リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 ものを言う ものに成る 人づくり
トピック教育課題
2022.08.25
リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 我が流儀生まれいづるところ
長崎県大村市立玖島中学校長
大場祥一
ものを言う ものに成る 人づくり
我が大村市立玖島中学校は、昭和50年に世界初の海上空港として誕生した長崎空港を擁する「水と緑と花につつまれた大村市」の最南端に位置します。昭和41年の統合により、大村中学校、鈴田中学校、三浦中学校が一つとなって現在に至りますが、肥前大村藩の藩校「五教館」に由来する歴史ある学校でもあります。
その謂れが校章にあります。日本初のキリシタン大名「大村純忠」が統治していた大村家には、替紋の一つとして「日脚紋」がありました。玖島中学校の校章は、その「日脚紋」の24本の放射線状の光芒をもとにデザイン化されています。大村小・玖島中・大村高校の校章は、すべて同じ図柄に、「小」・「中」・「大高」という文字が入っています(写真1)。玖島中学校には、その気概と誇りが根底に流れています。
校舎建て替えにより平成15年度から現在の校舎で「豊かな学び」と「確かな育ち」が繰り広げられています(写真2)。その瀟洒な校舎は、管理棟・芸術棟・教室棟の三棟からなり、床や壁はすべてヒノキ張りで、とても美しく温もりのある空間となっています。校舎の周りには、ケヤキをはじめとした落葉樹がふんだんに植えられ、夏は涼しく冬は暖かい室温が保たれるよう工夫されています。扇の形をした管理棟は、生徒を教え導く教職員一人一人が要に位置し教育活動を展開するという使命感、教師としての矜持を表しています。また、本校はバリアフリーの考え方を校舎建築の折にいち早く取り入れ、エレベーターも完備され、車椅子で体育館や各棟、教室に移動することが可能です。「弱い立場、辛い立場に置かれた子供たちに心を込めて支えていく」ことも、玖島中学校に課せられた使命の一つと捉えています。加えて本校の信条「創造する喜び感動する心」、日常に設えた一つ一つの教育が、やがて非日常として大きく華ひらくことを期して、生徒中心の教育に徹しています(写真3)。
今日まで本校は、校訓「敬愛 規律 自立 健康」を念頭に置き(写真4)、こうした流れや思い、営みを大切にしながら教育活動を積み重ね、その成果が、品格のある落ち着いた生活態度と学習に向かう姿、学校行事や部活動に熱意を持って取り組む姿となって表れています。
生徒は礼儀正しく素直です。その良さは、おとなしい姿、率先した行動やチャレンジすることに躊躇する姿、声に出さない姿、表現力や覇気にやや欠ける姿となり、課題として浮き彫りとなっています。そこで今年度、「ものを言う ものに成る 人づくり」を、職員の総意として学校教育目標に掲げ、教育活動を展開しています(写真5)。
振り返ると厳しかった私の親の教育も含めて「黙っていること」、「多くを語らないこと」、「奥ゆかしさ」等が美徳とされる教育を受けてきたように思います。しかし、生徒たちは、これからこの予測困難な社会、知識基盤社会化やグローバル化の中で、自分の考えや思い等をはっきりと伝え、国際社会や日本社会、また、世の中を生き抜いていかなければなりません。一方では、イヤなことはイヤと言う強い意志、心も必要です。
故郷ひらき 世をひらく
4月1日から成人年齢を「20歳」から「18歳」にする民法や少年法が施行されました。卒業の年度を迎えた3年生は、4年後には、保護者の同意なしに様々な契約や選択が可能となります。自由という権利を得ながらも、一歩間違えば欺されたり、陥れられたり、辱められたり、自ら誤ったり、取り返しのつかないことをしたり……する可能性もあります。生徒たちには、自らの判断で生き、自らの考えを声に出していく。周りの人と折り合いを付けながらより良く生きていく。そのような力を身につけさせたいと考えます。これは、校歌にある「故郷ひらき 世をひらく」人づくりにも通ずるものと確信しています。
大切な生徒でもあり、可愛い後輩でもある子供たち406名の「ものを言うものに成る人づくり」の実現に向け、校長として、13回生の先輩として、31名の教職員との「共創」を常として、生徒一人一人の「学力保障」と「人間性・社会性の涵養」に今日も精励します(写真6)。