「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用

市川 博之

「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・一般職員編~ 第3回 データ利活用編

地方自治

2022.05.02

「オープンデータ」「EBPM」「データ利活用」、長いこと自治体で進めなければ!
と計画策定時には検討しているとは思いますが、その後も継続していますか?
定着して効果が出ていますか?

2017年度に総務省の事業で「データアカデミー」というデータ利活用のカリキュラムを作って5年経過しました。
しかし、いまだにデータ利活用研修の要望は後を立ちませんし、「自分たちで進めるにはどうしたらいいのか」という問い合わせも多いです。

「どんなデータやツールを集めたり分析したりしたらいいですか? 職員が使ってくれるようになりますか?」

というお悩みへの回答として、本連載では、全国の「できない、助けて!」とDXに迷える自治体職員の一般職員の皆さんに向けて処方箋を提供していきたいと思います。
第3回はデータ利活用編です。

 

1.データ利活用を進めたいんですが、どのデータを分析するといいですか?

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「データを分析して政策に反映をしなければいけないことはわかっているんですが、どうやってやればいいかの方法がわかりません」 ・「目の前の課題はわかっているので、今はこの課題解決を優先しています!」 ・「データがほとんどないんで…。『これから始めるといいよ』っていうデータはどんなものか教えてください」 ・「どんなツールで分析すれば結果がわかるようになりますか?」 ・「どのデータで分析すれば、政策を決められますか?」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・短時間で効果が出るものを求めている。データ分析の実績がほしい。 ・データやツールがあれば、データ利活用はなんとかなると思っている。 ・“データ分析万能説”信奉。データが答えを決めてくれると思っている。 ・そもそも、データ利活用が何なのかよくわかっていない。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・最初にこれだけは述べておきます。
データは事実を示すだけで、それを解釈・判断して結果や行動を決めるのは、自治体職員です。
「データを分析すれば政策が決まる」のではなく、「データを分析すれば、現状もしくは未来の推定がわかるので、それを職員が判断し検討することで政策が決まる」のです。データ分析の結果、政策に魂をこめていくのは各自治体の職員に他なりません!

・解釈や判断にも影響しますが、「市民が大事にしていることは何か」を加味する際に費用対効果や数値が一番いい施策ではなく、2番目、3番目の施策が最も協力者が多いこともある。だからこそ、ビジョンや市民との合意形成のために数値を見て一緒に考えるのですよ。
・データ分析だけがデータ利活用ですか?
データ利活用とは、
●データの利用(分析)
●データの活用(アプリやサービス)
の両方の意味を持っています。

ヒト・モノ・カネが、データというインフラの上でサービスを形成する時代になりました。どちらも大切なことなので、両方を使えるようになりましょう。

・データ分析で大事なことは、【何の分析をしたいかという課題感】と、【「こんな状況になっているのではないか」という仮説・切り口をもつ】こと。
「こんな状態になっているのでは? では、どんなデータを何で表現すれば結果が出そうか?」という考え方が必要なのです。
データがあれば「何か」がわかるというのは間違い。調べたいことを検証するためのデータを集めて分析するのです。
課題感・仮説がなければ、データだけ見ても何もでてきません。データ分析ができない理由は、自治体の皆さんが、自分の自治体の課題感や「こんな状態になっているのでは?」という仮説を持っていないからですよ。

・データ分析で効果を出したいではなく、データ分析の結果を用いて、施策・政策の精度を上げる。そして住民の福祉を増進する!これを目指してください。

 

2.データサイエンスやデータ分析の講義は受けてみたんですが…

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「ツールの使い方はわかったのですが、具体的にどこで使っていいのかよくわかりません」 ・「研修で使っているようなツールやシステムは、うちの自治体では導入してないんですよね…」 ・「データサイエンスの研修を受けましたが、数学でした…」 ・「研修素材がうちのような田舎には合わなくて、結局やりたいと思っている分析ができません」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・研修自体が実践向けでなく、受け身の詰め込み型になっている。考えて手を動かす内容の研修ではない。・企業が実施している研修の場合、自社のツール利用ありきで構成されているため、自治体では使えないものが多い。 ・研修を受ける人数自体が目標となってしまっていて(もしくは、研修をすることを目標としている)、アウトプットは施策ということが理解されていない。 ・データを利活用した行政サービスの作り方については、そもそも研修がほとんどない。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・ツールがなくても、実施できるところから実施すればいい!!
GIS(地理情報システム)がないのであれば、紙の白地図の上に、地域ごとに分析した結果のグラフを拠点の場所に貼ることで、全体を俯瞰してみて違いを分析してみる、だっていいのです。ツールを使えばよりラクになりますが、分析したい内容が決まっていなければ、いくらツールがあっても何の分析にもなりません。それよりも大事なのは、分析の結果、表現したいことが頭に思い浮かんで、それを紙地図でもエクセルでもいいので表現してみることです。

