小学校教師のための やってはいけない英語の授業

生徒指導

2021.09.06

『小学校教師のための やってはいけない英語の授業』(菅 正隆/著)

 学習指導要領改訂により、中学年「外国語活動」・高学年「外国語科」が新設されるなど、小学校中学年以上を担当する先生方の不安や悩みのタネとなっている英語指導。
文部科学省教科調査官時代小学校英語導入の立役者となり、現在も現場目線の授業研究・発信を続ける菅 正隆氏(大阪樟蔭女子大学教授)の新刊『小学校教師のための やってはいけない英語の授業』(ぎょうせい)では、陥りがちな「やってはいけない指導法」を例示し、やるべき授業への改善策を具体的に示します。ここでは、本書の一部を抜粋して、お届けします。(編集部)

やってはいけない指導 case11

先生:What food do you like?
児童:なんて読むのですか。
先生:ファット フード ドゥ ユー ライク(板書)。一緒に読んで。
児童:ファット フード ドゥ ユー ライク。

NGポイント

 英語の発音は基本的にカタカナで表記することはできない。しかし、子どもが発音できないと困ると考え、単語や表現にカタカナのルビをふる教師がいる。気持ちは分かるが、これは、逆効果である。子どもにとってはカタカナのルビは読む際の拠りどころにはなるが、視線は常にカタカナだけに注がれ、英語を見ようとはしない。その結果、常にカタカナがないと発音できない子どもが育ってしまう。

やるべき授業への秘策

1.基本はカタカナのルビをふらない。
 先に述べたように、英語の発音をカタカナで表記することは困難である。特に英語は子音で終わる場合が多く、母音で終わる日本語とは大きく異なる。例えば、andをカタカナ表記すると「アンド」と書くのが一般的である。しかし、実際に「アンド」と発音することはほぼ無い。これをカタカナで書くとすればむしろ「アン」や「エン」くらいが近い。

 では、どうするのが適切か。その答えは、絶対にカタカナのルビをふらないことである。英語を見ずにカタカナを見るようでは本末転倒である。いつになっても英語など読めるようにはならない。そこで、英語の単語や表現を見ながら同時に発音を聞き、頭の中で音と綴りとをつなぎ合わせる作業を行わせることである。しかし、これは一朝一夕にはできない。当然である。そこで、何度も何度も繰り返しスパイラルに文字を見せながら音を聞かせる。こうすることで、音と綴りとの関係が徐々に分かってくる。小学校ではこの程度まで達することで十分である。そして、中学校に進み、自分自身でこのルールを理解し体得し始める。これが重要なのである。

2.聞こえたままをカタカナで記入させる。
 支援の必要な子どもや、英語に対してひどい抵抗感を示す子どもに対して、教師の中には少しでも英語を分からせたい、少しでも英語らしい発音をさせたいと思い、理屈は分かっていても、発音をカタカナで示す人がいる。この気持ちは痛いほど分かる。では、このような場合にはどうするのがよいか。まず、教師がカタカナで読みを示すのではなく、子どもに英語を聞かせて、聞こえたままをカタカナで書かせることである。

 次のような指導も効果的である。

ALT:What subject do you like?
担任:Whatはどう聞こえた?
児童:ワ、かな?
担任:subjectは?
児童:サブジェク、かな?
担任:そうだね。書くと、ワ サブジェク ドゥ ユ ライクだね。
児童:ワ サブジェク ドゥ ユ ライク
ALT:OK. Repeat after me. What subject do you like?
児童:ワ サブジェク ドゥ ユ ライク。

 このように、子どもに聞こえた音を確認したり、聞こえたままを子どもたちに書かせたりして、少しでも英語の発音に近付けていくことである。これならば、カタカナも無駄にはならない。

3.英語の発音は「そのようなものだ」と思わせる。
 子どもの中には、単語の発音について、なぜそのように発音するのかと不思議に思う子どもがいる。また、その理由を知りたいと思う子どももいる。しかし、発音については、理由や理屈より「そのようなものだ」と思わせることである。1+1はなぜ2になるのかと同じことである。 理屈を考えると夜も眠れない。確かに、英語の発音には基本的なルールは存在するが、しかし不規則なものも多くある。このような知識は中学校や高校で知り、専門的には大学で学ぶ。小学校では、まずその音に慣れさせることが重要である。
 英語の音には日本語にはない音がある。また、ローマ字読みとも異なる。発音は異文化であり、異体験である。私が子どもの頃、「二者択一の」を意味する語alternativeを、「アルターナティブ」とローマ字読みを併用して自分勝手に発音していた。しかし、初めて「オーターナティヴ」の音を耳にして、全く異なることに気付いた。それ以来「アルターナティブ」などと発音することはない。

 このように、発音には我々の思い込みが多く含まれており、学校で習った英語が全然通じないなどのことが起こる。そこで、相手に通じる発音、伝わる発音を子どもたちに理屈なしに身に付けさせることが必要になる。
 そのためには、モデルとなる英語をデジタル教材などから聞き、それを何度も真似させることである。もちろん、教師もその発音を真似て、子どもたちの前で発音することが必要になる。それが一番の近道で、カタカナ読みでは遠回りとなるだけである。

<内容見本>

可愛いイラストやリアルなやり取りの例から「やってはいけない指導」を紹介するのでイメージしやすく、「自分もしているかも…」と自身の授業を振り返ることができます。
たっぷり28事例、NG例から改善策までをそれぞれ見開き×2=8頁に簡潔にまとめているので、今日の授業からすぐ生かせます。ぜひお手にとってご覧ください!

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2021/9 発売

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