月刊 ガバナンス 2024年3月号  特集1:大規模災害にどう備えるか──能登半島地震で見えた課題 特集2:災害とこころのケア|地方自治、法令・判例のぎょうせいオンライン
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月刊 ガバナンス 2024年3月号  特集1:大規模災害にどう備えるか──能登半島地震で見えた課題 特集2:災害とこころのケア

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編著者名
ぎょうせい
判型
A4変型
商品形態
雑誌・電子書籍
雑誌コード
13321-03
図書コード
7135001-24-030
8179040-24-030
ISBNコード
発行年月
2024/03
販売価格
1,320 円(税込み)

内容




●特集1 大規模災害にどう備えるか──能登半島地震で見えた課題

元旦に発生した能登半島地震。1か月半経った段階で、死者は240人を超え、避難者もいまだ1万2000人にのぼっている。建物やインフラなどの被害も甚大で、能登半島を中心に被災した建物は約7万2800棟。停電は約1100戸、断水は2万3000戸でつづいており、一部の地域では、仮復旧が4月以降になる見通しもあり、まだ時間がかかる。被災の全体はまだ把握できていない状態であり、人々の命を守る応急的な対応が行われている状況だ。だが、そうした中でも見えている課題もある。今回はそうした視点から大規模災害への備えについて考えてみたい。

■能登半島地震が突きつけた課題

室﨑益輝
神戸大学名誉教授

新年早々、わが国の防災対策のあり方を根底から揺るがす地震が、能登半島で起きた。前例のない地震が前例のない被害を生んで、被災地を絶望の淵に追い込んでいる。この絶望を希望に変えるには、前例のない取り組みが欠かせない。能登半島地震が突きつけた課題に真正面から向き合わなければならない。

 

■建物の防災・減災をどう進めるのか──国難災害に向けた耐震化/河田惠昭
南海トラフ巨大地震が起これば、能登半島で露見した被災状況が太平洋に面する少なくとも8県で発生し、かつ大阪と名古屋では未曽有の都市災害となる。それを何としても極小化したい。まず、地震時に住宅が壊れないかどうかを知るために、旧耐震設計法によって在来工法で建てた木造住宅だけでなく、その後、建築基準法が改正された後の木造住宅も耐震診断を受けたほうがよい。そして、危険とわかれば、家族がよく使う1部屋だけでも地震時にぺちゃんこにならないように早急に補強するべきだ。

■災害関連死をどう防ぐのか/石井美恵子
スフィア・ハンドブックの避難所および避難先の居住地に関する基本的概念では、すべての人びとは適切な居住への権利を有し避難所と避難先の居住地における支援は安全な生活環境の提供を目的とするとなっている。災害関連死を防ぐ避難所・避難生活を実現するためには、自助・共助・ボランティア頼みだけではなく、政府の義務である公助を求め、抵抗権ともいえるような声を上げていくことも必要なのだと思う。

■災害時の自治体連携の現状とこれからの課題/牛山久仁彦
東日本大震災等の激甚災害を契機として進められてきた自治体の連携は、随所で効果を発揮しており、能登半島地震でも、国や県の要請がなされる前から、自治体間の日常的な連携にもとづいて自発的に支援を実施する自治体が多くみられた。もちろん、国の大規模な支援が急務な状況であることは当然である一方で、普段から連携を強めている自治体間で、ニーズを確認し、緊急事態下で、小規模であっても、速やかに、地域住民のニーズに見合った物資を供給することの重要性もあらためて確認しておきたい。

■福祉避難所を機能させるために/鍵屋 一
現在、わが国には75歳以上の高齢者が約2000万人、障がい者は約1000万人、2歳以下の子どもが約240万人いる。しかし、命をつなぐ避難所として期待される指定福祉避難所は指定一般避難所の1割しかなく、十分な準備がなされていない。このため、脆弱性の高い人たちは壊れた自宅、車中などさらに環境の悪い場所で過ごさざるを得ない。弱い人ほど劣悪な環境に追い込まれる事態はもう止めなくてはならない。

 

●特集2 災害とこころのケア

いま私たちは、「災害と隣り合わせ」の社会を生きています。ひとたび大きな災害が起こると、被災者はもちろんのこと、支援者のこころにも少なからぬ影を落とします。特集2では、平常時、発災時、復興期等のさまざまなフェーズでの「こころのケア」について考えます。

■被災者のこころのケアとストレスマネジメント/池田美樹
■被災自治体職員のメンタルヘルスを守るためにできること/髙橋幸子・松井 豊
■子どもの復興・防災への参加をどう支えていくか──こころのケアの先にあるもの/安部芳絵

 

キャリアサポート連載

■管理職って面白い!離見の見(メタ認知)/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
家族からの納得を得られる3つのポイント/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/楢島杏奈 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 ■自治体職員なら知っておきたい!公務員の基礎知識/高嶋直人 ■そうだったのか!!目からウロコのクレーム対応のワンヒント/関根健夫 ■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ
/釼持麻衣(関東学院大学地域創生実践研究所)
■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規 ■〈リレー連載〉Z世代ズム~つれづれに想うこと/菅 花穗 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/宮沢明仁 ■地域の“逸材”を探して/寺本英仁

 

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
大谷 明・茨城県ひたちなか市長
人口減少を見据えて「職住育近接」のまちづくりを推進

大谷明・茨城県ひたちなか市長(50)。人口減少社会を見据え、マーケティング手法なども活かしながら子育て世代に選んでもらえる「職住育近接」のまちづくりを進める。「次の世代に、できるだけいい形でふるさととして引き継いでいきたい」と話す。

 

