リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 「本物」に出会い「本物」をめざす 楽しい学校づくり

トピック教育課題

2023.04.27

目次

    リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 我が流儀生まれいづるところ

    長崎県長崎市立諏訪小学校長
    山﨑直人

    『教育実践ライブラ』Vol.5 2023年1

     長崎には「長崎くんち」という秋の大祭があります。江戸時代から続く伝統的な祭りで、純日本風の踊りもあれば、中国・オランダ・ポルトガルなど出島を通して交流のあった異国情緒溢れる船を豪快に曳き回す迫力ある演じ物もあります。中国から伝わった「龍踊り(じゃおどり)」は特に有名です。それぞれの演じ物は「踊町(おどりちょう)」と呼ばれる町ごとに伝統的に引き継がれ、7年に一度の出番に備えています。

     長崎っ子が楽しみにしている祭りですが、コロナ禍の影響でこの3年間は中止となってしまいました。しかしそのような中、「くんち」を続けているのが、本校の「諏訪っ子くんちフェスティバル」です。本物の祭りに出演する踊町に囲まれている本校の伝統ある学校行事です。児童玄関には「長崎くんち」の演じ物を描いたレリーフが掲げてあり、毎日子供たちを出迎えています(写真1)。


    写真1 「長崎くんち」のレリーフ

     私は諏訪小に赴任して、この長崎くんちをはじめとする「本物」を生かした学校経営を行うこととしました。「本物」の条件を3つ掲げました。「本物は、続く」「本物は、広がる」「本物は、感動を呼ぶ」です。長崎くんちの伝統はもちろん、様々な本物に出会い、自らが本物を創造することを大切にしたいと考えたのです。取組のいくつかを紹介します。

     まずは、おそらくどの学校でも大事にされている挨拶についてです。本物の挨拶の形として、本校では「ワンストップ先言後礼」という合言葉で示しています。単に挨拶をしましょうというだけではなく、一度立ち止まる、相手の目を見てまず挨拶の言葉を言い、そして礼をする、という一連の所作を求めたのです。一度止まるので「ワンストップ」、先に言葉を言うので「先言」、礼は後なので「後礼」です。

     写真2のイラストを用いて1年生にも分かるように説明しました。


    写真2 「ワンストップ先言後礼」のイラスト

     毎朝、玄関前で子供たちを迎えていますが、一人一人と視線が合う瞬間は大きな喜びです。「本物は、続く」。続けることで本物にしていこうと考えています。

     次に紹介するのは「校長先生からの挑戦状」という取組です。2つの挑戦状を投げかけました。1つは「暗唱チャレンジ」です。低・中・高学年それぞれに課題を示し、担任に合格をもらったら校長室での暗唱検定に臨むのです。

     低学年は「いろはうた」「ありがとう」「ともだち」、中学年は「私と小鳥とすずと」「じゅげむ」「おちば」、高学年は枕草子の「春・夏」「秋」「冬」としました。言葉遊び歌や古典、名詩という日本人なら知っておいてほしい「本物」に触れさせるのが目的です。合格者には「合格証」を渡しました。校長室で一人だけで暗唱するのですから緊張もするでしょう。合格した時の笑顔は最高です。この時ばかりはマスクを外すようにしていました。

     2つめの挑戦状は「長縄チャレンジ」です。学級の仲間と8の字跳びに挑戦です。3分間の記録を競いました。記録への挑戦も大切ですが、練習の過程でどの学級でもいくつもの壁に当たります。記録の伸び悩みや練習方法や仲間との温度差などです。それらを乗り越えるところに価値があると考えています。

     暗唱も長縄も特別な取組ではありません。全国のどの小学校でも実践されていることでしょう。ただそこに「校長先生からの挑戦状」と銘打つことで、学校を挙げての取組にすることができ、「本物感」を高めることができるのではないかという工夫です。

     また、全校の前で代表の発表をしたり、学校全体のために良い行いをしたりした児童や学級へ「ありがとうカード」の発行も行いました。これも「校長先生はいつも見ているよ」というメッセージです。

     そして、何と言っても本校が誇る最大の行事は「諏訪っ子くんちフェスティバル」です。3年生から6年生までが縦割りで6つの演じ物を披露します。各踊町の方々からの本物の指導を受けて臨みます。

     本番では、子供とは思えぬ迫力で、観客を魅了するのです(写真3)。


    写真3 「諏訪っ子くんちフェスティバル」の演じ物

     学校は独自の伝統と校風をもっています。そこへどう自分らしさを出していくか。校長室は「本物の楽しさ」を創造する作戦基地なのです。

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