誌上ワークショップ! 目からウロコの働き方改革 [リレー連載・第2回] 見える成果を挙げるために見えにくい部分に目を向ける

トピック教育課題

2022.09.21

誌上ワークショップ! 目からウロコの働き方改革 [リレー連載・第2回] 
見える成果を挙げるために見えにくい部分に目を向ける

先生の幸せ研究所 学校向けの業務改善・組織風土改革コンサルタント
若林健治

『教育実践ライブラリ』Vol.2 2022年7

 学校における働き方改革の推進は文部科学省でも重要施策の1つとして位置付けられていますが、実際の現場では取り組み状況や受け止め方を含めてまちまちというのが現状です。上手く進んでいる場合もありますが、苦労されている学校や教育委員会からはよくこんな声を聞きます。

●「方針を策定して具体的に施策を進めているのに成果につながらない」という教育委員会
●「自分たちでできることはやり尽くして、もうこれ以上は無理」という学校管理職
●「大事だとはわかっているけど何から始めたらよいかわからない」や「他の先生たちの反対にあう/実際に反対にあって何も変えられなかった」という現場

 そんなふうに取り組んでも成果が出ないとか、何から取り組めばよいかわからない場合は、あえて見える成果を追うのではなく、一度立ち止まって見えにくい部分に目を向けることが大切です【図1】


【図1】

 例えば、留守番電話の設置であれば技術的には何の障壁もなく導入できますが、学校側は「自分の学校だけ導入すると足並みが揃わない」とか「保護者の理解を得られないのではないか」など、とても慎重になります。そういった個人の意識や組織全体の風土といった見えにくい部分に目を向けることで、なかなか働き方改革や業務改善が進まない本当の理由を探り当て、取り組みを前に進めていくための突破口が見つかります。

見えにくい部分の奥に潜んでいる思考・行動の癖

 個人の思考や行動が形成される裏側には「○○すべき、○○しなければならない、普通は・常識は......」といった思い込みや固定観念があり、さらにそう考えるに至った背景やきっかけ(忘れていることも多い)があります。

 例えば、教員5年目くらいのAさんとBさんがいたとします。Aさんは初任者のときに「一人の大人が1年間責任もって関わってこそ教育」と教わり、できる限り担任が一人で対応しなければならないと思っています。一方でBさんは「いろんな大人が関わる方が子どもがよく育つ」と教わり、担任だけで抱え込んではいけないと思っています。そんなときに「学級の枠をやめて、複数担任制を検討したい」と言われた場合、AさんとBさんの反応(行動や言動などの見えやすい部分)は対照的なものになりますが、その背後にある思い込みや固定観念、それを形成した背景やできごと(見えにくい部分)まで遡らないと自己理解や相互理解は深まりません【図2】


【図2】

思考・行動の癖に自覚的になれる思考法(クリティカルシンキング)

 学校内で働き方改革/業務改善に取り組んでいくときにも同じようなことが起こります。思い込みや固定観念のような思考・行動の癖を専門用語で「バイアス」と言い、どんな人でも沢山のバイアスを持っています。特に幼少期や初めて経験することが強く自分の中にデータとして書き込まれると言われますが、それを自覚することで良いものは残し、良くないものは書き換えたり削除したりできます。それを可能にするのがクリティカルシンキングです。

 実際に弊社がご支援した学校では、現状を見直していく際に皆が持っているバイアスに自覚的になることで「なぜそう思っていたんだろう?」「本当に必要なの?」という思考が生まれ、現状のやり方を思い切って手放すという結論に至りました【図3】。


【図3】

見えにくい部分から見える成果につなげる

 働き方改革や業務改善を始める段階で既にあきらめがちだったり、取り組みが停滞してしまっている場合、「するべき、してはいけない、ふつう・常識、やっぱり、できない、あの人はこうだ」といったバイアスが邪魔をしていないか考えてみてはいかがでしょうか。個人では自分との対話を、組織では停滞や対立が起こっている本当の理由を話し合ってみることで、「対立から対話」に変化していくことが大切です。

 子どもの学びを豊かなものにするために、先生のゆとりや余白を生みだすという目的さえ一致していれば、取り得る手段は無限にあり、教職員の皆さんご自身の力で必ず納得解を見出すことができます。

 

 

Profile
若林健治 わかばやし・けんじ

 東京工業大学卒業後、総合コンサルティング会社に入社し、企業向けの経営改革・業務改革プロジェクトを手掛ける。その後、双子の娘の誕生がキッカケになり、「なりたい自分」や「つくりたい世界」に向って自ら学び、自分を変えていける人で溢れた社会を目指して、ここ数年は学校や教育行政の主体的な変革を後押しする仕事にシフトしている。令和3年経済産業省「未来の教室」実証事業「教師のわくわくを中心にしたPBL型業務改善」をはじめ、多数の自治体や学校で伴走支援や働き方改革の研修講師を担当している。

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