リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 自分を見つめ、これからを共に考える校長室
トピック教育課題
2022.11.10
リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 我が流儀生まれいづるところ
群馬県渋川市立古巻中学校長
髙橋 充
自分を見つめ、これからを共に考える校長室
古巻中学校のある渋川市は、日本列島のほぼ中央に位置し、へそ地蔵・へそ石等があり、へそ祭りを開催するなど、「日本のまんなか・へそのまち」と言われています。本学区は、市の南部に位置し、古くは三国街道の宿場があり、現在では、上越線の八木原駅、関越自動車道が縦断するなど、古今を通じて交通の要所になっているところです。交通網の発達により、工場が誘致されたり、ショッピングエリアが形成されたりして、人口が増加しています。
本校に校長として赴任して、3年になります。コロナ禍の中で、子どもたちにどのように「生きる力」を育むか、どのような教育活動が展開できるのか、そのことを日々考え、実践してきた3年間でした。赴任当初より、「安全・安心・健康で、生徒や保護者の気持ちに寄り添い、願いを叶える学校」を目指してきました。そして、先生方には、「教育することへの誇りと責任をもち、教えること、子どもを育てることのプロになりましょう。」と呼びかけてきました。
校長室は教師を育成する場所
本校の学校教育目標には、4つの目指す生徒像(写真1)があります。生徒には、儀式や朝礼等でそれらの意味や意義について話してきました。特に、コロナ禍においては、「健康・安全に心がける生徒」を自ら実行できるように指導してきました。
明るく素直な生徒が多いのですが、教室に行くことが困難な生徒も少なくありません。学校では、教室復帰を目指し、心を整理するための教室を学年ごとに準備しています。そこでは、前面の黒板に各学級の授業予定をわかるようにし、個別の学習を職員とともに行っています。自分は、日々立ち寄り声をかけたり、たわいもない話をしたりしながら、個々の生徒との関係づくりをしています。生徒本人の意思が整えば、自身のことやこれからのことについて、対話するようにしています。その際、手立てとなるのは、校長室にある大型モニター(写真2)です。パソコンと接続し、学校のWebページを見たり、職業や適性などの進路情報を見たりしています。同じ画面を共有しながら、自己を見つめさせたり、やる気をもたせたり、これからのことを主体的に考えさせたりしています。
このようなことができるのも、職員との信頼関係があってのことです。常日頃から、生徒や学級・部活動のことで悩みがあると、「ちょっとお時間ありますか。」と校長室に訪れます。その時は、先生方に意欲をもたせ、楽しく仕事ができるような言葉がけを大切にしています。三者面談の時期になると、保護者が希望したり、担任が意図的に仕向けたりして、生徒と保護者、職員が校長室に立ち寄る機会が増えてきます(写真3)。
校長の大切な役割に職員の育成があります。本校の学校教育目標には、3つの目指す教師像があります。これらの目指す教師像を育成する舞台となるのが校長室です。校長室では、ミドルリーダーで構成する研修推進委員会が開催され、教育活動の先導役としての役割を担っています。学力向上、道徳、キャリア教育の推進などを協議し、授業提案等を行います。また、本校では、自己研修課題である個人テーマを設定し、一人一研究授業を実践しています。人事面談と絡めながら、授業を振り返り、指導力の育成に努めています。校長室は、このように「授業を大切にし、自らを高める教師」を育成する場になっています。
また、各種委員会(教員組織)は、学校経営方針を直接伝える場であり、担当となる教職員(主任)の職能成長の上には欠くことのできないものです。校長室での各主任とのやりとりは、OJTの方法を取り入れ、コーチング理論に基づいて、よりよい方向へ向かうようにプラス思考で話し合います。各主任は、話合いを通して、自覚と責任を深め、学校運営への参画意識を高めていきます。校長室は、このように「使命感と責任感を持った教師」を育成する場になっています。
校長は職員を支える存在に
校長への相談は、研修の機会としてとらえ、職員との会話を大切にしています。カウンセリングマインドを大切にし、子どもの見方、教育相談の考え・技能等について語り、資質向上に努めています。自分自身も人間力向上のために公認心理師の資格をとり、先生方のメンタルを支え、学校の中に心の居場所をつくり、温かな雰囲気が醸成するように努めています。校長室での対話は、「健康で人間性豊かな教師」を育成する一助となっています。
何の変哲もない校長室ですが、生徒の活躍の様子がわかる学校通信や学年通信、新聞記事を多く掲示しています(写真4)。生徒や保護者、先生方は、このような校長室で一時を過ごすことにより、学校への誇りと生きることの喜びを少しでももてればと思います。
本年度の第一の成果は、3年生が広島・京都方面に修学旅行に行くことができたことです。中庭には、「被爆アオギリ二世」が植樹され、平和への礎を築くことができました(写真5)。まだまだ課題は山積していますが、校長として、これからも必要となる知識や技能、調整力を身に付けていきたいと思います。