Q&Aスクール・コンプライアンス

菱村幸彦

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選 Q101 新型コロナウイルス感染症について、児童生徒の出席停止はどのような場合に行えばよいでしょうか。保護者から感染が不安なので、子どもを休ませたいと申し出があった場合、認めてもよいでしょうか。

学校マネジメント

2021.01.21

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選
第4章 学校運営のコンプライアンス

菱村 幸彦
国立教育政策研究所名誉所員

『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選』2020年10月

Q101 新型コロナウイルス感染症について、児童生徒の出席停止はどのような場合に行えばよいでしょうか。保護者から感染が不安なので、子どもを休ませたいと申し出があった場合、認めてもよいでしょうか。

◯出席停止を指示する要件

 Q100で述べたように、学校保健安全法19条は、児童生徒の出席停止の要件について、①感染症にかかっていること、②かかっている疑いがあること、③かかるおそれがあること──の3つを定めています。

 文部科学省は、事務次官通知(令和2年6月5日)を出して、「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」)を全国に通知しましたが、新型コロナに関する「出席停止の取扱い」について、次のように示しています。

 第1は、児童生徒等の「感染が判明した場合」です。これは上記の要件1の「感染症にかかっている」に該当します。もっとも、ガイドラインは、「児童生徒等や教職員の感染が確認された場合、学校の設置者は、濃厚接触者が保健所により特定されるまでの間、学校の全部又は一部の休業を実施する」としていますから、児童生徒にコロナ感染症が出た場合、出席停止と同時に学校閉鎖や学級閉鎖が行われることになります。

 第2は、児童生徒等が「感染者の濃厚接触者に特定された場合」です。これは上記2の「かかっている疑いがある」に該当します。この場合の出席停止の期間は、最小限、感染者と最後に濃厚接触をした日から起算して2週間です。

 第3は、児童生徒等に「発熱等の風邪の症状がみられる場合」です。これは③の「かかるおそれがある」に該当します。ガイドラインは、感染がまん延している地域においては、「同居の家族に発熱等の風邪の症状がみられるとき」も、出席停止の措置をとるとしています。家族の発熱まで含めるのは、拡大しすぎの感もありますが、コロナ感染症の危険性にかんがみ、解釈の幅を広げているわけです。

◯保護者の申出による休みも容認

 ガイドラインは、出席停止の指示ではないが、特別の事情のある場合、学校を休むことを容認する方針を示しています。

 1つは、保護者から学校を休ませたいとの申し出があった場合です。出席停止の要件には該当しないけれど、保護者から感染が不安で子どもを休ませたいと申し出があった場合、保護者の申し出に合理的な理由があると校長が判断するときは、文部科学省の指導要録に関する通知(30文科初第1845号)に示す「非常変災等児童生徒又は保護者の責任に帰すことができない事由で欠席した場合などで、校長が出席しなくてもよいと認めた日」として扱います。この場合、指導要録上は「欠席」としないで、出席停止の場合と同様に「出席停止・忌引等の日数」とします。

 2つは、医療的ケアを必要とする児童生徒または基礎疾患等がある児童生徒の場合です。校長は、こうした児童生徒について主治医の見解を保護者に確認した上で、登校させるかどうかを判断することになります。登校すべきでないと判断したときは、上記の「校長が出席しなくてもよいと認めた日」として扱います。指導要録上も「欠席」でなく、「出席停止・忌引等の日数」とします。

 出席停止の指示や休むことを容認した場合、児童生徒の学習に著しい遅れが生じるおそれがないよう、学習支援のための措置を講じる必要があることは言うまでもありません。

 

 

Profile
菱村 幸彦(ひしむら・ゆきひこ)
京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課 長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等 学校長などを歴任。現在、国立教育政策研究所名誉所員。
著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ 教育法規』(教育開発研究所)、『管理職のためのスクール・コンプライアンス』(ぎょうせい)、『戦後教育はなぜ紛糾したのか』(教育開発研究所)、 『はじめて学ぶ教育法規』(教育開発研究所)、『やさしい教育法規の読み方』 (教育開発研究所)など多数。

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最新 Q&Aスクール・コンプライアンス120選 ハラスメント、事件・事故、体罰から感染症対策まで

2020年10月 発売

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国立教育政策研究所名誉所員

京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等学校長などを歴任。著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ教育法規』『はじめて学ぶ教育法規』『やさしい教育法規の読み方』(いずれも教育開発研究所)など多数。

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