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『最新 教育課題解説ハンドブック』Q&A ライフステージと個に応じた研修の設計

NEW学校マネジメント

2020.12.25

『最新 教育課題解説ハンドブック』
〈スクール・マネジメント〉

教育課題研究会(代表:石塚等・横浜国立大学教職大学院教授)/編

『最新 教育課題解説ハンドブック』

◆ライフステージと個に応じた研修の設計

Q115 教員研修においては、ライフステージに応じた研修体系の整備と同時に、主体性を重視した自己研修も重要と言われています。両者のバランスをどうとったらよいのでしょうか。

1 ライフステージに応じた研修体系

 研修体系に関する法令と制度については、平成29年度に大きな改正が行われました。

 従前からの大きな枠組みとして、教員の任命権者である教育委員会が研修計画を策定し、その機会を提供すること、教育委員会が提供する研修の機会とは別に大学等が教員養成課程で提供した内容を最新のものに更新した講習の機会を提供すること(免許更新講習) で養成機関と任命権者が現職教育の機会を提供することは変わっていません。

 平成27年に中教審は初任者研修と10年経験者研修の実施時期の弾力化、大学など教員養成機関と教育委員会の連携の強化などを提言しました。それにより、平成29年度より教育公務員特例法が改正され、10年経験者研修が中堅教諭等資質向上研修に変わりました。10年経験者研修は「在職期間が10年に達した後相当の期間内に、個々の能力、適性等に応じて、教諭等としての資質の向上を図るために 必要な事項に関する研修」と規定されていました。中堅教諭等資質向上研修は「中堅教諭等としての職務を遂行する上で必要とされる 資質の向上を図るために必要な事項に関する研修」と規定され、実施時期の規定がなくなりました。

 法改正を受けて、それまでは10~12年目に実施されていた研修が8~13年目に実施されるようになりました。法律に基づかない教育委員会の判断による経験者研修の実施時期も、初任期を含めて幅広くなりました。

 また、免許状更新講習については改正法の施行通知において「中堅教諭等資質向上研修をはじめとする現職研修と免許状更新講習の整合性の確保については、教員の負担を軽減する観点から、免許状 更新講習の科目と中堅教諭等資質向上研修等の科目の整理・合理化や相互認定の促進を図ること」と記されています。従前は10年経験者研修と免許更新が重複した受講者においては事実上の研修負担の増加となることが批判されていましたが、今後は現職研修と免許状 更新講習が時期的に重複した受講者においては現職研修の受講が免 許状更新講習の単位として認定する配慮が増えることと思われます。

2 個に応じた研修の必要性

 10年経験者研修においては「個々の特性、適性等に応じて」、中堅教諭等資質向上研修においては「個々の能力、適性等に応じて」 と、個に応じた研修の必要性を記述しています。この理念を明確にしたのは10年経験者研修に関して答申した教育職員養成審議会答申 (平成11年)であり、「画一的な教員像を求めることは避け、生涯にわたり資質能力の向上を図るという前提に立って、全教員に共通に求められる基礎的・基本的な資質能力を確保するとともに、更に積極的に各人の得意分野づくりや個性の伸長を図ることが必要」と提言しています。

 最近は、多くの教育委員会が人事考課制度を実施しています。教員の勤務を単に評価するのではなく、教員の能力開発を意図してお り、まずは教員に努力目標を設定させ、その目標に向かってどのように研鑽しているかを管理職が評価する仕組みとなっています。

 教員が年度当初に掲げた目標に必要であれば、教育センターの専門研修を受講させたり、休業日に開設されている研修の機会や研究会への参加などを勧めることも、管理職の役目となっています。

 人事考課制度では、管理職が教員の授業を観察することが義務付けられることが多く、それまで校長が校内を見回ることがあまりなかった学校では、校長が教室に入る契機になっているようです。でも、それまであまり授業を見たことのない校長は、適切な指導がで きるかどうか、不安もあるようです。校長たるもの、自分の専門外 の教科でも、所属職員の授業を見て、授業をもっとよくするための アドバイスができるようになる必要があります。人事考課制度の課 題は、教員の目標設定においても見られます。目標を達成すること を意識するあまり、意図的に低い目標を設定して、それを達成できたという報告書を書く教員がいるようです。人事考課制度は、教員 が現状よりも高い力量を獲得できるように、自己の現状よりも少し高い目標を掲げ、それを達成するように努力することに意義があります。目標達成そのものに焦点を当てて、目標の水準を下げるようなことがあっては本末転倒です。そのようなことがないよう、管理職は所属の教員が掲げた目標が妥当なものであるかどうかをチェッ クすることも求められています。

 初任者からの研修が順調に実施されていれば、力量が向上し、やがて研究主任や教務主任などの役職を担うことが可能になります。 ただし、人によっては、校務を担当するよりも、授業を追究することに専念した方が向いている教員もいます。

3 キャリアコースの多様化

 平成19年に改正された学校教育法で指導教諭という職が新設されました。主幹教諭や主任が管理職を補佐して校務を担当するのに対し、指導教諭は他の教員の授業を指導することが役目となっていま す。教員によっては、様々な校務を担当して管理職としての道を歩んだ方がよい人もいるでしょうし、授業の達人を目指した方がよい人もいるでしょう。個に応じた研修とは管理職や指導教諭など、教員のキャリアコースに応じた研修でもあります。

 初任からのライフステージに応じた研修が適切に実施されていれば、すべての教員の力量は経験年数を積むほどに高まっていくはずです。ところが残念なことに、一部に指導が不適切な教員がいます。彼らの多くは、最初からそのような状況だったのではなく、 様々な事情から不幸にもそのような状態になったと思われます。そのような教員に対しても教育委員会は特別な研修の機会を与え、指導力を回復するよう働きかける必要があります。

 国は、平成20年度に教育公務員特例法を改正し「指導が不適切であると認定した教諭等に対して、その能力、適性等に応じて、当該 指導の改善を図るために必要な事項に関する研修(以下「指導改善 研修」という。)を実施しなければならない」と規定しました。指 導が不適切と評価された教員は、適切な研修プログラムを受講する ことが求められるとともに、そうなる以前に教育委員会や校長が本人の課題をキャッチして早めに指導することが求められています。

 校長や教育委員会が、ライフステージに応じた研修の機会を提供すると同時に、個々の教員の課題を適切に把握し、研修意欲を喚起 しながら、自主的・主体的研修活動を奨励・支援することができたならば、教員の力量は今以上に伸びることになるでしょう。

◉ポイント
1.教職経験だけでなく個に応じた研修の機会が必要である。
2.個に応じた研修のために管理職の支援も必要である。
3.教員の力量向上のために大学と教育委員会の連携が求められる。

                                        [千々布 敏弥]

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