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『最新 教育課題解説ハンドブック』Q&A 自律的学校経営の実践課題

NEW学校マネジメント

2021.01.08

『最新 教育課題解説ハンドブック』
〈スクール・マネジメント〉

教育課題研究会(代表:石塚等・横浜国立大学教職大学院教授)/編

『最新 教育課題解説ハンドブック』

◆自律的学校経営の実践課題

Q 「チーム学校」、「コミュニティ・スクール」などの教育改革との関わりを踏まえて、自律的学校経営を実践するための校長、教頭の役割について説明してください。

 

1  自律的学校経営に関わる平成10年中教審答申以後の制度改革

 

 個々の学校の自主性・自律性を確立するための方策を提言した中央教育審議会答申(以下「中教審答申」と略す)「今後の地方教育行政の在り方について」(平成10年9月)において、学校の組織運営について以下のように述べています。

 「各学校の自主性・自律性の確立と自らの責任と判断による創意工夫を凝らした特色ある学校づくりの実現のためには、人事や予算、教育課程の編成に関する学校の裁量権を拡大するなどの改革が必要である。また、学校の自主性・自律性を確立するためには、それに対応した学校の運営体制と責任の明確が必要である。このため、校長をはじめとする教職員一人一人が、その持てる能力を最大限に発揮し、組織的、一体的に教育課題に取り組める体制をつくることが必要であり、このような観点から学校運営組織を見直すことが必要である。」

 その後、平成16年には栄養教諭、平成19年には副校長、主幹教諭、指導教諭という新たな職が設置されるなど、学校を取り巻く様々な課題に対して一枚岩になって即応的に対応しやすい学校運営体制になるように整備されてきました。また、前掲中教審答申において「保護者や地域住民の信頼を確保していくためには、学校が保護者や地域社会に対してより一層開かれたものになることが必要」として提言された学校評議員制度は平成12年に制度化され、平成16年には、保護者や地域住民のさらなる参加(参画)を求めて、学校運営協議会制度が規定されました。学校運営協議会制度を導入したいわゆるコミュニティ・スクールは、令和元年5月1日現在、全国の公立学校の21.3%(7,601)校で導入されています。

 

2 自律的学校経営と「チーム学校」

 中教審答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(平成27年12月)において、これからの学校が教育課程の改善等を実現し、複雑化・多様化した課題を解決していくためには、学校の組織としての在り方や、学校の組織文化の在り方を見直し、「チームとしての学校」を作り上げていくことの重要性が提言されています。

 この答申では、「チーム学校」とは、「校長のリーダーシップの下、カリキュラム、日々の教育活動、学校の資源が一体的にマネジメントされ、教職員や学校内の多様な人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮し、子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校」と定義し、以下の三つの視点に沿って検討を行い、これからの学校のマネジメントモデルの転換を図っていくことを求めています。

 ➀ 専門性に基づくチーム体制の構築(教員が教育に関する専門性を共通の基盤として持ちつつ、それぞれ独自の得意分野を生かし、指導体制を充実させていくことと同時に、心理や福祉等の専門スタッフを学校の教育活動に位置付け、専門スタッフが専門性や経験を発揮できる環境を充実していく)

 ➁ 学校のマネジメント機能の強化(校長がリーダーシップを発揮できるような体制の整備や主幹教諭や事務職員の資質・能力向上による学校の事務機能の強化していく)

 ➂教職員一人一人が力を発揮できる環境の整備(教育委員会による人材育成や業務改善、教職員が安心して教育活動に取り組むことができるように学校事故や訴訟への対応について教職員を支援する体制を強化していく)

 「チーム学校」には、教員以外に、指導教諭、養護教諭 、栄養教諭・学校栄養職員、事務職員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ICT支援員、学校司書、ALTなどの専門スタッフの充実だけでなく、家庭や地域との連携の中で10の学校の力を12にする地域人材の発掘や効果的な活用なども求められています。

 制度的な改革を経て、自律的な学校経営のための条件整備はある程度整ってきましたが、ポイントとなるスクールリーダーの役割とはどのようなものか管理職自身が明確にできているかといえば、未だ十分ではありません。ベテラン教職員の大量退職、それに伴う教職員の若返り、多忙化などの学校内部の問題だけでなく、学校運営協議会による地域社会全体での教育目標の共有化や地域学校協働本部などとの新たな連携を模索する中でいかにリーダーシップを発揮していくかが問われています。

3 自律的学校経営と校長、教頭の役割

 学校経営の要となる校長の職務は、「校務をつかさどり、所属職員を監督する」(学校教育法第37条第4項)ことです。校長の「補助機関」としての職員会議の位置付けや校長に対する一定限度の予算権、人事権の付与などが提言され、学校の自主性・自律性の確立のために、特に校長の強いリ一ダーシップが求められてきました。しかし、校長のリーダーシップは、それを補佐する教職員との連携がなければ、独善的なリ一ダーシップとなって、個々の学校の自主性・自律性の確立と結び付きません。特に、「専門性に基づくチーム体制」を構築するには、校長は管理するものとして一方的な優位性のもとに指導するのではなく、個別学校のもつ課題を分析し、その課題を個々の学校の所与の条件のもとで解決するという自律的解決の文脈から学校のあり方、方向性をきちんと見据え、「チーム学校」の構成員それぞれに具体的な目標を提示し、その内実について共通理解を図ることに十分留意していくことが求められます。

 教頭の職務は、「校長を助け、校務を整理し、及び必要に応じ児童の教育をつかさどる」(学校教育法第37条第7項)ことです。教頭の仕事はその範囲が広いことに加え、他の職の者が自主的・自律的に仕事の遂行をしてくれないと仕事が増え、仕事の煩雑さに埋没してしまう危険性がある一方で、他の職の者に仕事を任せきりにすると学校全体としてのまとまりがなくなってしまうという微妙な関係性の下に規定されます。学校の自主性・自律性が、教職員個々の自主性・自律性に帰結するものだとすると、教頭は、自らの職務を遂行しながら、教職員個々の自主性・自律性を育てることを第一に考えなければならないのです。

 こうした仕事には、法に精通することやある種無機的な客観的な解釈ができることを超えた、教頭自らの教育経験に裏打ちされた人間(関係)の見方、育て方を含む「調整的」力量が求められます。最近の改革の中で、教頭の校務の「整理機能」を校長に対する「補佐機能」と結び付けて、管理的機能をもつ「調整機能」として捉えることもより重要になっています。特に、教頭は家庭・地域との連携の要として、とりわけ、コミュニティ・スクールの運営にリ一ダーシッブを発揮することが求められています。

◉ポイント
1.自律的学校経営のための条件整備は進んでおり、学校は「なべぶた型」組織から「ピラミッド型」組織に移行しつつある。

2.複雑多様化した課題を解決するために、「チーム学校」型のマネジメントモデルへの転換が求められており、管理職のリーダーシップがこれまで以上に問われている。

3.管理職のリーダーシップは、管理するものとして一方的な優位性のもとに指導するのではなく、学校のもつ課題を分析し、その課題を個々の学校の所与の条件のもとで解決するという自律的学校経営の文脈から、①校長はたくましくしなやかに共通理解を前提としたリーダーシップを、②教頭は関係性のパランスを意識した「調整的」リーダーシップが求められている。

 

                                        [堀井 啓幸]

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