連載 コミットメント ── 他責から自責文化の自治体職員 第13回 理不尽な世の中を生き抜くには【円城寺雄介(佐賀県職員)】
地方自治
2022.04.15
本記事は、月刊『ガバナンス』2017年6月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
所属等は執筆(掲載)時点のものです。
※本コラムは主に早稲田大学マニフェスト研究所人材マネジメント部会の修了生(マネ友)のメンバーがリレー形式で執筆します。
上司の理不尽な指示、あなたはどうしますか?
職員採用の面接試験のことを覚えているだろうか。目の前には3人の面接試験官がいる。その中のひとりがこんな意地悪な質問をしてきた。「上司が理不尽な指示を出してきたら、あなたはどうしますか?」。私を含め多くの人は「自分の意見を納得するまで伝えて、それでも上司と意見が合わなければ理不尽でも従います」と答えたのではないだろうか。
夢も希望もないが古今東西、世の中は理不尽なことだらけだ。顧客ではなく上役の顔色しかみていない上司が、現場の状況を無視して理不尽な指示を出すこともある。そんなときに真っ向から上司に反対意見を唱えても状況は変わらない。変わらないどころか状況はさらに悪くなる。結局は上司の指示に嫌々と従い、居酒屋で愚痴を言って溜飲を下げる。会議の席では沈黙し、後でそっと同僚に「本当は反対だ。今にこのプロジェクトは失敗するさ」とつぶやく。心は少し軽くなった気がするが状況は変わらないし、なによりまったく楽しくない。
そこでおススメしたいのは「他責から自責文化」への変革だ。他人のせいにしても何も変わらないし、「過去と他人は変えられない、変えられるのは自分と未来」という良い言葉もある。
2016年2月、『県庁そろそろクビですか?』(小学館新書)を出版したときのこと。新書というジャンルでは表紙はどの本も統一デザインになっており、工夫ができないと言われた。業界ルールのせいで本を売るための工夫ができない。他責のままなら出版社を批判するだけだが、「自責」になれば「自分がどう知恵を出せば表紙に工夫ができるか」を本気で考えるようになる。ぜひ実際に実物を手に取って確認していただきたいが、ルール適用外の「帯」を表紙サイズに拡大して「本を二重表紙にする」という奇策で突破することができた。
激動する海外情勢など最近ますます先の見えない理不尽な世の中になってきている。そんな時代だからこそ、理不尽すら楽しんで克服できる「自責文化の自治体職員」が社会課題を解決する糸口になるのではないか。
(佐賀県職員/円城寺雄介)