Leader’s Opinion 〜令和時代の経営課題〜 今回のテーマ 修学旅行のミライ オンライン修学旅行 時空を超えた旅へ

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2021.07.05

Leader’s Opinion 〜令和時代の経営課題〜
今回のテーマ 修学旅行のミライ
岩瀨正司+野村祐輝

オンライン修学旅行 時空を超えた旅へ

奈良県生駒市立あすか野小学校教諭
野村祐輝

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.1 2021年4月

 本校ではこれまで広島へ行き、そこで興味を持った内容について調べる、まとめる、発信することを「平和学習」としてきた。しかし、2020年度は新型コロナウイルスの影響により、修学旅行の行き先が広島から近場へと変更になった。広島へ行けなくなったことにより、これまで行ってきた学習計画を変更する必要があった。また、戦後75年を迎え、そのため、戦争がないことが平和という観点だけではなく、平和学習を通して、多面的に平和を見ることができるような取組ができないかと考えていた。

 そのような中、生駒市キャリア教育プランナーが千葉県流山市でオンライン修学旅行を計画、実施したことを知り、学校現場でも実現可能ではないか、オンラインだからこそこれまでとは違う視点で学習を進めることができるのではないかと考え、協力を依頼した。

オンライン修学旅行の企画

 オンライン修学旅行のプログラムを考える中で、①児童が主体的に活動する。②多面的に平和を考える。③12月末に導入予定のタブレット端末を使用する。④オンラインとリアルを融合する。という4つの視点を取り入れた。

 ①実行委員、広報委員など8つの係を作り、児童約160名のうち半数が運営に関われるようにした。企画会議の中では、児童の意見を吸い上げ、プログラムに反映させていった。また、代表児童と関係企業とのオンライン会議を開き、制服等の貸出についての交渉を児童自らが行った。また、広報担当児童が活動経過をパソコンで作成し、学校ホームページに掲載した。

 ②戦争、原子爆弾による被害という視点だけではなく、食(広島お好み焼き)を通しての視点や広島に住む同年代から見た視点、外国から見た視点など様々な方向から、平和への視点を持てるようなプログラムを検討していった。

 ③生駒市では12月末に1人1台のタブレット端末が配布される計画があった(実施済み)。QRコードを読み取る機能やロイロノートを活用しながら、児童の意見交流や全体の考えを可視化したり、クイズに使用したりできないか考えた。

 ④座ってオンラインでの視聴をするという受け身の学習だけではなく、本を読んだり、実際に体を動かしたりするような能動的な体験をすることで、より学びを深める取組にしていきたいと考えた。

当日のプログラム

 1、2時間目には5つの部屋(未来、過去、広島焼き、宮島、平和記念公園)を巡りながら、平和について学んだ。未来の部屋では、プロジェクターを使用し、タイムマシーンに乗っているかのような映像を見せた後、担当児童が博報堂未来年表から選んだ未来に起こると予想されている出来事から、平和にどうつながるのかを考えた。過去の部屋では、学校司書が選んだ書籍から過去と平和の関係性を考えた。広島焼きの部屋では広島の企業とオンラインでつないだり、学校にも来ていただいたり、お好み焼きと戦争とのつながりについて話を聞くことで食と平和について学んだ。宮島の部屋では、お土産選び(願い事袋)をしたり、担当児童がタブレット端末で作成したおみくじを引いたり、観光動画を見たり、児童が実際の修学旅行でしたかったことを取り入れた。平和記念公園の部屋でも、タブレット端末を使用し、平和記念公園にある碑などの3D写真QRコードを読み取り、公園をバーチャルで散策した。この5つのプログラムには、実際に広島へ行った際に行う予定だった活動プログラムを全て取り入れ、さらに児童が希望した活動も企業の協力で取り入れることができた。

 3時間目には、担当児童が広島電鉄の制服を着て、事前に作成した特別切符を改札鋏で切ることで、よりリアルな状況を作った。そして、Zoomで広島電鉄とつなぎ、一人一人の端末から視聴した。リアルタイムに移りゆく広島の町の様子を見たり、原爆ドームや被爆電車の説明を聞いたりすることで現地にいるような疑似体験ができ、タブレット端末の効果が表れた。本校のような大規模校では被爆電車の見学も人数の都合上、経験することはできない。オンラインだからこそ実現した活動であった。

 4時間目は、広島市立五日市小学校の児童から現在の広島、過去の広島、今後自分たちがしていきたいことの発表を聞いた。

 5時間目は、外国にルーツのある方からの平和についてのビデオメッセージを視聴した。「戦争がないことが平和である」「戦争が身近にあるけど平和である」といったメッセージに対し、自分の身近な状況と比べて、考えが似ていることや違いについて感じながら平和を考えることができた。

 6時間目には平和記念公園の散策動画を視聴し、原爆の子の像の静止映像の前で実行委員が平和宣言を行ったり、全校に協力してもらい作成した千羽鶴が捧げられる様子を見たりするなど、自分にとっての平和を考える時間となった。

オンライン修学旅行のミライ

 今回のオンラインを活用した修学旅行では、学校で開催したこともあり、準備物も児童とともに作成することができ、時間の制約も少なかった。ほぼ全てのプログラムに児童の考えや願いを反映させることができた。そのことから、教師の考えや思いだけでなく、児童が主体となって取り組む活動をすることができた。また、感染防止対策を取りながら、児童同士の話し合い活動や、担当児童と関係企業との会議を行うなど、対話する機会を積極的に取り入れることができた。さらに、たくさんの企業、関係者に協力いただいたことによって様々な角度から平和について深く考えることができた。

 今後は、修学旅行も現地へ行くものとオンラインを活用したものの学びをつなげることで、より主体的で対話的な深い学びにつながる活動を実現できるのではないかと考える。コロナ禍、GIGAスクール構想、生駒市キャリア教育プランナー、平和教育、これらが絡み合ってこそ生まれた取組であるが、中教審答申で言われているような「個別最適な学び」と「協働的な学び」が実現した「令和の日本型学校教育」の一つとして構想できたのではないかと思う。今後もこのような「全ての子どもたちの可能性を引き出す」学習活動を創造していきたい。

 

Profile
のむら・ゆうき
2008年より奈良県三郷町立三郷小学校勤務、2015年より生駒市立あすか野小学校勤務。

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