「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用

市川 博之

「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・一般職員編~ 第4回 オープンデータ編

地方自治

2022.05.12

オープンデータについても、どうしても伝えておきたいことがあります!

…ということで、オープンデータ編を追加します。

スマートシティもデジタル田園都市国家構想も、そのデータ連携基盤となるところに間違いなく必要なのはオープンデータです。

しかし、そこをすっ飛ばして、
「スマートシティのサービスとしてどんなデータを使ったらいいですか?」
と聞かれることもしばしば。

「オープンデータは、どのデータから載せればいいですか?
 どんなデータなら住民が使ってくれるんですか? 効果が出るんですか?」

というお悩みへの回答として、本連載では、全国の「できない、助けて!」とDXに迷える自治体職員の一般職員の皆さんに向けて処方箋を提供していきたいと思います。
第4回はオープンデータ編です。

 

1.何のためにオープンデータを公開するの? 仕事が増えるだけでは?

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「オープンデータって、そもそもなんですか?」 ・「オープンデータを公開すると、何かいいことあるんですか?」 ・「うちの町でデータを活用するような人なんていませんよ」 ・「ウェブで情報公開しているから必要ありません!」 ・「原課の仕事が増えるだけなのでできません!」・「上層部のOKが取れてないので公開できません」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・「もう公開している情報があるんだから、それを見ればいいじゃん」と思考停止している。 ・自分の地域のデータは自分の地域の人たちだけが使うと思っている。 ・自分自身もオープンデータのことをよくわかってないのに、誰が使うんだろうと思っている。 ・情報部門からオープンデータを公開しようと言われたけれど、強制力がなければやらない。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・まず、地域のデータを一番持っているのはどこかを考えてみましょうか。
まさに、自治体なんですよね。
“公開できるデータを公開しない”ということは、それだけその地域に「何かをできる」可能性を減らしていることにほかなりません。ヒト・モノ・カネがデータの上で活きる時代になりました。データがインフラになったときに、地域で一番多くのインフラ(データ)の候補を持っているところが知らん顔していたら、新しいサービス提供やスマートシティにDXの実現だなんて、夢のまた夢です。

使ってくれる人がいない? 本気で言ってますか?
情報公開請求されるデータのうち、複数の人が、同じ申請や定期的な申請ではありませんか? データを、【特定の人にだけ見せる・渡すデータにする】のと、【そんなデータがあったのかーと住民の皆さんにも見れるようにする】のと、どちらが住民サービスとして効果があると思いますか?
公開しちゃえばいいじゃん、オープンデータで。

・私が飲食店の検索サイトをつくっている企業だったら、まちがいなく、自治体のホームページに置いてあるだけのデータなんて使わないです。
だって、サイトの下に「Copyright xxxx City(Town), All Rights Reserved.」とか書かれてるんですもの。
このページの情報は自治体に権利があるんだよ、って書いてあるのは使えないじゃないですか。
え? 問い合わせてくれれば、そういう用途ならOK出しますよ、ですって? 
…何言ってるんですか。1700以上ある自治体にいちいちメールや電話で毎年問い合わせると思いますか? そんな自治体はスキップして、オープンデータを公開してる自治体のデータだけを使いますよ。申請を受け付ける側の自治体職員の手間にもなるじゃないですか(※こんな一文も加筆したい)。

・自治体職員の皆さんは、自分の自治体だけで一生暮らしているんですか?
旅行で訪れている人、仕事で来ている人、冠婚葬祭で来ている人、目的地への通過地点として来ている人…、いろんな人が来ていますよね。
以前、とある自治体職員の方からこう言われました。「うちは小さい町で、避難所は近所の小学校だってみんな知ってるから、どこかで公開しなくても大丈夫です」。
その時の私はこう答えました。
「じゃあ、たまたま来ていた人たちは、発災時に避難所の位置がわからないからどうにもならないですね。それでいいんでしたっけ?」。
すると、ようやくハッとした顔で、「そういうことですか!」となったわけです。
データを使う人をもっともっと想像してください。

・オープンデータをどう活用したらいいのかよくわからない場合は、公開しようとしている情報を、自分で1回、(エクセルでいいから)グラフを作るなり集計をするなりしてみましょうよ。
そこでようやくわかるはずですよ。
「あれ、このままの形では数値にカンマが入ってるから集計できない…」
「グラフを作ろうと思ったら、毎年のエクセルがバラバラだから1個に集約することから始めなければ…」

