「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用

市川 博之

「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・一般職員編~ 第2回 サービスデザイン編

地方自治

2022.04.25

DXと並んで、「市民目線」「利用者目線」「デザイン思考」…。
「サービスデザイン」も大流行していますね。
多くの自治体からも「利用者の利便性は向上しているか」「利用者の立場になって考えているか」だなんて言葉を聞くようになりました。

この「サービスデザイン」。
私は以前から、プロダクトやサービスをリリースしたり、東京造形大学でサービスデザインを利用した講義などをしていたりしていましたが、最近は、自治体職員さんから「自治体DX推進計画の全体手順書のステップ0に、『サービスデザイン思考の共有』と記述があるのですが、どうしたらいいでしょうか…」との相談をいただくことも増え、言葉の浸透度を実感しています。

ところで、みなさん、お気づきでしょうか?

昔、ツタヤや街のDVDやビデオレンタル店がいたるところにあったものです。
それが、気がつけば、オンデマンドでの動画サービスに移行しています。

PCだってそうです。
PCを買い替えたら、昔は、たくさんのパッケージソフトをCDからインストールして…、それが今はどうでしょう?

Gmailにしても何にしても、ソフトではなく、ほとんどブラウザでできちゃいませんか?

つまり、レンタル機能・アプリ機能という「機能を買う時代」から、「サービスで受ける時代」に変わっているのです。
行政だけがいつまでも機能を提供しているのでは済まされないから、今こそ“行政サービス”になる。
そのための「サービスデザイン」なんですよ!

「そうは言いますけれど、「サービスデザイン」って、検索をかけてもあいまいなことしか出てこないし、実際の事例がほとんど出てこなくて…一体どうやったら習得できるの?」

こんなお悩みへの回答として、本連載では、全国の「できない、助けて!」とDXに迷える自治体職員の一般職員の皆さんに向けて処方箋を提供していきたいと思います。
第2回はサービスデザイン編です。

 

1.どこに行ったらサービスデザインを教えてもらえるの? これってやる必要ありますか?

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「サービスデザインの事例ってどこにありますか? 真似したいです。」 ・「なんか、デザイナーの人に来てもらってやってもらえばいいっすかね?」 ・「利用者目線のサービスデザイン? こういうのは若手にまかせておけばいい」 ・「どこかにいい研修ありませんか、2時間ぐらいで」 ・「うちみたいな田舎でおじいちゃんおばあちゃんばかりなところにも必要なんですか?」 ・「サービスデザインの結果、どんなツールを入れることが多いんですか?」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・サービスデザインの結果だけをもらえば、サービスデザインの価値を受けられると思っている。そのため、真似できそうな結果を探し回る。 ・特に長く自治体に勤めている人たちに多い傾向で、「自分たちは市民のためにいつでも働いている」という自負を持っていることが多い。すでにできていると思っている。 ・「デザイン」という言葉があるので、専門的な知識がないとできないのでは? と思っている。 ・田舎では、デジタル化やサービスデザインよりも、目の前に重要な課題が山積しておりそれどころではない。「これ以上、新しいこと増やさないで!」と迷惑に思っている。 ・「自分たちはもう変われない…。新しい柔軟な考え方を持ってこられても覚えられない」とあきらめている。 ・アリバイ作り程度に、“研修やっているアピール”ができれば、市民向けにも議員向けにもいいだろうと思っている(実際、「今年度の計画でやることになっているので、ぜひ手伝ってください」は常套句)。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・事例を知りたいと言いますが、オープンデータだって事例は山ほどあるのに、正直、職員さんたち、なかなか動かんでしょう。サービスデザインだって同じ。事例だけ学んで「勉強になりました」ではまったくダメダメで、サービスデザインについては、自分でまずは実践しなさい!が答えです。
だって、サービスデザインの肝は、観察・共感から利用者の本当のニーズを見つけ出すところですよ? 他の自治体がやった結果だけ真似て、身につくといえますか? 前半が大事なのであって、後半だけやっても身につきません! 

「市民のことを考え、市民のために働いている」≠「市民の行動を観察・共感し、本当のニーズを見つけて対応する」。以上。
…と言いたいところだけど、もう少しだけ説明します。
市民に対して親身になって本気で一緒に考えるのは、共感ではなく同情です。表面的な満足はあってもそれがすべてではない。大事なのは、そこから一歩下がって、「なぜ、それを言っているのだろうか?」を考えることなのです。
言い換えると、こういう行動をとる人の気持ちを理解することです。
例を1つ。とある自治体さんで、公園のクレーム(草がボーボーだ、水場が汚ない、ゴミが…)を多く入れてくる住民がいて、職員も親身になって公園の対応をしていたのですが、よくよく観察を続けてみると、どうやらその方、話をしに役所に来るときぐらいしか家から出ていないようだと気がつきました。そこで、言動を観察したり周囲も気にかけてみたりしてみると、地域になじめていなかったことがわかりました。それで、地域のためになることをアピールしようと公園の管理者を気取っていたようです。そこで、庁内の他部門と連携し、その人を地域の老人会に参加できるようにしたことで、公園へのクレームをしてくることはなくなりました。もちろん、その公園は、他の公園と同じように普段から整備されていたのですよ。
多くの行政サービスも同じ。自治体に申請に行きたくないなんてのは表面のこと。本当は、「申請自体しなくてもいいようになってほしーなー」と思ってるんじゃないですかね。

