行政大事典
【最新行政大事典】用語集―指定金融機関とは
地方自治
2020.11.03
【最新行政大事典】用語集―指定金融機関
はじめに
『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第7章 財政・予算」から、「指定金融機関」を抜粋して、ご紹介したいと思います。
指定金融機関
指定金融機関とは、自治体が公金の収納、支払の事務を取り扱わせるために指定する金融機関で、議会の議決を経て1つの金融機関を指定される(自治235、自治令168)。都道府県は指定金融機関を必ず指定しなければならず(自治令168〔1〕)、市町村(特別区を含む)は必要に応じて指定することができる(自治令168〔2〕)。
指定金融機関は銀行であることが多いが、地方の市町村では信用金庫や農業協同組合を指定することもある。1つの地方公共団体が指定する指定金融機関は1金融機関に限られるが、複数の金融機関が1年ないし2年交替で輪番指定される場合もある。指定金融機関となった金融機関は、別途、自治体の長が指定する金融機関を指定代理金融機関に指名することができる(自治令168〔3〕)。さらに、当該自治体に支店を持つ金融機関(ゆうちょ銀行および代理店業務を行う郵便局の貯金窓口含む)などを収納代理金融機関として収納業務のみを行わせることができる(自治令168〔4〕)。
一方、指定金融機関を指定しなかった市町村は、収納事務取扱金融機関を指定して対応している(自治令168〔5〕)。金融業態毎に指定金融機関の指定状況をみると、都道府県については9割が県内に本店を有する地方銀行を指定し、市町も半数以上が地方銀行を指定している。また村は半数が農協を指定金融機関に指定している。金融機関は地方自治体の指定金融機関に指定されると、公金の出納事務にかかる資金を扱い、収益を確保された時代が長く続いた。
しかし、1990年代以降、金融自由化が定着して金融機関の金利競争が常態化すると、指定金融機関業務はかつてほどの収益をもたらさず、逆に金融機関のコスト負担が目立つようになった。一方、地方自治体が金融機関に支払う収納手数料は極めて廉価な状態で、一般企業や個人との格差が大きく、指定金融機関業務は赤字となっている金融機関が大部分である。こうした状況から2019年には一部のメガバンクが、採算割れが著しい中小自治体の指定金融機関を返上して銀行界に波紋が広がっている。