ということを。
現状のままのデータでは使いにくいことが多いんです。
少なくとも自分自身が「これなら使える!」という状態を確認してみましょうよ。

・自治体内でデータを持っているのは、現場の部門です!
情報部門は取りまとめやルール作りの役目に過ぎません。
現場にしかデータはないので、現場が動かなければいつまでも誰もデータ化してくれないですよ。
この1カ月、この1年とデータがない状態の自治体とするのか、データがある自治体となるのか――皆さんにかかっています。

 

2.オープンデータを揃えてみたものの、誰が使っているのか、どんな企業が使っているかわかりません

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「オープンデータってどんな企業が使ってるんですか?
活用されている度合いがわからないと庁内に説明できないんですよ…」
・「オープンデータについて住民がどのくらい使ってくれているのかわかりません…」 ・「オープンデータでICT産業の育成って進むんですか?」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・庁内での効果の説明のためにオープンデータの活用度合いを知りたいが、効果の測定方法がわからない。・報告する義務のあるものではないというオープンデータ自体の扱い方がやっぱりわかっていない。 ・オープンデータですべてか解決すると思っている。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・「住民がどのくらい使ってくれているのかわかりません」の前に、皆さんからオープンデータの活用の啓蒙や説明会などを行ったことはありますか?
…まさか、ウェブサイトに「オープンデータ」と掲げれば住民が勝手に気づいて使ってくれるだなんて思ってないですよね? そんなわけないですよね???
圧倒的に足りていないのは、啓蒙活動です。
「オープンデータについての問い合わせは来たことないですよ」と職員さんから真顔で言われて、「そりゃあ、説明もしてないものを急に見つけて質問してくる人なんてレアケースじゃないですか」と返したこともあります。笑い話にもなりません。

・オープンデータについての指標を作りたいのであれば、オープンデータの公開数ではなく、API(※)やダウンロード数など住民がどれだけオープンデータについて知っているかの部分のほうが、意味があるのではないですか?
また、オープンデータに対しての問い合わせ数や公開してほしいデータの要望数のほうが指標として意味があるのではないですか? オープンデータの更新率などもそうですよね。
まずは、「周知すること」「更新されているデータであること」「要望につながるデータを提供すること」から始めてみましょう!
※API:総務省「総務省 ICTスキル総合習得教材」
https://www.soumu.go.jp/ict_skill/pdf/ict_skill_1_5.pdf

・「オープンデータを使いました!」なんてわざわざ言ってくる企業はレアケースです。
だって、「我々はこのデータを使ってこういうビジネスをしています!」って言えるのは、圧倒的に有利な立場でなければできませんから。誰にでもマネできるものだと、「使いました!」と企業が公表した時点で優位性はなくなります。
シビックテックの活動等で公表しているものもありますが、オープンデータを活用したことを表明する企業は数少なく、知らないうちに使っているケースが多いもの。アプリを使うなかで、「なんかこの地域だけ情報が薄いんだよね…」というものがあれば、その地域はオープンデータ公開がなされていない自治体かもしれません。察してみてください。

・産業につながるかどうかは、今流行りのDXであろうと同じことで、それを啓蒙する企業自体がちゃんとオープンデータの利活用をしないままにお題目だけ唱えているだけならば、そりゃあ誰もできないままでしょう。
「申し込みはファクスで」などと書いているような団体がICT育成なんてやっても、そもそも説得力がないのです。
産業につなげようと思うのであれば、まずは「使う」ことを当たり前にしていかなきゃ。人は、突然には覚醒しませんよ。

 

3.次にどんなデータをオープンデータで公開したらいいですか!

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「ウェブにあるデータは全部、オープンデータ化しました。ほかにどんなデータが必要ですか?」 ・「他所でうまくいっている事例を教えてください! それを公開したいです!」 ・「アプリで使ってもらえるデータは何ですか?」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・わかりやすい成果が出ていないから、どこかの成功事例をマネしたい。そこからオープンデータ化を進めたい。 ・自治体のホームページに掲載されているデータは、既に掲載されているからオープンデータ化の抵抗が少なかったが、そのほかはどれからやればいいかわからない。 ・オープンデータを使った活用事例を出せと庁内で言われている。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・住民がどんな課題を持っていて、どんなデータを欲しがっているのか聞いてみませんか? もちろん、すぐに出せるデータを庁内で探してどんどん増やしていくことも並行して行ってもらいたいですが、私は皆さんのまちの住民ではないので、どのデータがほしいかがわかりません。
住民に聞いたほうが早くないですか?
聞かない理由がなければ聞きましょうよ。

・事例を知ったら実行に移してくれるようなら喜んで教えます。が、そもそも、デジタル庁ホームページにある「オープンデータ100選 」など、事例は探せばたくさん出てくる時代です。
まずは調べましょう! 次に、その事例にトライしましょう!
そこからですね。