・アリバイ作りのための研修はしないでください。
税金の無駄でもあるし、研修する講師側の時間を奪う以外の何物でもない。研修をするからには、どのようなアウトプットができるか、今後にどうつなげていくのかをしっかり考えましょう。次年度以降のどんな施策に活かしていくかを考えていく。次に何もつながらないなら、研修するだけ無駄。
人員は一朝一夕では育たない。目先だけの目標数値ではなくアウトカム(実際にできる職員がアウトプットを増やしていく)が出ることを目指そう!

・加えて、2時間ぐらいの研修ではサービスデザインを身につけることはできませんよ…。
座学ではなく、体験しながら学ぶほうがいい!
また、できる限り、実際にサービスをローンチした経験のある(サービスを世に出したことのある)人に一緒にやってもらいましょう。サービスを作ったことのない人のサービスデザインの講義なんて実体がないですから。
東洋思想の古典『荘子』より「輪扁(りんへん)」というお話をご紹介。
王様が昔の聖人の書物を読んでいたとき、車輪作りの名人輪扁が、「書物は昔の人の魂のかすしか得られない。自身も、車輪作りのコツは言葉では伝えられない」という実践と感性の重要性を説いた故事。昔から、実践と感性と知識は合わせないと意味がないことは知られていたのですよ。

 

2.サービスデザインでアイデアは出してみたけれど…

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「サービスデザインの研修を受けてみたけれど、どこで使えばいいのやら…」 ・「サービスデザインで考えたアイデアなんだけど、やっぱり業務に適応するのは難しいよね…」 ・「発想がなかなかできません!」 ・「これって、本当に合っているんでしょうか…?」 ・「この研修で人が育ったのかしら? よくわからん」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・実際に、サービスデザインを取り入れれば、派手な改革が起こるんじゃないのかと思っている人が多い。・研修を受ければ、サービスデザインができて、それが実務に使えるという、研修に対しての期待値が高い。また、全般的にサービスデザイン自身に対しての幻想が大きすぎる。 ・1回でサービスデザインが完了すると考えている人も多い。 ・自分には向いていないと感じる職員さんが一定数いる。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・実際のサービスデザインの結果は地味なものも多いです。 派手なことを求めているんじゃなくて、利用者が自然とその行動をしやすいことを目的にしているんでしょ? 優れたサービスには、利用者が気付かないくらい溶け込んでいるものです。「わざわざやる」→「気が付かずにやる」だから、派手にはならないんです。効果で判断しましょうね。
・サービスデザインで企画のポンチ絵を描いてるだけじゃだめなんだよね…。本気で自分のプロジェクトとして変化していけるか、費用対効果を確認できるか――次につなげるためのところが決定的に不足しているのですよ。何のためにサービスデザインってするんでしたっけ? 業務改革やサービスの向上のためだよね、考えるだけじゃなくて実装につなげることを意識しましょう。あくまで、サービスデザインは業務改革の1つの手段。
・完成されたいいアイデアなんて、1回で出るわけがない。何度も何度も修正とブラッシュアップを繰り返して、試してはまた直す、そして、使えるレベルになったら現場に投入して、さらに観察を続けてブラッシュアップを続けるのです。ポンとスイッチ入れたら、数時間後にできあがりのようなものではありませんよ。
・ 正直、すべての人がこのようなクリエイティブなことが得意なわけではない。私も多くの自治体でサービスデザインの研修もしていますが、約3割の人はどうしても発想を広げることが苦手。今までと違うことを考えられない人は必ずいます。これは、得手不得手の問題であって、苦手な人は逆にロジカルシンキングは得意だったりもする。
ちなみに、残り7割はどのような人かというと、私の肌感では、サービスデザインに向いているのも3割ぐらいで、残り4割ぐらいは「勉強になりました!」という感じ(こういう人たちをもっと活かせる方法はないのだろうか…)。それぞれの特性に合わせて課題解決に向かえばよいので、いろいろと試してみながら自分に合うスキルを見つけましょう。

 

