最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選

菱村幸彦

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選 Q100 インフルエンザに罹患した児童生徒に対し出席停止の措置をとるには、どうすればいいですか。

学校マネジメント

2021.01.07

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選
第4章 学校運営のコンプライアンス

菱村 幸彦
国立教育政策研究所名誉所員

『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選』2020年10月

Q100 インフルエンザに罹患した児童生徒に対し出席停止の措置をとるには、どうすればいいですか。

◯学校感染症の予防

 毎年、冬になるとインフルエンザが流行します。学校では、多くの児童生徒が集団で生活を共にしていますから、そこに感染症が発生すると、学校が病原を媒介する場となって、次々と広がっていくおそれがあります。

 そこで、学校保健安全法は、感染力が強く、児童生徒の健康に重大な影響を与える病気を「学校において予防すべき感染症(学校感染症)」と規定し、予防のための法的な措置を定めています。

 学校感染症については、学校保健安全法施行規則18条に規定があります。同条は、学校感染症を3種に分けて、おおむね次のように定めています。

(1)第1種
エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病など12の感染症

(2)第2種
インフルエンザ、百日咳、麻しん、流行性耳下腺炎、風しんなど9の感染症

(3)第3種
コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症

 この分類についてコメントすると、第1種は稀な感染症。第2種は放置すると広がるおそれのある飛沫感染症。第3種は飛沫感染でないが放置すれば広がるおそれのある感染症です。

 そこで、こうした学校感染症が発生した場合の対応について、学校保健安全法は、出席停止と臨時休業の2つの法的措置を定めています。

◯感染症予防の出席停止

 まず、出席停止です。学校保健安全法19条は、「校長は、感染症にかかっており、かかっている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる」と定めています。

 学校感染症にかかった児童生徒が、無理して出席すると本人の回復が遅れるだけでなく、他の児童生徒に感染し、校内で流行するおそれがあります。これを防ぐには、罹患した児童生徒を学校に来させない措置をとる必要があるわけです。

 校長は、児童生徒に対し出席停止措置をとる場合、その理由と期間を明らかにして、中学生以下にあっては保護者に、高校生以上にあっては本人に指示しなければならないこととなっています(学校保健安全法施行令6条)。出席停止の措置をとる際は、校長は学校医又はその他の医師の意見を聞いて行うことになります。

 出席停止の期間をどうするかは、病気によって異なります。学校保健安全法施行規則は、学校感染症の種類ごとに出席停止の期間を定めているので、これも詳しくは施行規則19条をご覧ください。

 一例を挙げれば、インフルエンザについては「解熱した後2日を経過するまで」、百日咳については「特有の咳が消失するまで」、麻しんについては「解熱した後3日を経過するまで」などとなっています。これは一応の基準です。医師がもう伝染のおそれはないと認めたときは、医師の判断によって決めることとなります。

 

 

Profile
菱村 幸彦(ひしむら・ゆきひこ)
京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課 長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等 学校長などを歴任。現在、国立教育政策研究所名誉所員。
著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ 教育法規』(教育開発研究所)、『管理職のためのスクール・コンプライアンス』(ぎょうせい)、『戦後教育はなぜ紛糾したのか』(教育開発研究所)、 『はじめて学ぶ教育法規』(教育開発研究所)、『やさしい教育法規の読み方』 (教育開発研究所)など多数。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

1問5分でわかるトラブル防止策+法的根拠 元文部省局長で校長経験もある教育法規のスペシャリストがやさしく解説!

お役立ち

最新 Q&Aスクール・コンプライアンス120選 ハラスメント、事件・事故、体罰から感染症対策まで

2020年10月 発売

本書のご購入はコチラ

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

菱村幸彦

菱村幸彦

国立教育政策研究所名誉所員

京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等学校長などを歴任。著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ教育法規』『はじめて学ぶ教育法規』『やさしい教育法規の読み方』(いずれも教育開発研究所)など多数。

閉じる