子どものココロが見えるユーモア詩の世界
【「ほんづくり大賞」特別賞を受賞】『子どものココロが見えるユーモア詩の世界』(増田 修治/著)から厳選した詩を紹介 第1回「ボディービルダー」
特別支援教育・生徒指導
2021.02.17
「ほんづくり大賞」で、『ユーモア詩の世界』が特別賞を受賞。
政刊懇談会によって年に1度開催される「ほんづくり大賞」で小社刊『子どものココロが見えるユーモア詩の世界 親・保育者・教師のための子ども理解ガイド』(増田 修治/著)が特別賞を受賞しました。
「ほんづくり大賞」とは
政府刊行物を発行する出版社と全国官報販売協同組合が中心となって結成した政刊懇談会(政府刊行物等普及強化連絡懇談会)が会員各社の出版活動を応援することを目的に年に一度開催されるもの。
著者 増田修治氏が、埼玉県の小学校教諭時代から長年取り組んできた「ユーモア詩」。珠玉の75編と増田氏の的を射たアドバイスは、笑いながら子どもの思い・願い・成長が理解でき、今日からの子育て、保育、教育に生かせること請け合いです。
受賞を記念して、ここでは編集者が厳選したユーモア詩を4回にわたって掲載します。
第1回目は、「第1章 子どもの感性・子どものホンネ」から「ボディービルダー」を紹介します。
詩の紹介
ボディービルダー
長川 翼(3年)
この前テレビで、
ボディービルダーの大会をやっていた。
さっそくぼくとお兄ちゃんは、
服をぬいでパンツ1枚になり、
ボディービルダーのまねをした。
それを見ていた父ちゃんは、
「それじゃダメダメ!」
と言いながら、
けつにパンツをくいこませて歩いていた。
おかしくておかしくて
みんなで大笑いした。
でもこれで終わるわけがない。
最悪なのは母ちゃんだ。
とても人に見せられない
パンツ1枚のかっこうで
ボディービルダーのまねをしていた。
あれでも一応女なんだろうなー。
尊敬集めたお母さん
家族の様子が目の前に浮かんできて、のりやすい私も引きずり込まれそうな気分です。
翼の詩で、学級詩集に載せようかどうか、悩んだことがありました。こんな詩です。
「母ちゃんがおしるこを作ってくれた/でもふつうのおしるこじゃなかった/ウンコの形の団子を作り/おっぱいの形の団子を作っていた/そして、あんこの中に団子を入れて/『ウンコ&おっぱいおしるこの完成』とか言って母ちゃんは喜んでいた」
載せていいかと聞くと、詩を見たお母さんは真っ赤な顔で言いました。
「子どもが書いたのですから、許可なんかいりません」。そしてひと言。「あきらめました」。
それからの翼の詩のイキイキさといったらありません。自由でのびやか。解放された言葉が輝き出したのです。実はその翼のお母さんを、クラスの多くのお母さんがひそかに尊敬していたことが、学年末になって分かりました。「私だったら恥ずかしくて生きていけないほど赤裸々なことを書かれても平気な翼君のお母さんに、尊敬すら感じます」。二十七人中七人がそっくり同じ感想を寄せたのです。堂々と生きる姿に勇気を分けてもらっている気がしたのでしょう。
子どものユーモアは本当に人と人をつなげる力があります。大事に育てたいですね。小さな子どもは、プールの時、真っ裸になって走り回ります。そんなことも温かい目で見てあげたいですね。
本の著者 Profile
増田修治(ますだ・しゅうじ)
1958年生まれ。埼玉大学教育学部卒。小学校教諭として28年間勤務。「ユーモア詩」を用いたユニークな教育の実践はメディアで取り上げられ大きな反響を呼ぶ。2008年より白梅学園大学に勤務。現在、子ども学部子ども学科教授。初等教育の教員育成に携わるとともに、保育・幼児教育・小学校教育における子どもの発達や学力、いじめなど多彩な課題に取り組んでいる。著書に、『笑って伸ばす子どもの力』(主婦の友社)、『「ホンネ」が響き合う教室』(ミネルヴァ書房)、『幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿を育む保育実践32』(黎明書房)など多数。
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