取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
消えかけた米を、ある農家の熱意が遺した【「天のつぶ」の物語(5)原点の農家・上】
原発事故、続く模索48

ついに判明した。福島県のオリジナル米としては最も多く栽培されている「天のつぶ」。だが、開発は一度中断された歴史がある。「いい米なのに惜しい。試験を続けさせてほしい」。そう訴えた農家がいて、開発は続行された。天のつぶの魅力を発見し、お蔵入りから救った農家がいたのだ。しかし、福島県庁にその農家の記録はなく、覚えている職員も見つからなかった。「歴史は失われたのか」。諦めかけていた時に連絡が入った。

□自治体政策最前線──地域からのイノベーション12
「おひとりさま+認知症」施策──市民本位の発想と視点で終活と認知症施策を推進(神奈川県大和市)

神奈川県大和市は一人暮らし高齢者の主に亡くなった後の心配事に対する不安解消に向けて、「おひとりさま施策」を展開している。おひとりさまを支援する条例を制定し、終活支援などを進めているのが特徴だ。また、認知症になっても安心して地域で暮らし続けられる施策を推進。認知症への理解を深め、互いに支え合うまちづくりに取り組み、認知症観を変える本人視点の啓発や外出支援に注力している。

 

●Governance Focus
□家が傾き、道路はぐねぐね、沈下が進んでいく──石川県内灘町、富山県高岡市、能登半島地震の液状化/葉上太郎
能登半島地震では、地震で想定されるほぼ全ての被害が最も酷い形で起きた。中でも目を引くのは、激しい家屋倒壊と液状化による被害だ。そのうち液状化が最も酷かった石川県内灘町は、震源から100㎞も離れていたのに、地下で土砂崩れが起きたかのように地面が「側方流動」した。家屋は大破し、盛り上がった土地で車庫内の自動車が押し潰される。道路は隆起と陥没でぐねぐねになった。住民は呆然と立ち尽くしていた。

 

●Governance Topics
□観光危機管理のあり方を議論──第26回都市政策研究交流会
(公財)日本都市センターは1月23日に「観光危機管理のあり方─来訪者の安全をどう確保するか」と題し、都市政策研究交流会を開催した。国内各地で災害が多発する中、自治体が総合的な都市戦略に観光を位置づける場合に、予期しない災害への対策のあり方について考えようと、実践の報告と議論が行われた(会場参加とオンラインのハイブリッド形式で実施)。

□全国の業務改善事例の共有と気づきの場に──第16回全国都市改善改革実践事例発表会inとよおか+カイゼンサミット2024
全国の自治体で実施された業務改善の優秀事例を一堂に集め、事例の共有と気づきを発見する全国都市改善改革実践事例発表会(同会準備委員会・豊岡市主催)が2月9日に兵庫県豊岡市で開催された。翌日には、有志によるカイゼン・サミットも開催。より良い業務のための改善事例を学び、参加者同士も交流する機会となった。

□子どもの意見反映と社会参画をどう進めるか──「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウム2023小金井
2023年12月に閣議決定された「こども大綱」を受けて、自治体では今、地域における子ども施策づくりが求められている。その中で重要視されているのが子どもの意見表明権と社会参画だ。24年2月10・11日に東京都小金井市で開催された「地方自治と子ども施策」全国自治体シンポジウムでは、「子ども施策の基本理念と自治体における子どもの意見の反映」をテーマに、自治体関係者と研究者・NPO職員等が子ども施策の最新動向と展望について意見交換を行った。

□社会の多様性や合理的配慮のあり方について議論──第9回ふじのくにニッポンの縁側フォーラム
社会福祉の課題などについて議論する恒例の「ふじのくにニッポンの縁側フォーラム」が2月3日、静岡市で開催された。今回も現地+オンラインのハイブリッド方式で全国から多くの人たちが参加。「異彩をつぶすな!~多様性社会と合理的配慮」のテーマのもと、さまざまな視点から語り合い、学び合った。

□パブリックな仕事とキャリアを考える勉強会を開催──2024タマガワ・リーグ
東京・多摩地域の自治体職員等の交流・学びの場である「タマガワ・リーグ」のハイブリッド勉強会が2月4日、立川市で開催された。会場には多摩地域だけでなく、関東一円から約60人が参集(オンラインには関西なども含めて約10人が参加)。5年ぶりとなるリアルな空間で学び合い、交流した。

 

連載

□自治・分権改革を追う/青山彰久 □新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之 □地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □地域経済再生の現場から~Bizモデルの中小企業支援/小林美穂(Saya-Biz) □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □地方議会シンカ論/中村 健(早稲田大学マニフェスト研究所) □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『異人たち』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『生き物の「居場所」はどう決まるか
──攻める、逃げる、生き残るためのすごい知恵』大崎直太]

 

カラーグラビア

□つぶやく地図/芥川 仁
故郷で〝我が子〟を育てる喜び──福島県郡山市田村町金屋
□技の手ざわり/大西暢夫
貴重な漆の流通を支える手づくりの木樽──【漆樽職人】上平義弘さん(上平製樽所/岩手県一戸町)
□わがまちDiary──風景・人・暮らし
伝統の華やぎと自然の恵みが織りなす温泉郷(静岡県東伊豆町)
□本日開園中 FUN!FUN!動物園
京都市動物園(京都市)


●特別企画
□公共料金明細事前通知サービス「公振くん」導入で実現した自治体会計事務の大幅な業務改善──千葉県柏市会計課

 

■DATA・BANK2024 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

※稲取の「雛のつるし飾り」(静岡県東伊豆町提供)
*「ザ・キーノート」は連載を終了します。

 

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