Q&Aスクール・コンプライアンス
最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選 Q114 マスメディアの取材に対応する場合、学校として留意すべきことは何でしょうか。
学校マネジメント
2021.02.18
最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選
第4章 学校運営のコンプライアンス
菱村 幸彦
国立教育政策研究所名誉所員
(『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選』2020年10月)
Q114 マスメディアの取材に対応する場合、学校として留意すべきことは何でしょうか。
◯メディア対応の3原則
かつて文部科学省に在職中、何度かマスメディアの激しい取材攻勢を経験しました。その経験にかんがみ、マスメディアの対応において重要なことは、次の3点と考えています。
第1は、ウソを言わないこと。学校の校長や教頭が意図的にウソをつくことはないと思いますが、苦しまぎれに、つい事実を否定してみたり、事実に反することを言ったりすることが起きやすいものです。しかし、ウソはいずればれます。いったん、ウソをついたとなると、以後マスメディアは信用しなくなります。信用がなくなれば、学校に対する非難はより厳しくなることは必定です。取材を受けたら、正確な情報を提供すべきです。
第2は、言うべきでないことは言わないこと。言うべきでないことは、ノーコメントで通すよりありません。ウソは許されませんが、ノーコメントは許されます。ただし、ノーコメントは、なぜノーコメントなのか、理由を言う必要があります。「プライバシーにかかわるから」「いま調査中だから」など、理由を明らかにする必要があります。ただし、理由を言ったからといって簡単に引き下がるような心優しいメディアはいないと覚悟すべきです。
第3は、取材から逃げないことです。学校がマスメディアの取材から逃げると、そのこと自体が問題となることはすでに述べたとおりです。校長が取材を回避していると、取材活動が他の教職員、あるいは保護者や児童生徒に向かうおそれがあります。それではかえって事態の混乱を招きます。管理職はつらくとも取材から逃げないで、真に対応する覚悟が必要です。ただ、取材から逃げてはなりませんが、取材に無制約に応接する必要はありません。取材はあくまでも学校運営に支障が生じない範囲内で受けるべきです。とくに児童生徒を直接の対象とする取材は拒否すべきです。例えば、教室内にテレビカメラが入ったり、児童生徒に直接インタビューをするようなことは教育的に好ましくありません。こうした取材要請には、児童生徒への悪影響を説明して、取材制限の協力を求めるべきです。
◯その他の留意点
上記のメディア対応の3原則の他に、取材に対応するに当たって留意すべき点について付言しておきます。
(1)正確で新しい情報を提供する(憶測や推測を避ける)。
(2)情報やコメントはできるだけ印刷物にして提供する。
(3)マスメディアの締め切り時間に間に合うように記者会見を開く。
(4)マスメディアとの応答を記録しておく。
(5)取材者の信頼性を確認する。
最後の「取材者の信頼性の確認」は、とくに週刊誌の取材について気をつける必要があります。週刊誌は興味本位の記事とすることがままあるからです。取材に応ずる際、取材者が出版社の記者か、部外のライターかで記事のまとめ方が違ってくる場合が少なくありません。あらかじめ、その点を確認し、応答には十分に注意する必要があります。基本的にしゃべりすぎないことが肝要でしょう。
Profile
菱村 幸彦(ひしむら・ゆきひこ)
京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課 長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等 学校長などを歴任。現在、国立教育政策研究所名誉所員。
著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ 教育法規』(教育開発研究所)、『管理職のためのスクール・コンプライアンス』(ぎょうせい)、『戦後教育はなぜ紛糾したのか』(教育開発研究所)、 『はじめて学ぶ教育法規』(教育開発研究所)、『やさしい教育法規の読み方』 (教育開発研究所)など多数。