聞いて! 我ら「ゆとり世代」の主張 [第1回] 学ぶことが楽しいと感じる子どもを育てる

トピック教育課題

2022.08.29

聞いて! 我ら「ゆとり世代」の主張
[第1回] 学ぶことが楽しいと感じる子どもを育てる

島根県松江市立竹矢小学校教諭 
金木瑛実加

『教育実践ライブラリ』Vol.1 2022年5

「ゆとり世代」の一人として学んできた道

 「ゆとり世代」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか。「競争心が低く主体性が低い」「ストレスへの耐性が低く打たれ弱い」など、どちらかと言えばマイナスなイメージで捉えられることの方が多いのかもしれません。わたしは世間で言う「ゆとり教育」を受けた世代です。しかし、わたし自身はゆとり世代ということをこれまでほとんど意識することなく過ごしてきました。

 わたしは、小さい頃から学校が大好きでした。低学年の頃、担任だった先生はたくさん褒めてくださいました。その先生の姿を見て、わたしも自然と小学校の先生になりたいと思うようになりました。

 わたしはこれまで受けてきた教育から、学ぶことそのものの良さを実感してきています。学びが生活につながり、自分の価値観に影響を受け、人生が豊かになるということを繰り返し経験してきたからです。だからこそ、わたしも「学ぶことが楽しい」と子どもたちが実感できるような教師になることを目指してきました。

 わたしは夢だった小学校の教師の道を歩み、現在も学び続ける日々を送っています。教師になってみて実感しているのは、授業のことを研究したり、自分のスキルアップをしたりする時間や場が圧倒的に少ないということです。医師の世界で例えるなら、技術がないのにいきなり手術をしたりしません。ですが、教師の世界では初心者マークがついていても、初めから他の先輩の先生方と同じようにやっていかなければなりません。ですから、わたしは教師の仕事をすると同時に自分のスキルアップを意識的に行ってきました。教師になったばかりの頃はなかなか積極的に現場の先生方に質問できなかったのが、だんだんとできるようになってきたり、自分であらゆる本を読んだり、授業などについて色々な人と話をしたりしてきました。また、学習会に誘われれば可能な限り参加してきました。わたしが現在も学び続けられるのは、幼い頃から学ぶことが楽しいことだと教わり、実感してきたからでもあると思います。

体験を通して知るということ

 わたしが教師という立場で大事にしていることは、子どもたちが「分かって楽しい!」と実感する授業をすることです。そのような中で力を入れて取り組んできたうちの一つに、「総合的な学習の時間」があります。

 わたしが小学生の頃、3年生から「総合的な学習の時間」が始まりました。当時は、総合的な学習の時間がどのようなものかは意識していませんでしたが、たくさんの体験学習をしたことは印象に残っています。3年生の頃は福祉教育を受けました。身体に障がいがある人のことについて学んだり、地域の老人ホームに出かけたりしました。車椅子に乗って地域へ出かけたり、アイマスク体験で視覚障がいについて学んだりもしました。4年生では、地域のことについて学びました。わたしは学校の近くの銀行について調べ、見学にも行きました。また、わたしのふるさとである松江市は、日本三大和菓子どころとも呼ばれていることを知り、ふるさとに誇りをもつようになりました。高学年になると、異文化の外国のことや、病気のことなどについて学びました。実際に外国の方に学校に来ていただいてお話を聞いたり、自分たちで調べたことを体育館で発表し合うポスターセッションのようなことをしたりしました。わたしはそれまで名前も知らなかったポーランドという国のことを知り、興味をもったことを覚えています。

 自分でも、小学生の頃の学習をこれだけ覚えていることに驚きました。それほどに、体験を通した学習が、印象に残るものなのだと気付かされます。体験を通した学習は、感情を伴って記憶に残りやすいのかもしれません。「知る」ということはとても大切なことだと思います。障がいのことや病気のこと、異文化のことなどについて知る機会がなかったら、わたしはそれらについて偏見をもっていたかもしれません。小さな頃から体験を通して様々なことに触れる機会があったことは、とてもよかったと思います。

 小学校3年生以上になると、社会科や総合的な学習の時間との関連で、地域と関わりのある学習や体験を通して学ぶ学習がぐんと増えてきます。できる限り地域に出かけたり、また地域の方に学校に来ていただいたりしながら子どもたちが体験を通し、実感を伴った学びができるように計画を立てています。教員以外の多様な価値観や経験をもった大人たちと接したり、対話したりすることで、より深い学びとなり、一人一人が自分の新たな学びに気付くことができると思っています。

 これまでも総合的な学習の時間を通じて、わたし自身が学ぶこともたくさんありました。そしてやはり「学ぶことは楽しい」と改めて実感しています。


大豆の収穫の様子

 3年生を担任した時には、地域の方の協力のもとに子どもたちと大豆を育て、収穫し、味噌を作ったり豆腐を作ったりしました。大豆の収穫の時の子どもの振り返りには以下の記述がありました。

きょうは大豆のしゅうかくをみました。一回あたまの中でそうぞうしたいじょうにかっこよかったです。大豆をかったらかならず(機械の)まん中にいくようになっていてすごかったです。

 地域の特産物や地域で働く人について知ることで、「想像した以上にかっこよかった」と子どもたちが地域への愛着をもてたのではないかと思います。また、体験したからこそ実感を伴った学びにつながったのではないかと感じました。

教師としてこれからも学び続ける

 年々時代に求められていることが多様化している今日ですが、教師の仕事として、最も大切にされなければならないもののうちの一つは授業だとわたしは考えています。働き方改革が叫ばれる中、「ゆとり世代」の一人として、ICT活用など一つのやり方に固執するのではなく、工夫次第で様々に順応できるという強みを生かし、学ぶことが楽しいと感じる子どもたちを育てるために、これからも励んでいきたいと思います。

 

 

Profile
金木瑛実加 かなぎ・えみか
 1992年生まれ。小学校の時の担任の先生に憧れ、教師を志しました。2015年、安来市立南小学校から教師生活をスタートさせ、現在教師生活8年目。初任校3年目で特別支援学級の担任を経験したことから、特別支援に関する勉強も始めました。現在、特別支援学級を担任し、「学ぶことが楽しい」と感じる授業づくりに力を入れています。
●モットー
ケセラセラ

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