わたしの学校経営手帳 女性管理職の視点から[第4回] 4C(Communication,Chance,Challenge,Change)の学校づくり
学校マネジメント
2022.02.18
わたしの学校経営手帳
女性管理職の視点から[第4回]
theme:教職員の人材育成を核とした学校づくり
opinion3:宮崎県都城市立川東小学校長 柿木恵子
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.4 2021年11月)
4C(Communication,Chance,Challenge,Change)の学校づくり
教頭時代、赴任して間もないのに、「教頭先生、〜はどこにありますか?」とか、「〜してもよいですか?」などと尋ねられ、回答に戸惑ったことが思い出されます。今、振り返ると恥ずかしい限りですが、「自分が女性だから、試しているんだな」と疑念をもったこともありました。
しかし、あるとき、「そうですね……。先生は、どうしたらよいと考えられますか?」と聞き返すと、「〜したいのですが、どうでしょうか?」と質問型の相談だったことが分かりました。そして、「〜しては、ダメですよね?」という質問の裏には「ダメと言われるかもしれないけど、チャレンジしたい」という思いが隠されていました。一方向の情報伝達ではなく、お互いの考えや思いを確かめ合う双方向のコミュニケーションが先生方の学校経営への参画意識を高め、人材育成にもつながることを確信した瞬間でした。
まずは、Communication
風通しのよい職場環境づくりには良好なコミュニケーションは不可欠です。教職員の働き方改革が進む中、ICTの活用や放課後の会議の精選等も進んでいますが、本校では、あえて対面で協議する会議を大切にしています。
【学年部研修会】
隔週の火曜日は全校5時間授業とし、放課後に学年部研修会を行っています。学年部研修会では、学習指導や生徒指導上の課題についての共通理解や改善につながる対応等を協議します。その中で、ベテランが若手に具体的なアドバイスを行い、若手はベテランにICT活用についてレクチャーする姿などが見られ、計画的に行われるOJTの場となっています。
【企画会】
本校では、3か月分の教育計画を1回の職員会議で協議していますが、その提案内容については事前に企画会で、校長・教頭・教務主任・3人の分掌部長で検討を行います。当然、各部長にはマネジメント力が求められることになり、中堅職員以上のリーダーシップの向上を期待しています。
【教職員評価時のミーティング】
宮崎県では、学校経営ビジョンをより高いレベルで達成するために「役割達成度評価」を実施しています。学校組織の中での役割を確認し合う「目標設定ミーティング」と、その役割の進捗状況や課題等を共有し改善策を協議する「中間ミーティング」を行っています。ミーティングでは、一人一人の職員の頑張りを認め評価し、期待値を伝え、職員一人一人の学校経営の参画意識を高めることに努めています。
メールでの連絡や掲示板の活用は合理的で便利ですが、一方向の情報伝達になりがちです。対面での会議は空気感も含めて意思疎通ができるので、人と人が育ち合う場になります。
「変化(Change)」をうながす「機会(Chance)」と「挑戦(Challenge)」
人材育成の機会として、校務分掌組織を活かしています。学年経営ではベテランの力を存分に発揮してもらい、校務分掌では若手を主任等に積極的に登用し、学校組織の活性化を図っています。今年度、研究主任や体育主任、保健主事を教職経験5年前後の女性教員が務めていますが、ベテランたちがしっかりとサポートしてくれ、滞りなく運営できています。地域の人材や資源を活用した学習活動をコーディネートする地域連携の係も若手教員ですが、試行錯誤しながらも、関係機関との連絡調整や地域の方々との交流を通して、着実にマネジメント力を高めている様子を見ると嬉しくなります。若手教員の意欲はベテラン教員の若手育成というやりがいにつながり、双方が刺激し合い、育ち合う機会となっています。先生方を信じて、任せること、待つことが大切です。
令和3年1月26日の中央教育審議会答申において、令和4年度を目処に小学校高学年からの一部教科担任制の導入が示されましたが、本校では令和2年度よりモデル校として教科担任制を推進してきました。新しいことへの挑戦は先生方にとっては負担かもしれませんが、高学年における一部教科担任制の取組が学校組織を活性化し、子どもたちの豊かな成長につながることを期待しました。指導する教科が少なくなることで教材研究や授業準備が充実し、生徒指導の面では関係する職員が協力して対応できています。そして、ベテラン教員の児童への対応を若手教員が学ぶ場となり、高学年児童に関わる職員の間でOJTが自然に進められていました。
新しいことへのチャレンジは、人材が育ち合うチャンスです。GIGAスクール構想は現在進行形のチャレンジです。先生方は、この夏休みもタブレット端末を効果的に授業に活用するための研修に熱心に取り組んでいました。変化をチャンスと捉えて、チャレンジすることは、学校の活性化につながります。そうした変化を仕掛け、先生方の気持ちをポジティブに導いていくことは管理職の役目です。
「自己決定の場を与える」「自己存在感を与える」「共感的な人間関係を育成する」という生徒指導の3機能は教職員の人材育成においても当てはまります。常に職員のがんばりを認め、励ましながら、感謝の思いを伝えることです。これからも、先生方が自信をもって、子どもたちのためによいと思うことを進んで実践することができる学校づくりに取り組んでいきたいと思います。
Profile
柿木恵子 かきのき・けいこ
昭和35年生まれ。鹿児島大学卒業。専門は社会科、図書館教育。昭和58年宮崎県西都市立都於郡小学校で教員生活をスタート。平成15年宮崎県立図書館勤務、平成18年木城町立中之又小学校教頭、以後10年間教頭職を務める。平成28年えびの市立岡元小学校長、令和元年都城市立川東小学校長。令和3年退職・再任用校長として現職。趣味は読書、猫と遊ぶこと。
●大切にしていることば
一生懸命