「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用

市川 博之

「できない、助けて!」どーする? DX・サービスデザイン・データ利活用 ~自治体・一般職員編~ 第1回 DX編

地方自治

2022.04.18

世の中、どこを向いてもDX、DX。
皆さんの自治体でも、「うちの自治体でもやるって話だよ?」「電子申請を導入するぞ!」だなんて話が聞こえてきたりしていますよね?

デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている私は、自治体職員さんとお話しすることも多いのですが、

「DXって、なんだかよくわからないし、なんとなく“PCやスマフォを使った業務にするようなイメージ”しかない…、どこから始めるの? 何をしたらいいの?」

という質問や相談をとにかくよく受けます。

そこで、本連載では、全国の「できない、助けて!」とDXに迷える自治体職員の一般職員の皆さんに向けて処方箋を提供していきたいと思います。第1回はDX編です。

 

1.さてと…DXはじめなきゃ

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「えー、DXを検討しろだなんて言われても、現場の仕事が忙しいから無理無理、考えることに使える時間なんてないですよ…」 ・「やりたいけど、財政がOKしませんよ、どうせ…」 ・「うちの幹部はICTとか興味ないから無理です(キリッ)」 ・「DXって、またどうせ、IoTとかビッグデータな感じで流行り言葉でしょ?」 ・「あー、俺、ICTとか苦手なんで無理っすね」 ・「うちの町は田舎だから、そんなことやっても意味ないですよ」 ・「それって、システム部門の仕事でしょ?」 ・「デジタル化したらデジタルに対応できない人がでちゃうでしょ、それが困るんですよね」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・今までずっと、デジタルやICT、そして人材育成に予算を投じてこなかったことによって(箱モノと同じく、ICTもインフラ投資であるにかかわらず)、ICTや情報部門が育っていない。そういう部門は「守り」の部門であると思っている。 ・ICTやデジタルは(インフラ投資だから)大きな街がやるものであって、田舎では人を相手に仕事をすると思い込んでいる(これはこれで大事だが)。 ・今までも、システム部門が流行り言葉の何かしらのツールを何度も持ってきては「導入できる業務はありませんか?」をしてきたために、DXもそんなものだろと思っている。 ・DXの担当がデジタル●●課やDX●●課などになっているので、現場が自分ごとではなくなってしまっている。 ・「今の業務を真面目にやりきれば少なくとも問題はない」という思考停止。今がどうかだけでなく、この先のことを含めて考えない(ジョブローテーションも一因ではあるが)。 ・現場の仕事は複雑だから、デジタルには向かないと思い込んでいる。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
・今までのバズワードがICTの武器を与えるものだったのに対して、今回のDXは、Xの部分=トランスフォーメーションが重要なんです。つまり、価値の再構成と行動が変わること(行動変容)を伴うものです。「もし、皆さんの業務を今の時代に初めて構築することになったら、どのように設計しますか?」と考えてもいいですね。少なくても、メインの連絡方法をファクスにすることはないですよね? SDGsといった別のバズワードにはすぐにみんな乗るんだから、DXのビッグウェーブにも乗っちゃいなさい
・DXの研修でも簡単に「マインドチェンジさせてほしい」と言われますが、そんなに一気に全体は変わらないです(簡単に一気に変わるのなら苦労はしません)。このような変革の時期には、2割(先に進める人):6割(普通の人):2割(保守的な人)で組織は分かれていくので、最初の2割の人と変革チームを作り、取り組みはじめましょう。最後の保守的な2割を最初に攻略しようったって、骨は折れるわ、コストはかかるわで効果が出しにくいです。まずは、一緒に進める人から情報交換していきましょうよ。庁内にいなければ、外の自治体にそういう“変態”はいるので、自ら一歩外の世界を見てみるといいです。
・人が感覚でAにするかBにするかと決めているわけでない限りは、業務にはルールがあって、それに従ってAかBかが決まるものです(会話のなかで感覚で判断している…ではまずいですよね)。システムというものは、ルールがあることのほうが上手に扱えます。自分の業務が複雑だと思っているならば、一度、業務フローを作ってみてください。大抵の場合、口で業務が説明できない人は業務フローも書けません。実はこれが一番の問題なのですよ。人に説明できないものがシステムに落とし込めるわけないじゃないですか。そして、書けた場合でもグチャグチャな業務フローができあがります。業務フローがグチャグチャというのは、それだけ整理ができていない業務なのです。システム化の前に業務を再構成してスッキリさせる必要があります。この場合、X(トランスフォーメーション)のほうを先に進めるってことです。
・DXの管轄部門は、DX業務をさせる部門ではなくて、現場がDXしていく業務についてプロジェクト支援する部門です。DXといえども、業務改革・行政改革・規制改革の手段である以上、現場の職員が、現場の業務をどうしたいのか考えないと変わりませんよ? 言われたものを導入するのがDXじゃないんです。トランスフォーメーションするのは、まずは、現場の一人ひとりのマインドなのです。そして、DX部門の方々は、縦割り組織ではなく、横軸を刺す組織です。デジタル化を推進するために、横軸として人と人とをアナログでつないで価値を再構成するのです。逆説的ですが、デジタル化を進めようと思うならば、現場を巻き込むアナログ力が必要なんです
・小さい町こそ、行政サービスの継続性を保つためにDXをちゃっちゃと進めましょう。組織や部門の数が少ないからこそ、やる気になれば変革にドライブをかけやすいですよ。
・時間がないのは誰のせい? それは、自部門の長のせい(部下のタイムマネジメントができないのは、管理職の管理能力の問題)でもあるし、そんな大変な状態なのに、作業ごとの標準工数も測っていないから適正な人数を人員計画できないのです。自治体戦略2040構想でも、2040年には公務員は半分になるといわれています、その仕事のやり方で行政サービスは保てますか? 今やらないで誰にツケを回しますか? やりましょう、今こそ

