教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ[第4回] 養護教諭や事務職員と効率的にコミュニケーションをとるワザ
学校マネジメント
2022.02.04
教頭・副校長のための時間が増える! 仕事のワザ
[第4回]養護教諭や事務職員と効率的にコミュニケーションをとるワザ
岐阜聖徳学園大学教授
玉置 崇
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.4 2021年11月)
今回は、教頭・副校長として、一人職である養護教諭や事務職員とコミュニケーションを効率的にとるワザをお伝えします。
養護教諭とつながるワザ
「一人職は孤独だが孤立してはならない」
この言葉は私が作った言葉です。教頭・副校長も一人職です。教職員には言うに言えないこともあって、孤独を感じることがあるでしょう。養護教諭や事務職員も同様に学校で唯一の立場ですから、なかなか業務上の悩みを理解してもらえず、苦しく感じている人もいると思います。教頭・副校長として、養護教諭や事務職員がそのような状況に陥らないように心がけておられると思いますが、大切なことは日ごろからコミュニケーションをとることです。とはいえ、わざわざコミュニケーションの時間を設けることは、忙しさに拍車をかけますからできません。
そのため、私は養護教諭とのコミュニケーションを生み出すために、ほぼ毎日、保健室を訪問していました。業務の監視に来ていると思われてはいけませんので、校内巡回の折に体重を測ることを習慣化していました。
「ああ、1kg増えてしまったなあ。昨晩、食べすぎたかな」とつぶやけば、「ご馳走だったのですね」などと言葉が返ってきて、「そうなのです。久しぶりのステーキでして……」などと、さりげない会話ができます。こうしてコミュニケーションの時間を生み出します。
毎日、わずかでも会話をしていると、ちょっとしたことに気づきます。「今日で健康診断がすべて終わり、あとはデータ整理ですね」「お疲れのようですね。何かありましたか」「さきほど保健室を出て行った子どもへの対応は大変そうですね」など、教頭・副校長が養護教諭の業務を気に留めていることを伝えることができます。
教頭・副校長が保健室に顔を出すことが定着すれば、その折に、いろいろと相談もあることでしょう。あるときは学級担任の理解が得られず、苦しんでいるという相談がありました。学級担任から、「養護教諭が甘いので、あの子どもは保健室に行きたがって困る」と言われて悩んでいるとのことでした。養護教諭の見立てでは、「子どもが保健室に来るのは愛情を求めている証拠。家に帰りたくないと言うこともあり、今は寄り添ってやらなければいけない。ところが担任に伝えても、家庭の状況を保護者から聞くと、あなたが考えているような状況ではないと言われてしまって……」という困りごとでした。
すぐに解決することではありませんが、教頭・副校長に話すことで少しは落ち着いたようです。教頭・副校長の席は、職員室の前方中央にあることが多く、相談したくても、他の教職員の手前、相談しにくいということも心得ておきましょう。
事務職員とつながるワザ
事務職員とのコミュニケーションをとるためのワザもあります。専用の事務室がある学校は少なく、教頭・副校長と事務職員は、職員室で同席していることがほとんどです。この状況を効果的に使い、時間の負担を感じさせないコミュニケーションをとるのです。
事務職員が電話でやりとりしている内容が耳に入ることがあります。私は、その電話の内容をもとに、事務職員へ声をかけることが多くありました。コミュニケーションの良い機会になるからです。
「難しそうな電話でしたね。いつもの〇さんでしたか」「他の学校との調整が必要な感じでしたね」「消耗品が早く届くのですね。皆さん、喜びますよ」などと、耳に入ってきた電話のやりとりをもとに、対応を労わるように声をかけます。業務での電話ですので、管理職はそれを話題にしても問題はありません。事務職員は教頭・副校長が関心を持っていることをむしろ喜んでくれます。
事務職員で途中退職する方の事由を聞くと、一人職であることもあって、自分の業務を理解してもらえないという寂しさや、仕事への評価をしてもらえないという不満があって離職する方があるといいます。教員は同じ業務をしていることから、互いに認め合ったり、励まし合ったりする場面がありますが、事務職員はこうした場面はなく、孤独を感じることがあるのでしょう。だからこそ、教頭・副校長は、日ごろからつながっておくことが大切です。
次のようなことがありました。朝の校内巡視から戻ると、事務職員が「〇年△組担任の□先生に、保護者からとても厳しい電話がありました。ご存じでしょうか」と伝えてくれたのです。担任の電話対応の様子から、事務職員が「これは大変なことだ」と感じたからこその貴重な情報です。こうした情報が教頭・副校長にすぐに伝わるのは、教頭・副校長が事務職員とつながっているからです。
すぐに該当の学年主任に事務職員からの情報を伝えました。主任には担任から相談があったとのことで、まずは、主任の対応に任せることにしました。
この事例を組織として機能していると感じていただけたでしょうか。機能していない場合、事が大きくなってからようやく管理職が知ることになります。それまでの対応を聞くと、初期対応で大きな失敗をしていることがあります。そうならないためにも、教頭・副校長は事務職員とのコミュニケーションを欠いてはいけません。
一人職は養護教諭や事務職員ばかりではありません。スクールカウンセラーやALT、初任者指導教諭など、様々な立場の方が勤務されています。常勤ではないことを踏まえて、いつもつながっていると感じられるように配慮しましょう。
Profile
玉置 崇 たまおき・たかし
1956年生まれ。愛知県公立小中学校教諭、愛知教育大学附属名古屋中学校教官、教頭、校長、愛知県教育委員会主査、教育事務所長などを経験。文部科学省「統合型校務支援システム導入実証研究事業委員長」「新時代の学びにおける先端技術導入実証事業委員」などを歴任。「学校経営」「ミドルリーダー」「授業づくり」などの講演多数。著書:『先生と先生を目指す人の最強バイブルまるごと教師論』(EDUCOM・2020年)、『先生のための話し方の技術』(明治図書・2021年)など多数。