Q&Aスクール・コンプライアンス

菱村幸彦

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選 Q70 いじめ防止対策推進法は、いじめの防止に関して、学校や教師にどのような法的義務を定めていますか。

学校マネジメント

2020.12.24

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選
第3章 生徒指導のコンプライアンス

菱村 幸彦
国立教育政策研究所名誉所員

『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選』2020年10月

Q70 いじめ防止対策推進法は、いじめの防止に関して、学校や教師にどのような法的義務を定めていますか。

◯いじめ防止対策推進法が定める義務

 いじめ防止対策推進法は、学校や教師について、次のような義務を規定しています。

 第1は、いじめ防止基本方針の策定です。学校は、国のいじめ防止基本方針及び地方いじめ防止基本方針を参酌し、「学校いじめ防止基本方針」を策定することが義務付けられています(13条)。

 第2は、いじめ防止対策組織の設置です。学校は、いじめの防止に関する措置を実効的に行うため、教職員、心理・福祉などの専門家、その他の関係者により構成する「いじめの防止対策のための組織」を常置することが義務付けられています(22条)。

 第3は、いじめ防止の指導です。いじめの防止に資するため、学校は、全教育活動を通じた道徳教育と体験活動の充実を図る必要があります(15条1項)。また、学校は、いじめを防止するため、保護者、地域住民などとの連携を図って、いじめの防止活動を支援し、いじめ防止について啓発を行う義務があります(15条2項)。

 第4は、いじめの早期発見です。学校は、いじめを早期に発見するため、児童生徒に対する定期的な調査などを講ずる義務があります(16条1項)。また、学校は、児童生徒、保護者、教職員がいじめについて相談を行うことができる体制を整備することが求められています(16条2項)。

 さらに、インターネットを通じて行われるいじめを防止し、それに効果的に対処するため、児童生徒や保護者に啓発活動を行うことが必要です(19条)。

◯いじめに対処する具体的措置

 第5は、いじめに対処するための具体的措置です。いじめ防止対策推進法は、いじめ防止策として、学校に次の措置を義務付けています。

(1)教職員は、児童生徒からいじめの相談を受け、いじめの事実があると思われるときは、学校に通報し、情報を共有するなど適切な措置をとること(23条1項)。

(2)学校は、通報を受けたときは、速やかに、いじめの事実確認を行い、その結果を設置者に報告すること(23条2項)。

(3)いじめが確認された場合、いじめをやめさせ、再発を防止するため、教職員は、心理・福祉などの専門家の協力を得て、いじめを受けた児童生徒とその保護者への支援、いじめを行った児童生徒の指導とその保護者への助言を行うこと(23条3項)。

(4)いじめられた児童生徒の安心のために必要がある場合、いじめを行った児童生徒を教室以外の場所で学習させるなどの措置をとること(23条4項)。

(5)いじめを受けた側及びいじめを行った側の保護者間で争いが起きないよう、いじめの情報を共有する措置などを講ずること(23条5項)。

(6)いじめが犯罪行為であると認めるときは、警察と連携して対処し、生命・身体・財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、直ちに警察に通報し、援助を求めること(23条6項)。

(7)いじめを行った児童生徒の懲戒又は出席停止について適切な運用を行うこと(26条)。

(8)重大事態が発生した場合は、速やかに組織を設け、質問票の使用その他の適切な方法により、事実関係を明確にするための調査を行い、必要な情報を児童生徒と保護者に提供すること(28条)。

 

 

Profile
菱村 幸彦(ひしむら・ゆきひこ)
京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課 長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等 学校長などを歴任。現在、国立教育政策研究所名誉所員。
著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ 教育法規』(教育開発研究所)、『管理職のためのスクール・コンプライアンス』(ぎょうせい)、『戦後教育はなぜ紛糾したのか』(教育開発研究所)、 『はじめて学ぶ教育法規』(教育開発研究所)、『やさしい教育法規の読み方』 (教育開発研究所)など多数。

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最新 Q&Aスクール・コンプライアンス120選 ハラスメント、事件・事故、体罰から感染症対策まで

2020年10月 発売

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菱村幸彦

菱村幸彦

国立教育政策研究所名誉所員

京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等学校長などを歴任。著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ教育法規』『はじめて学ぶ教育法規』『やさしい教育法規の読み方』(いずれも教育開発研究所)など多数。

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