・データ分析やEBPMって言っているのに、何で研修の回数や人数で評価してるんですか?
政策立案・施策立案までつなげてようやくアウトプットでしょう。この件数をカウントしていなければ、「研修自体がEBPMとしての指標がしっかりできていない」ということです。「予算を確保したから」「計画に○回やると書いたから」などはダメです。

「データ分析しても意味ないじゃん」となりやすいテーマはいくつかある。この事実を知りましょう。
すでにわかりきったことへの分析は、その状態に陥りやすいものです。
例えば、大学も大きな産業もないような地方の街で、人口減少の原因を分析したいと言っても、調べる前から、「大学がないから出ていく」「産業がないから域外に就職する」といった想像どおりの答えしか出てこない。
このような場合は、目標とするテーマをもっと考えなければいけません。人口減少するなかでもコミュニティが保てる状態を作るためにはどうすればいいのか、などといろいろな仮説を立てていくのです。「人口が多かった時代に戻って今までどおりのやり方のまま進めたい」だなんて単なる思考停止ですよね。
私はこれまで、約150の自治体でデータアカデミーを担当してきた経験上、難易度が高いテーマは、「人口減少」「中山間地」「産業振興」あたり。お題目だけ見れば誰でもやりたいでしょうが、もっと掘り下げて具体化したテーマにしてみないと、現状確認以外の何も出てきません。

・他自治体の事例やテーマが自分の自治体に当てはまらないなら、自分のところの課題でもう一度やり直してみましょう。「事例がないと真似できません」ではありません。事例からデータ利活用の方法を学んだら、自分の自治体で必要な課題に置き換えてみて学んだデータ利活用のプロセスを通じて、課題解決にトライすること。
・データを利活用した行政サービスの作り方については、【データアカデミー「サービス立案型」】を勉強してもらうといいですよ(自社の宣伝になりますが自信をもって推薦!)。データって、統計の情報だけではなくて、職員が一人ひとり働いている時間・携わった回数なんかも重要なのです。例えば、会津若松市と実施したサービス立案型研修では、会議室の予実確認として、会議室の利用率の統計をとるため、会議室の鍵の貸出・返却の様子をビデオで1カ月間録画することで数値化しました。このように、どうやってデータを作って改革につなげるかが大事なのです。
必要であれば、データは作ればいい。

 

3.データ分析ツール入れました!

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「データがありません! データが増やせません!」 ・「メニューの使い方はわかりましたが、結局、何に使えるかわかりません!」 ・「利用者が増えません!」 ・「分析しても意味のある答えがありません!」・「え、データ入れたら結果が出るんじゃないんですか?」・「公共交通・公共施設を最適な状態にしたいです」・「個人情報があるので、システムでは使えません!」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・ツールを導入する際に、何に利用するのかを明確にしていない。「データ分析をする」が目的では甘く、何のデータ分析をするかまで決める。 ・「データ分析ツールを導入しました」という説明や教育だけで、施策・政策立案とセットになっていない。 ・分析したら勝手に解決すると一定数の人が思い込んでいる。 ・自分たちが数値を使ったシミュレーションをするためのシナリオを描けないため、「最適」「すべての住民にとってよい」などあいまいな言葉をつくり出してしまっている。 ・個人情報保護の部分について原課が過度に恐れている。特に参考事例がないものは警戒する。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・例えばGISを導入したとき、GISで各部門が何をやれるのか、どんな用途があるのかをちゃんと調べておかなければいけません。庁内にどんな課題があってどんなデータがあれば課題の確認や現状把握できるのか――それができていなければ、そりゃあデータも集まっておらず、ツールはあれど使えず…になりますよ。このケースは結構あるので本当に注意してね。「ツールがあれば人は使ってくれる」は幻想です。使う人が自然と使えるように設計していくのです。サービスデザイン(本連載第2回)は職員向けにも使ってね。
「分析したら何をするのかが出てくる」んだったら、職員はいらないじゃないですか。
判断するのは職員さんですよ! もちろん、「センサーの数値を見て自動で換気をする」なんてレベルは自動化しちゃっていいんです。
でも、施策・政策立案はそれでいいの?

