オールインワンで情報活用能力を育てる!1人1台端末で総合的な学習の時間を デジタルアップデート<岡山県備前市立香登小学校>|『GIGAスクール時代の学びを拓く! PC1人1台授業スタートブック』より事例の先行紹介②
授業づくりと評価
2021.03.22
『GIGAスクール時代の学びを拓く! PC1人1台授業スタートブック』(編著:中川一史・赤堀侃司)は2021年3月下旬、小社より刊行予定です。ここでは、本書の「事例編」から、岡山県備前市立香登小学校教諭 津下 哲也氏による「オールインワンで情報活用能力を育てる!1人1台端末で総合的な学習の時間を デジタルアップデート」の一部を先行してお届けします。(編集部)
オールインワンで情報活用能力を育てる!
1人1台端末で総合的な学習の時間を デジタルアップデート
岡山県備前市立香登小学校教諭 津下 哲也
総合的な学習の時間と端末はとても相性がいい。1人1台の端末が手元にあれば,わざわざパソコン室に行かなくても教室にいながら調べ学習ができる。調べたページをいくつか画面保存し,トリミングして発表資料に貼り付ける。発表資料は自由にレイアウトできるし,より分かりやすく作り変えることもできる。コンテンツが端末に入っているので,画面を見せながらグループ発表もできるし,大型提示装置に投影すれば全体の前で発表することもできる。これらの一連の活動が,適切な情報の収集,取捨選択といった,情報活用能力の育成につながる。
本稿ではまず,福祉をテーマに実践した総合的な学習の時間での活用事例を取り上げ,単元のどの場面で,具体的にどのように端末が活用できるかを紹介する。その後に,情報活用能力育成の発展事例として,県外の学校との遠隔交流授業とプログラミング教育への活用事例を紹介する。
1 情報を「集めて」「まとめて」「つたえる」 オールインワン活用
⑴ 単元名
だれもがよりよく関わり合えるように
⑵ 学年・教科
第4学年 総合的な学習の時間 福祉
⑶ 単元のねらい
福祉について自らが追究したい課題を設定し,身近な例を取り上げて資料などを活用して調べることで,福祉に関する理解を深めるとともに,資料を集める力やまとめる力,分かりやすく相手につたえる力を高める。
⑷ 単元の特色と概要
国語科の教科書に掲載された点字についての教材文を学習し,身近にある福祉に関心を持たせる。身近な事例を調べていく中で,「目の不自由な人」「耳の不自由な人」などに対する支援の工夫について,自分が追究したいテーマを設定する。図書資料を活用したり,インターネットで調べたり,校内を探検したりして,課題を追究する。調べたことをプレゼンテーションソフトでまとめ,お互いに発表練習をした後,学習発表会で発表する。「課題設定」「情報収集」「資料作成」「表現」のそれぞれの場面で端末を活用する。
情報機器の環境は以下のとおり。端末のメーカーはNEC,OS はWindows 8,統合ソフトウェアSKYMENU Class。個人ID とパスワードでログインし,データはセンターサーバーに保存される。教室環境は,タワーPC とモニター,教材提示装置,投影用プロジェクタが常設されていて,教師や児童の端末の画面は,教室や各端末にボタン一つで投影できるようになっている。
単元計画と活用場面
⑸ 1人1台の端末活用場面と活用メリット
○課題を設定する場面
まずは,図書資料を参考に,「目の不自由な人」「耳の不自由な人」「高齢者」「妊婦」など,大まかなテーマを決めた。そのテーマに関連することを,インターネットなどで調べていくと,新しい情報に出合う。例えば,目の不自由な人への工夫を調べていて点字ブロックを見つけた児童は,全てのブロックが黄色であることや,よく見るとブロックの形に違いがあることに気付く。そこで「点字ブロックはなぜ黄色なのだろう?」「ブロックは形によって役割がちがうのか?」といった疑問が生まれてくる。そのようにしながら,自分が調べたいテーマについて,より具体的な課題を設定していった。
1人に1台端末があるので,自分の興味に応じた課題を設定することができた。また,インターネット上に豊富な情報があるため,それらを参考に課題意識を広げることができた。
児童が設定した課題
○課題を解決する場面
課題を解決する場面では,端末の「インターネット機能」と「写真機能」が活躍した。 総合的な学習の時間において,パソコン教室にあるデスクトップPC を用いて,インターネットを活用した調べ学習をする場面はこれまでもあった。端末を使って調べ学習を行うことのメリットは,個々の課題に対応した調べ学習が,教室で手軽に行うことができる点である。さらに,例えば点字について調べた写真や資料などを簡単に画面保存しておくことができ,そのままプレゼンテーション資料を作成する際のコンテンツとして利用できるといったメリットもある。
次に写真機能である。あるグループの児童は「香登小学校に点字はあるのか?」というテーマを設定した。校内探検に出かけると,トイレのウォシュレットのところに点字が付いていることを発見した。それを端末で撮影・保存し,それを教室に持って帰ってきた。今度は,その点字の読み方が分からない。そこで,インターネットを使って点字の読み方を調べた。すると,水勢のところに「よわく」「つよく」と点字で書かれていたことを発見した。このように,写真機能を使うことで,フィールドワークや調査などの記録を撮影することができる。また,インターネット機能をかけあわせると,相乗効果によって学びをさらに深めることにつながる。
点字の紹介スライド