学校改革の新定石
学校改革の新定石 第2回 DCAPマネジメントサイクル(直後プラン)
学校マネジメント
2019.07.05
学校改革の新定石
第2回 DCAPマネジメントサイクル(直後プラン)
(『新教育課程ライブラリ Vol.2』2016年2月)
従来のPDCAのマネジメントサイクルでは、教育活動後の評価・改善・計画案の作成が遅い。そこで、実践直後に出た課題を全教師がワークショップ形式で評価をし、改善策・計画案を立てるDCAPの教育活動を同時期に行う方式を提案したい。年度末評価なし、新年度計画なし、職員会議なしとなり、子どもに向き合う時間が確保できる。
これまでの教育課程の作成方法
行事は、実施前に時間をかけて討議をするが、終えるとそのままにしておくことが多い。「話し合い」を重視し、共通理解を優先する方法だからだ。会議で教育課程を一つ一つ討議をするため、とにかく時間がかかる。日々、生徒指導や学力向上等の指導に時間をかけなくてはならないのに、共通理解のための話し合いに時間をかけているのが学校の現状だ。また、話し合いでは、事案をよく知っている人に発言が偏ったり、一つの議案ごとに会議をもつことも多く、話し合いに実に多くの時間を費やしている。
これまで、行事のたびに結果や課題を集めて年度末に討議をし、新年度計画を立てるなどの方法が取られてきた。学校評価も同じだ。反省や計画は「まとめて行う」が学校の常識である。この学校常識を是非とも変えたい。教育課程は、研究授業などの実施後即座に評価し改善プランを立案する。その場で次の計画を書き換えていくのである。それを筆者は「直後プラン」と呼んでいる。その上で職員会議や委員会等の会合はできるだけ廃止か、削減を行うようにする。そうすれば、必ず子どもと向き合う時間は確保できる。
マネジメント意識の向上
教育課程を編成する上でかぎとなるのは、教師の学校帰属意識を高めることだ。これまでの教育課程を編成するための話し合いに時間をかける方法では、教師に多忙感が出る。結局は前年度と同じ教育課程を「とにかくこなす」だけとなる。学校独特のPDDDCAサイクルである。教師にこなせばよいという意識が出れば学校帰属意識が薄れる。このサイクルを変えれば、起案文書を日付だけ変えて提案するような教師を減らし、マネジメント意識を高めることができる。
では、帰属意識をもてるマネジメントとはどのようなものか。
DCAPマネジメントカリキュラムサイクル
1 ねらい
改善点を即座に生かして、次年度教育課程を実施できるようにしておく。
2 方法
①行事実施後すぐに、全員でミーティングを行い、改善点を話し合う。
②改善点について担当者が起案する。
③起案が通ったら夕会で報告する。
④起案されたプリントは各自がファイリングする。
⑤直後プラン冊子に入れる。
運動会を例に「直後プランDCAPマネジメントカリキュラムサイクル」を説明しよう。
運動会実施後「D」、ワークショップ型のミーティングで評価「C」をする。立ったまま教師・保護者・中学生が評価を行い改善策「A」を出し合う。担当者は、改善策をまとめ、翌日には、次年度の計画「P」を立てて決裁を受ける。その後、全員に周知する。教師は、次年度の新計画案を、翌年度のファイルにとじる。
高知県越知町立越知小学校・南国市立日章小学校の事例から
越知小学校、日章小学校では、
①事案決定システム
②一役一人制運営組織
③直後プラン
を中心に学校改革を行っている。改革は、ほぼ軌道に乗り、学校にゆとりが出てきた。このゆとりが校内研究の推進に向かい教師の授業力向上につながった。なお、子どもの学力に課題にあった両校が最近では大きな成果を上げている。教師にゆとりが出れば子どもに向かう時間が増え、そのことが学校の活性化に繋がることが実証された。
Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる! 学力向上の処方箋』など。