3.利用者・顧客重視でがんばれ!と言われている

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「利用者目線、利用者への価値だけでいいのだろうか?」 ・「市民サービスの向上のために窓口や電子申請、がんばってます!
電子申請できる手続き件数を100%にしたいです、アドバイスください!」
・「私、デザインの勉強を始めようと思うんです」 ・「うちの部門、自治体の内部業務なので、利用者・顧客目線と言われても困るんですよね…」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・サービスデザインのはずが、市民の価値向上=デジタル化にすり替わってしまい、デジタル化が目的になっていることに気がついていない。いいことをしていると思っている。 ・利用者目線は大事だが、それだけやっていてもモチベーションが上がらない状態になっている。大事なのは重々承知しているのだが…という状況。 ・自治体内のプチブーム到来、サービスデザインの勉強をすることが目的になりかかっている状態。一時期のデータサイエンスやビッグデータのときにも似ている。 ・利用者の意味を間違って把握しているパターンも見受けられる。住民だけが利用者ではありません。 ・目先の困りごとに対してだけ、サービスデザインを考えてしまっている。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・そもそも、利用者だけのサービスデザインじゃないんです。ステークホルダーの全員がよくならないと意味がない。だからこそ、やるときには職員、地域の双方がうれしいものでなければいけない。それは全員の「うれしさ」から始まるのです。住民は顧客? 違う違う! 地域と職員はパートナーとなって、変化をどう受け入れれば価値が向上するのかを考えましょう!
・サービスデザイン→利用者目線→利用者が便利に→電子申請!
と短絡的に目標にしちゃってる自治体さん、結構見かけます。
それ、本当ですか? だとすると、マイナンバーカード対応の電子申請の分はマイナンバーカードの普及率とイコールですよね? どこの自治体でも、マイナンバーカードの普及率と電子申請はイコールになってないことを考えると、利用者目線というところに、利用者が「知る」「便利に使える」ってところが抜けちゃいませんか? 電子申請が可能な手続きをいくら増やしても、紙で申請したほうが便利だったら、紙で申請されてしまうのです。
そのサービスデザイン、利用者がついてきていますか? もう一度考えましょう。

利用者目線という考えのなかに、企業や団体、そして内部事務であれば自分の仕事とやりとりする職員も入れましょうよ。内部のステークホルダー同士の仕事を観察することで、痛みが一番多いことをしている人たちが、どんなことに困っていて、どんな要望(ニーズ)があるのか、発見してください。それを解決することが、最終的には自治体全体としての住民サービスに使える時間の上昇となるのではないですか? 作業のために業務をしているのではないですよ。目標に向けて価値を出すために業務をしているのです。

 

4.でも、サービスデザインだけでは万能ではない

たまーに、「うちはサービスデザインを取り入れてるほうです、大丈夫です!」的なことを提唱してくる事業者さんや職員さんがいらっしゃいます。
本当にそれ、大丈夫ですか?

サービスデザイン自身は、利用者目線を取り入れた観察・共感から始まる課題解決の仕組みとして有用です。
しかし、すべてがそれで解決するわけではありません。
必要なところに必要なスキルを投下したり、組み合わせたりすることで、初めて価値は出るってもんです。

たとえば。その1。
組織の構造上の課題なんてのは、システム思考で悪循環に陥るポイントを探し出して、その負の連鎖を断ち切らなきゃいけない。組織の縦割りも解決してないのに、全庁的に影響するようなアイデアをサービスデザインだけしても、そりゃあ実現しないでしょうよ。

たとえば。その2。
利用者の現状を観察してサービスデザインで対策を考えたとしても、今後の数値や統計・課題の推移を確認しなかったらどうなるでしょう? 一過性のものにとらわれて、すぐに作ったサービスを変更しなければいけなくなるかもしれません。もしくは、そんな予算もないかもしれません。
一部のエリアの参加者だけを観察すること自体がバイアスのかかっている状態、だなんてことはよくあることでしょう。求めるままだけをやるのではなく、全体として適用できるのか局所的なのかの費用対効果や、ロジカルシンキングを活用した課題の構造化により可視化をする。これをせずしての合意形成なしには進まないでしょうよ。

過ぎたるは猶及ばざるが如し。
「取り入れること」と、「それだけを信奉すること」は違う。これ、大事。
自治体には多くの人材がいるのですから、サービスデザインに他の手法も織り交ぜて、何度も何度もトライし向上させていくのです。

 

5.おわりに

サービスデザインとは、本来、自治体職員さんたちは得意なはずなんです。
だって、住民と一緒に地域をつくっていくのが皆さんなのだから。

今までは、行政目線で、行政という機能を通じて、住民の皆さんの福祉の増進をしてきたところを、これからは、行政もサービスに変わるんです。
サービスに変わるということは…、サービスをデザインする必要がありますよね?

もっと本質的な価値と効果(利用者の価値の向上と、行政の効率化の両輪)を得られること一緒に考えていきませんか?

Quality of Service(クオリティ オブ サービス)を最大限発揮するために、今まで取り込めなかった住民や地域ののびしろ(価値)をゲットする。

そんな行政サービスを考えて、そして実装していきましょう!

イラスト/市川希美

~連載のほかの記事はコチラから~

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著者について

市川博之
シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』 市川博之/著
(発行年月: 2019年12月/販売価格: 2,310 円(税込み))

 

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市川 博之

シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授。

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

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