誌上ワークショップ! 目からウロコの働き方改革 [リレー連載・第3回] 時間予算ワークショップで改善アイデアを出し合う
トピック教育課題
2023.01.05
誌上ワークショップ! 目からウロコの働き方改革 [リレー連載・第3回]
時間予算ワークショップで改善アイデアを出し合う
先生の幸せ研究所 学校向けの業務改善・組織風土改革コンサルタント
若林健治
「自分たちでできることはやり尽くして、もうこれ以上は無理」という学校でも、やり方次第で新たにたくさんのアイデアを生み出すことができます。今回はこれまで10都道府県政令市、100校以上で実績がある、明日から時間を生み出す「時間予算ワークショップ」について、実際の流れをご紹介します。ぜひ皆さんの学校でも試してみてください。
時間予算ワークショップとは?
教職員一人一人の時間をお金と同じように資源と捉えて時間への意識を高めつつ、校内全員で知恵を出し合いながら具体的な改善活動につなげていくためのワークショップです。対面での集合研修が理想的ですが、オンラインでも実施可能です(所要時間:60分程度)。
[事前準備]
①チーム分け:1チーム4名程度で話しやすいメンバー同士※
※学年ごとなど日頃一緒に仕事をしている、または若手・中堅・ベテランなど。
②準備物:模造紙、付箋※、ペン、A4用紙、その他(時程表、年間予定表など)
※できる限り発案した人の役職や立場が影響しないように全員同色が望ましい。
[ワークショップの流れ【図1】]
チェックインとして、「今の自分の働き方は10点満点で何点くらい?」「働き方改革や業務改善は何のために?」などの問いを設定し、軽く話し合ってからワークショップに入ると、「この場では何を言ってもよいんだ!」という安心感につながります。さらに一般的なブレストと同じワークの約束(グラウンドルール)を設定することで、普段思っていても口に出せなかったアイデアを出しやすくなります。
●「判断回避」:できるかどうかは考えない(後回しでOK!) ●「突飛さ歓迎」:今までにないアイデアを歓迎する(人の意見を否定しない!) ●「質より量」:深く考えすぎず、思いつくままにアイデアを出す(どんどんアイデアを!) ●「他の人に便乗」:他の人が出したアイデアから着想を得る(それができるならこれも!)
ワークショップ参加者から挙がる声
過去に実施した学校では、60分で100個以上のアイデアが出されたこともありますし、GoogleのJamboardなどを使用すればオンラインでも実施できます【図2】。
また、参加者からは「普段話す機会が少ない先生と話せてよかった」「自分と同じ考えを持っている先生が多いのがわかって、みんなで変えていけそうな気がした」「思った以上に個人・学校裁量で取り組める改善アイデアが多いと気づいた」「こういう話し合いの時間がもっと必要だと感じた」といった感想が多く寄せられています。
校内で課題や改善アイデアを集める際にアンケートフォームを利用するのも効率的なやり方ですが、実際には「欲しい意見がなかなか集まらない」という声を聞きます。「他の先生が何を書くのかが見えないため、自分だけが本音を書くと悪目立ちしてしまうんじゃないか……」「書いた内容がどう活かされるのかわからないので(どうせ意見を書いても変わらないというあきらめ)、モチベーションが湧かない……」という心理は皆さんもよく理解できるのではないでしょうか。
ワークショップ実施後の流れ(少しずつでも歩みを進めるために)
コロナ感染対策によって、先生同士のコミュニケーションが不足しており、本ワークショップのような時間や場はとても有意義だと感じる人が多い一方で、ワークショップのやりっぱなし・アイデアの出しっぱなしになると、結局働き方改革/業務改善は進みません。
少しずつでも歩みを進めていくため、最初に必要なのは挙がったアイデアを推進するための体制を構築しつつ、校内の正式な取組として時間を捻出するために管理職のお墨付きをもらうことです。次に体制が整ったら具体的に挙がったアイデアをリスト化・分類分けして、「すぐにできること」は明日にでも、「時間はかかるがやってみたいこと」はじっくり腰を据えて方針や対応案を検討し、次年度以降に実現できるようにメリハリをつけて進めていくことです。特に前者は小さな一歩かもしれませんが、自分たちで挙げたアイデアが採用され、実際に学校が変わるという「小さな成功体験」がモチベーションを高め、少しずつ個人の意識・行動変容や組織風土の変革につながるキッカケになります。いきなり大きな変化を起こすのは難しい場合も多いので、「小さく始める」ことで変化を実感し、試行錯誤を続けながらよりよい形にしていけばよいんだ、という気楽さも大切です。
Profile
若林健治 わかばやし・けんじ
東京工業大学卒業後、総合コンサルティング会社に入社し、企業向けの経営改革・業務改革プロジェクトを手掛ける。その後、双子の娘の誕生がキッカケになり、「なりたい自分」や「つくりたい世界」に向って自ら学び、自分を変えていける人で溢れた社会を目指して、ここ数年は学校や教育行政の主体的な変革を後押しする仕事にシフトしている。令和3年経済産業省「未来の教室」実証事業「教師のわくわくを中心にしたPBL型業務改善」をはじめ、多数の自治体や学校で伴走支援や働き方改革の研修講師を担当している。