theme 2 子どもが自ら創る「セルフ授業」

授業づくりと評価

2022.08.18

セルフ授業の手順

 これまで一日の大半を「分かる子と先生だけの授業」の中で過ごす子どもを見てきた。そうした授業を見るたびに、授業を根本的に変えなければという思いが強くなった。全員が活躍するような授業であれば子どもは、楽しく授業に参加できる。まずは、一斉講義型授業からアクティブ・ラーニングに変えなければならない。図1のように、授業は、毎時間、学習する内容は教科により違う。だが、学び方の指導(学習方法)や全員活躍型学級風土づくり(学級集団)や基本的生活習慣の育成(規律・態度)等は重なっている。重なる面の学習過程スタンダードによる授業、学級力の向上、生徒指導の工夫等は、全指導者が強く意識することが重要である。なお「学び方」の指導は、段階があるので注意して指導をする必要がある。


図1 授業の4層構造

 授業の4層構造のうち、さらに「学び方」の第4段階を紹介する(図2)。まず教科内容の指導を行う前に学び方を指導する。学習過程スタンダードやベーシック型の授業は固まった「型」ではない。学び方が進化していくので常に更新されていく。まず、子どもたちは初期の学習過程のスタンダードやベーシックな授業スタイルを学ぶ。その学び方を身に付けると次にいわゆる進化型スタンダードを学ぶ。身に付けた学び方を子どもたち自身で活用していくのである。この段階で子どもたちは「教師を頼らず自分たちで学ぶ」方法を身に付ける。ここまできたらほぼ学び方は完成だ。これで「セルフ授業」が可能となる。


図2 学び方の4段階

セルフ授業で子どもは変わる

 セルフ授業を行うのは、子どもたちが自分たちの学び方の向上と学力(思考力・表現力・判断力)向上、そして副産物的に得られる仲間意識や達成感などを得るためである。そこには「見てもらうために」という意図はほとんどない。でも見てもらえる時には、子どもたちはスポーツの試合に出ているような「ワクワク感ドキドキ感」を感じている。だから「セルフ授業」を公開授業にする場合に、高知県越知町立越知小学校や高知市立浦戸小学校のような「セルフ授業大会」という「大会」を付けた開催となっている。

 学習をする時に、子どもたちが常にワクワク感ドキドキ感を感じることができる時は、そんなにない。また、学び合い「考察」がしっかりできる道のりは、そんなに簡単ではない。そのような中で学習過程スタンダード実践校の子どもたちはなぜセルフ授業をいやがらずにどちらかと言えば喜んで行おうとするのか。その理由を考えてみた。子どもが夢中になる6か条というもので、おもに体育・運動遊びについて書かれたものであるがセルフ授業にもあてはまる項目が多くあることに気づく。

 セルフ授業がうまくできたら、先生にも褒められる。また、セルフ授業の基本は、肯定的評価であるから、授業中に認め合う場面は多い。4の項目については、セルフ授業には、勝負がありそうではないが、子どもたちは、「みんなが考えてみんなが分かったら勝負に勝った」という感覚を持っている。だから「大会」というネーミングにも違和感を持っていない。6の「考え、創造できる」これこそ、学習過程スタンダード授業が求めている真髄である。一番難しいのが、1であろう。全員が深い学びの域まで
到達した授業はまだ道半ばだ。

子どもが夢中になる6か条

1 できるようになる
2 次々と挑戦する課題がある
3 認められる
4 勝負の楽しさを感じる
5 良好な仲間関係
6 考え、創造できる

 以上、子どもたちがセルフ授業に前向きに向かうのはなぜか、おおよそつかんでいただけたのではないだろうか。セルフ授業は、「子どもたちのものである」ということを直に感じさせてくれるし、それが教師の「働き方改革」にも確実につながる。

子どもの変化に歓喜

 沖縄県の南城市の佐敷小学校も学習スタンダードを全校体制で取り組んでおり、セルフ授業も行っている。教師たちから聞いた言葉が心に残っている。

 「学習過程スタンダードやセルフ授業は、すぐに子どもたちの変化が現れた。子どもたちが活き活きと学習にのめり込むようになった。なによりも衝撃的だったのが、学習に苦手を感じている子たちが、自分から輪に入り、みんなと一緒に授業に参加し、しかも活躍する場面が見られるようになった。これまで、私たち教師は、授業の中で学力の低い子たちをどのように参加させ、自信を持たせていくかということに長い時間、努力と工夫を重ねてきたはずである。それが、一瞬で解決した」。

 この言葉を聞き、私も感激した。

 

 

Profile
西留安雄 にしどめ・やすお
 東京都東村山市立萩山小学校長、同市立大岱(おんた)小学校長、高知県教育委員会スーパーバイザー・高知県教育センター若年研修アドバイザーを経て、東京都板橋区稚竹幼稚園長、高知県7市町村研修アドバイザー。大岱小学校では校長として7年間在職。この間、指導困難校だった同校を、授業と校務の一体改革によって都内トップクラスに押し上げ、優秀な教員も輩出させた。現在、北海道から沖縄県まで、多くの学校現場で通年授業アドバイザーなどを務め、学力向上の指導に当たっている。

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