・特に将来の分析をするときには、「最適な状態」とか言ってる場合じゃない。その最適とはなんなのかを、職員自ら、プランA、プランB、プランC…とシナリオを作り、それに必要な情報を集めて分析(シミュレーション)し、どのシナリオが最も効果が高いのか、そしてその結果を住民と一緒に見て、直して進める。それが本来すべきこと。
データを分析して可視化するって、住民と協議するためのものでもあるんですから。その街にとっての「最適」とは、自治体職員と住民以外に誰が決めれらるんでしょう? その最適を決めるために分析するんじゃないですか。

・個人情報、たしかに厄介だよね。
でも、これね、ちゃんと情報部門と法務部門に確認しようよ。どんな状態なら活用できてどんな状態だったらダメなのかをはっきりさせないうちに、「個人情報が含まれているからダメ」と決めつけるのはやめよう。法令や状況が変わったときに利用可能となるかもしれないし、なぜダメなのかを理由も含めてきちんと明確にしておくことが大事です。

 

4.データ利活用

データ分析は、分析して施策作って終わり…ではないのです。
その後に正しく施策が回っているか、モニタリングするための指標をちゃんと作っていますか?

あるあるなのは、その指標が市民満足度調査の結果のようなものになっていること。
3年後や5年後に市民満足度調査で結果を確認するのでは、毎月・毎年のモニタリング指標として確認できないですよね。モニタリングは軌道修正するために使うので、最後に測るだけではダメなんです。

また、指標が定性的なものが多いのもマズイです。
例えば、指標を「きれいな街と思う住民が増えること」なんてしたら本当にマズイ。

なぜマズイか。
「きれい」という言葉は人によってとらえ方があいまいだし、なんなら、市民満足度調査の聞き方によってゴールの表現を変えられるからです(「空気が」きれい、「街並みが」きれいなど)。
住民と一緒に決めたのであれば、住民もモニタリングの結果を見られるような仕組みもしっかりと考えましょう。

また、データ活用(=行政サービス)の部分も忘れちゃいけない。
ノーコードやローコードも流行ってきていますが、ちゃんとデータマネジメントを考えていますか?

マスターの管理は誰がやってますか?
いつのタイミングで、ツール内のマスターを更新するんですか?
そのマスターはどのツールで使われていますか?
これ、ちゃんと管理しないで進めてしまうと、かつてきた道――誰も触っちゃいけない禁断のAccessツール――の二の舞になります。
文章規則や会計規則などがあるように、データマネジメントにもルールが必要なのです。

目先の派手さだけに目が行って、やれ分析ツールの活用だ、やれローコードだと言うだけではなく、データ分析のプロセスやデータマネジメントといった土台となる部分を整備しなければ、職員さんは「ツールの使い方はわかったけれど、データ分析をどのように仕事上で使うかわからない…」となってなかなか定着しないのは当たり前。

職員の皆さんも、「これってどういうルールで進めたらいいのかわからないよ!」っていうのはバンバン言ったらいいと思います。

データ利活用もまさに過渡期です。
一つひとつ、着実に攻略すればいいんです。

 

5.おわりに

私の地元では、昭和の時代に新駅建設の議論があり、建設中止になりました。
当時を知る方々から、「あの時もっとちゃんとシミュレーションして可否を決めたほうがよかった」というお話を聞きました。
本当は新駅を作っていたほうがよかったかもしれない。けれど今となっては、どちらがよかったのかは誰もわかりません。

データ利活用、特に政策立案においては、住民との間で、同じ数値を見て議論する・決めていくことに利用していくことが大事です。
これからは人口も減り、税収をどこに当てていくのかを住民と話し合わなければいけません。

数十年後の若者たちから「どうしてこっちの方法にしたの?」と聞かれたときに、堂々と根拠をもって答えられる地域にしたいじゃないですか。

難しい分析もあるかもしれない。
そういうときは、地域の事業者や学術機関と協力すればいいのです。

感覚ではなく、事実をもとに地域が話し合い、決めていく社会へ。
そのために、まずは職員さん一人ひとりの仕事や地域のデータ化・可視化の部分から、進めていきませんか?

イラスト/市川希美

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著者について

市川博之
シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』 市川博之/著
(発行年月: 2019年12月/販売価格: 2,310 円(税込み))

 

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市川 博之

シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授。

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

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