授業力を上げるためにリーダーは?

寺崎千秋

授業力を上げるためにリーダーは?[第4回]指導技術の向上

トピック教育課題

2021.01.23

授業力を上げるためにリーダーは?
[第4回]指導技術の向上

一般財団法人教育調査研究所研究部長 
寺崎千秋

『新教育ライブラリ Premier』Vol.4 2020年11月

基本から新たな技術の向上へ

 指導技術の基本は大学の教育方法等の授業で学修する。指導計画や指導案の作成、教材研究・教材づくり・教材開発、児童・生徒理解、教材の提示、教科書の活用、発問・応答、学習活動の工夫、板書、子供の観察・見取り方、評価等々の意義や方法を学ぶ。学んだことを基に教育実習で実際に授業の計画を立ててやってみる。やってみて自分の指導技術の拙さに気付き、技術の大切さを実感する。そして教員になれば、毎時の授業で技術を発揮しながらその向上を目指すも反省多きOJTの日々であろう。

 指導技術が身に付いていなければ授業は成立せず授業崩壊となる。技術が低ければ質の高い教育を一人一人に提供することはできない。子供に与える影響は大である。授業は命、授業で勝負と言われる授業をつくり、支え、その質を高めるのは指導技術であり、教員誰もが高い指導技術の獲得を目指す。

 かつては「世界に冠たる日本の一斉授業」と言われ、知識理解獲得の実現を重視する一斉指導の技術の向上が目指された。これからはそれだけではなく、子供たちが未来を拓き未来を創るために必要な資質・能力の育成を目指す授業が重視されている。主体的・対話的で深い学びを実現する指導技術が求められている。

 以下に授業改善の三つの視点を基に、授業改善を望みながら悩んでいる教師等への授業観察の視点やアドバイスの仕方について取り上げる。

主体的な学びの実現に向けて

 これから学ぶことへの興味・関心の惹起、学習への内発的な動機付け、学習意欲の向上を図るなどを行っているか。実物や絵図等の資料の提示、これまでの学びの振り返り、学んだことの記録等の提示、提示物等について知っていることを引き出す等々により、学習への興味・関心が高まるように指導しているか。これらを観察し具体的にアドバイスする。

 学ぶことの自分とのかかわり、自分の考え方や生き方とのつながり、自分にとっての意味など、学習過程の折々に教師が視点を示し子供自身が考えるように指導しているか。見落とさないようにしたい。

 単元の学習内容や学習計画などの計画を示す。本時では、学習の目当てや学習課題について、キーワードを中心に何についてどんな活動をするのかなどを明確に示す。その課題解決・目当ての実現に向けた学習の計画を、子供と一緒に考えて自分たちの学びを自分たちでつくっていることを実感できるようにする。これらの指導を通して学習の見通しが立ち、粘り強い取組を生み出しているかを助言する。

 学習の振り返りは学びの成果を明らかにし、今後の学びの方向等を考えることで子供を学びの主体者にする。課題の解決や目当ての実現状況の評価、学習計画、学習方法のよさや課題、次時の学習の見通しなどを話し合って明らかにする。特に、学習状況の自己評価や相互評価を大切にし学びの自立を促す。

対話的な学びの実現に向けて

 学習過程に子供同士の学び合いの場を積極的に取り入れているか。教師の一方的な指示や説明に終始し、子供たちを受け身のままに授業を終わらせていないか。子供同士が学習課題や話題について自分の考えをもち発表し合い、そこから意見交換したり結論を導き出したりする協働的な学びをつくりだすことを工夫しているか。国語での対話の学習経験を応用して、各自が発言して終わりではなく、それを聞いて互いに問いを出して話し合うことを指導する。

 教師と子供の対話の場面をつくっているか。一問一答ではなく、子供と何回か問いと応答を繰り返すこと、子供が先生に問うことも取り入れるなど、対話することがどういうことか教師が手本を示す。また、対話している間に他の子供が考える時間を確保できるよさもある。モデルとなる対話をしているか。地域の人との対話では地域の人に質問をしているか。聞いた話からもっと知りたいこと、よく分からないことを質問して話を深めることができているか。

 先人の残した資料・史料や言葉・文章を読み、調べ、その内容に問いかけるように指導しているか。分かって終わりではなく、そこから次の問いを出して分かり方を深めていこうとするように指導する。

 これらの指導状況を観察し、形式的な活動から子供の考えを広げ深める実質的な学びに向けた指導となるようアドバイスする。

深い学びの実現に向けて

 基礎・基本、知識・技能を身に付けることにとどまらずに、学習過程に活用や探究の機会・場面を積極的に取り入れているか。授業が知識・技能の習得に偏らずに教科学習での活用の時間、総合的な学習での探究を関連させるカリキュラム・マネジメントの視点、アクティブ・ラーニングの視点の両面から指導を工夫することの必要性・大切さを助言する。

 受け身の学習にしないために、子供が有している見方・考え方を引き出し、それを使い発揮して新たな課題の解決・探究に向かっているか。見方・考え方は全ての学習において身に付け、発揮し学びを進め深める機能となっている。教師がその意識をもって子供の見方・考え方を大切にしているかを観察し、引き出し発揮できるようアドバイスする。

 学習指導が、本時の指導目標の実現に向けた学びを実現するものとなっているか。全ての授業にはその時間の目標があり、その目標の実現が単元等の内容のまとまりの目標の実現、さらにはその積み重ねが教科目標の実現につながる。このプロセスが学びの深まりであることの意識をもって1時間ごとの目標をしっかりと踏まえた授業づくりをしているか、その実現に向けた指導の工夫をしているか、指導案と実際の授業を照らし合わせてアドバイスする。

 指導技術向上の指導は以上の視点を定め、工夫や努力を認めながら更なる向上を目指すようにしたい。

 

Profile
寺崎千秋(てらさき・ちあき)
全国連合小学校長会会長、東京学芸大学教職大学院特任教授等を歴任。現在、一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長、教育新聞論説委員、公立小学校2校の学校運営協議会委員、小中学校の校内研究・研修の講師、教育委員会主催の教員研修講師等を務めている。

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一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長

全国連合小学校長会会長、東京学芸大学教職大学院特任教授等を歴任。現在、一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長、教育新聞論説委員、公立小学校2校の学校運営協議会委員、小中学校の校内研究・研修の講師、教育委員会主催の教員研修講師等を務めている。

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