 

2.DXやり始めたよ

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「DXってどこの企業のツールを導入したらいいの?」 ・「今度は、何のシステムに対応する業務を探したらいいの?」 ・「どの補助金が使えますか?」 ・「申請を全部電子申請でできるようにしたいです! どうしたらいいですか?」 ・「RPAって業務がラクになりますか?」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・とにかく今の業務がツラいから、それから逃れたいという気持ちが前面に出てくる。・予算はないから、国の補助金が出るところを狙っていくしかない。 ・わかりやすく宣伝されている事例がRPA、AI-OCR、電子申請ばかりだから、それをやればいいと思ってしまっている。 ・庁内にサポートできる人材がいない、導入事業ぐらいしかできる余力がない。 ・実は業務について担当者も全体像がわかっていない(細分化された業務や、年度会計職員にヘビーな定型作業は任せているなど)ので、どこから手を出していいのかわからない。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
仕事がツラいのはわかる、わかる…けどさ、これ、一度予算つけて改善しちゃうと、もっと価値が出ることが後からわかっても直せないよ? 特に、住民向けの効果もここで考えておかないと、単に自治体側の業務改善で終わっちゃうよ。せっかく変えるなら、価値を再構成し、最大化を狙おう。だって、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」なのだから。
・ただし、ゾンビ業務(今は全く価値がない業務)については、「やめる」をちゃっちゃと決めるといい。「やることを決める」と「やらないことを決めること」はセット
補助金を使って“やってる感”だけ出していてもだめじゃない? 本当に自分の業務の中で変えるところはどこか考えた? 自分の業務のウィークポイントは解消した? 住民に対しての費用対効果は増加した? DXは効率化だけでなく、費用が同じで効果が倍(リードタイムが半分とかもいいね)になるようなものだってあっていい。
自分の業務がよくわからないなら、業務フローを作りなさい! 業務改善ポイントは業務フローに表れてくるし、多くの人で業務フローを確認してみると、「え? 何でこんなことしてるの? この作業いる? 先にこっちからやればいいじゃん」なんてのが見えてくる。ぜひやって。
・予算が取れないのは、効果をしっかり説明できないから。現行作業にどれだけ時間がかかっているのか、業務を変えるとどれだけよくなるのか、そして住民価値はどれだけ上がるのか。ちゃんと耳を揃えて出しましょう! それをやらないと、どれだけ利用されれば効果が出るのかっていう指標が作れないよ。“やりっぱなしデジタル化”は意味がないです。
・サポートする人がいないなら、総務省の地域情報化アドバイザーに依頼してみよう。できるだけ、最近の民間含めた業務のやり方を知っている先生に依頼すると、目から鱗が落ちるような体験できると思うよ(できれば、私以外にお願いしてね)。

 

3.DXにガシガシ取り組んでる最中

<症状:この時期によくある質問や言動>
・「やっぱり課長級が変わらないと担当者だけでは限界です!」 ・「せっかく導入したのに、使ってくれない人がいます!」 ・「思ったよりも効果が出ません!」 ・「だいたい導入できそうなツール入れちゃったけど、次どうしよう…」 ・「成功している事例を教えてください!(電子申請で成功している事例を教えてください!)」

<原因:このような発言が出るのはなぜ?>
・組織としてコミットされていない状態も多い。部門によっては、電子申請やキャッシュレスなど関係ないと思っている場合もある。 ・今までのやり方のほうが早い、新しい方法で失敗するとリスクがあると思ってしまう(これを生産性のパラドックスという)。そして、これを取り除くような対策をセットで行わなかった。 ・旧来からある横並び主義(これ自体は汎用的に使えるものが増えているのでよいのだが)と、リスク回避。 ・次のツールを探すのは、本質的なBPRやDXをするための各部門の課題の洗い出しがうまくいってない、もしくは課題の聞き方が作業レベルの課題の洗い出しになっていてツールレベルの対応になりがちなため。