・今までの市民活動は、行政による補助金で課題解決がスタートできました。しかし、オープンデータが利活用できれば、市民自らで課題解決をすることができるんです。
オープンデータって、地域の活動や価値を加速させることができるんです。その価値を考えてみれば、どのデータから・どの事例からなんてことを言ってる場合じゃないってわかりますよね? 皆さんの地域の活動を加速させるために、公開していきたいデータが何かを考えてみましょう。

・データを公開したときの価値や効果をあらかじめ知りたい気持ちはわかるけれど…、
データをどう使うかは使う側が決めることであって、提供する自治体側がこうしてほしいなぁと設定するだけではダメだと思います。
よくこれも言われるのですよね、「このデータをどう使うのかがわからない(だから出さない)」。
これ、おかしくないですか?
皆さんって、ICT企業で働いた経験があって、データの利活用の勘所をたくさんお持ちで、アイデアが泉のごとく湧き出てくるんでしたっけ? そうだとすると、何で自治体内のデータ利活用やデジタル化進んでないの?
皆さんがどう使うかわからなくても、企業が活用できるものが普通にあるんです。
データは単なるデータでしかありません。それに意味づけするのは使う方の人たちです。

 

4.地域と活用してこそのオープンデータ

オープンデータって、いまいちどんなものかピンときていません…。
そこで身近な例をいくつか。

オープンデータには、リアルタイムのデータとしての活用もさることながら、デジタルアーカイブや地域の歴史としてのデータの意味もあります。

たとえば、地域の写真のデータ。新型コロナウイルスが流行しはじめたころから、私は、Zoom等のウェブ会議システムのバーチャル背景でそれらの写真を使えるよう、懇意にしている自治体にオープンデータとして公開してもらうよう呼びかけました。
地元に帰省できない人、移住定住を促進している人に対しては、地域のデジタルアーカイブされたオープンデータの利活用で地域との関係性をつくっていくこともできます。

同じく、地域のオープンデータを増やす取り組みに、ウィキペディアタウン(WikipediaTown)という活動も日本各地で行われています。ウィキペディアタウンとは、参加者が地域の魅力をウィキペディアの記事にして発信するワークショップ型イベントです。

ところで、ウィキペディアもオープンデータだということを知っていましたか?

試しに、アレクサ、グーグルホームといったスマートスピーカーで地域の史跡や名物を聞いてみてください。たとえば、「OK,Google 神明塚(しんめいづか)古墳って何?」というふうに。
その時、スマートスピーカーの回答の多くが「ウィキペディアからの情報です」と言っていませんか?

これ、オープンデータだから実現できているんですよね。

自治体の文化財サイトをいくらきれいにつくっても、オープンデータではありません。
オープンデータになっていなければ、スマートスピーカーなどには使われません。
データ利活用社会になった際に、データが使えるのか使えないのかで差が出てくるところです。

オープンデータの鳥陸海は、地域の活動として地域内のごみ掃除や草むしりをすることとまったく同じです。
地域のデータも、地域の活動として、データの整理・整備は地域の人たちを巻き込んでいきましょうよ!

自治体だけで100%の地域のデータをつくる必要はないのです。
地域のこと、歴史や文化のことを残したい人たちを支援しながら進めていけばよいのです。

50年後、自分の地域のことを調べても何も出てこない…なんてことにならないように。

 

5.おわりに

「DX」「スマートシティ」というワードを耳にするようになった今こそ、地域の情報を最も持っている自治体のオープンデータが必要です。

オープンデータを何に使うのかわからないのであれば、使いたい人たちとの窓口をつくりましょう。

公開する体制や必要な理由を聞ける体制をつくれるのは自治体だけですから。

そして、住民の皆さんと対話していきましょう。
小さな自治体も、大きな自治体も、それぞれが必要なデータや課題解決に使うデータはさまざまですから。
そんな取り組みから、住民がみずからで地域の課題を解決を進めていくシビックテックにもつながっていくことでしょう!

さあ、今こそオープンデータを始めましょう。
かつて、人は、文字を残し、文章を残し、絵を残し、写真を残してきました。
今の時代の人の役目として、データを残していきましょう。

 

本連載「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・一般職員編~は今回でおしまい。

皆さん、お読みいただき、ありがとうございました!

イラスト/市川希美

~連載のほかの記事はコチラから~

★第1回 DX編(Click!
★第2回 サービスデザイン編(Click!
★第3回 データ利活用編(Click!

著者について

市川博之
シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』 市川博之/著
(発行年月: 2019年12月/販売価格: 2,310 円(税込み))

 

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市川 博之

シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授。

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

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