。
【図2】をご覧ください。このツールは右上に理想の状態を描き、左下に現在地の状態を表します。その後に、左上には自助(自分自身で行う働き方改革)をブレスト的に挙げ、右下には共助(みんなと話し合って行う働き方改革)について挙げます。重要なことは、これを対話に生かすことです。「たしかに、その未来いいですね!」「どうしたら1時間を生みだせますかね?」「これは手放すことができるかも」「夕会をICT化するのはどうかな?」などと、「いいね!」を合言葉に対話に生かしましょう。
【図2】働き方改革で描く未来図(山本崇雄著『「学びのミライ地図」の描き方』学陽書房、2022をもとに作成)
2 自分の分掌に関する裁量権を探る対話
働き方改革の必要感を共有することができても、「でも、実際は変えられないことが多いからなぁ」という状態では進みません。そこで、一人一人の分掌に関して裁量権を探る対話をしてみましょう。伴走者として、問いかけたり、共に探ったりすることで、当事者を増やすことができます。特に○○主任と役職がついている方ほど、裁量権が大きいので、その方々をまずはターゲットにするとよいです。校内研究主任を例に、裁量権を探る対話について説明します。
①裁量権を問い直す「問い」
本校では【写真1】のようなサロンというとても小さなカフェスペースがあり、そこで対話が自然と始まることがあります。そこで例えば、「校内研究って、“こうしなければいけない”っていうきまりってあるんですかね?」と井戸端会議的に研究主任の方に問いかけてみます。すると、「んー学校によって異なるし、かなり自由度は高いのかもね」と、裁量権を問い直すことができます。
【写真1】サロン
②裁量権に関する情報収集
その後、一緒に調べると、かなり裁量権があることに気付きます。指導案を簡易化した学校、研究授業を廃止し学びたいことを一人一人が決めて行うプロジェクト研究的な学校など「研究主任によって、在り方を変えることができる」ことを知ることができます。
③変えたいことを決める
裁量権を知った後は「何か変えたいことはありますか?」と問い、一つ決めてもらいます。その後、そのための根回しや資料作成に伴走する中で、その方は改革の当事者になっているはずです。
働き方改革と聞くと、重たいイメージをもつ方がいます。だからこそ、ワクワクから出発したり、日々の何気ない対話から始めてみたりすることが重要です。「1人の10歩より、10人の1歩」を合言葉に、日常的な対話を大切にし、当事者を少しずつ増やしていきましょう。
Profile
大野大輔 おおの・だいすけ
大学卒業後、東京都足立区立小学校で7年間勤務し、トップダウンではなくボトムアップによる校内の業務改善・行事の在り方の問い直しを手掛ける。その後、東京都北区立小学校へ異動し、研究主任として対話を中心とした校内研究変革を実施。ここ数年は自校のみならず、改革の当事者を増やすミドルリーダーとして、「月曜日に子どもも大人も来たくなる学校」を増やす仕事にシフトしつつ、その取り組みを全国に広げるために先生の幸せ研究所パートナーコンサルタントとして兼業している。