<処方箋:自治体の皆さんへ>
DXが関係ない部門などない。むしろ、現場の業務こそDXの対象です。たとえば、ルンバが登場したとき、ここまで普及すると誰が予想しましたか? 家事の時間短縮のため、今ではもはや普通に使われていますよね。「そんなもの今はまだ…」が、数年後には当たり前になる。10年後には自動運転車にアームがついて自動ゴミ回収車ができたとしても何も驚くことはないかもしれませんよ?
・全体最適化のために他の部門との交渉に積極的に行うなど、課長級はデジタルに直接関係ないところで力を発揮すべきポイントがたくさんある! …と、これについてはこれだけでも本1冊ぐらい書けるくらい話したいことはあるが、とりあえず課長級のマインドチェンジには、自らがDXでやるべきことの明文化とゴールまでマネジメントする力を研修等でつけるとよいです!
まずは調べるぐらいしましょうな。容易に検索ができるようになった今の時代、多くの動画やスライドで明快に知ることもできます。自分から情報を取りにいくというマインドチェンジをするところから、力はついていくのです。だって、「DXには住民目線を取り入れろ」って言われているのに、自分で調査や現場を探せないようだったらダメじゃないですか。
・他の自治体で成功しているからといって、ツールだけ導入しても成功するとは限らないよ。やり方や魂もちゃんと一緒に持ってこないとダメ。オープンデータポータルを活用できているところもあれば、同じものを使っていてもダメなところもあるわけです。自分のところの状況・現状を確認したうえで、「これならいける!」とならなければ、価値は生まれません。
・電子申請の成功事例については「知らない」と答えています。だって、マイナンバーカードの普及率とイコールになっていればその自治体だよと言えますが、そうではないのですから。成功しているところはまだなく、どこも切磋琢磨している状態であり、そこに参加してこそ、ノウハウが身につくのです。アジャイルガバナンスとかOODAループ(ウーダ;Observe(観察)、Orient(状況判断、方向づけ)、Decide(意思決定)、Act(行動))ってつまりはそういうことですよ。やりながらシフトチェンジしたり修正したりしていくのです。
・ツールを導入するときは、指標を作らないと使ってもらえないよ。あと、今までの方法を禁止する時期を決めておかないと進みませんよ。定着させるための計画もセットで立てないとだめ。
・自部門の課題を洗い出すときに、個別の作業のものなのか、業務フロー全体に関わってくるものかを考えて洗い出しましょう! そもそも、現時点の課題しか見ていないのがイケてないのです。これから5年後に起こっていそうな課題を潰すぐらいの意気込みで調査をしなければ、いつまで経ってもモグラ叩きは続きますよ。その真因を叩く!

 

4.「DX」にピンとこない人たちへ

これまでのとおり、DXを庁内で進めるにあたりよく噴出する「自治体DXあるある」を共有し、その対処法を提示してきました。それでもまだ、「DXってさ…」と後ろ向きな人たちもいるかもしれません。

「DX」は怖いものではありません。だって、家ではその恩恵を受けているじゃないですか。家では令和の家電や生活をしていながら、役所へはタイムマシンに乗って昭和に出勤、だなんていう笑い話があるほどです。住民や企業を含め、庁内の自治体職員の皆さんにも、「タイムマシンに乗って過去に行かせる」なんてのを、そろそろやめませんか?

ベテラン職員さんたちへ。和魂洋才って知っていますか? 明治維新の時代に、日本人の魂を持ちつつ、西洋の学問・科学・技術を取り入れて発展していったやり方です。DXは、まさにこれです。令和の技術やルールを取り入れて、ベテランの皆さんがかねてから秘める住民サービスを作る魂と掛け合わせてみませんか? 新たなステージにいけると思いますよ。

GIGAスクールでタブレットやPCを日常的に使っている中学生が、あと3年もすれば高校卒採用で自治体に入庁してきますよ。そのとき、紙だらけの環境だったらどう感じるか、想像してみてください。自治体はGIGAスクールを推進する側なのに、そのアウトプット先として自治体がなかったらダメじゃないですか。

 

5.おわりに

DXで最初に改革するところは、自治体職員さんのマインドだと思っています。
デジタルもツールも道具なので、それを使いこなす人が育っていなければ、どんなによい武器もなまくら刀にも負けてしまいます。

そして、できない理由を探すのはやめよう!

できない→できるに変えていくこと、これがDXです。
業務の流れ、場所、ルール、時間、デザイン、マインド…、どこから変えてもいい。
自分の得意を作ってください!

イラスト/市川希美

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著者について

市川博之
シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』 市川博之/著
(発行年月: 2019年12月/販売価格: 2,310 円(税込み))

 

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シビックテックラボ 代表理事、市川電産CEO、東京造形大学特任教授。

エンジニア・コンサルティングファームを経て、現職では自治体・企業・地域問わずICT全般の「デザイン×デジタル」を組み合わせ、コンサルティングから開発実装までを支援している。デジタル庁オープンデータ伝道師や総務省地域情報化アドバイザーも兼務しつつ、地域におけるシビックテック活動にも力を入れている。
「総務省データアカデミー」(データ利活用研修)や「自治体変革PJ-DX」(DXプロジェクトリーダー育成とマインドチェンジ促進の研修)など、自治体向けには伴走型の実践研修を提供し、全国で150以上の自治体で研修講師を務めるとともに、自治体DX推進計画のアドバイザーや、行政DXのコンサルティング支援を実施。主な著書は『データ活用で地域のミライを変える!課題解決の7Step』(小社刊)。

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