リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 つながりを支えに今日も「みがく まなぶ きたえる」
トピック教育課題
2023.02.22
目次
リレーエッセイ 校長のお部屋拝見 我が流儀生まれいづるところ
愛媛県宇和島市立御槙小学校長
岩﨑明子
本校は、愛媛県宇和島市の南東、高知県境に位置し、四方を千メートル級の山々に囲まれた、標高約250メートルの緑豊かな盆地にあります。校区には田園が広がり、時には鹿や猿などの野生動物も見られる自然豊かな地域です(写真1)。地域の方や保護者は教育活動に協力的で、学校行事等にも積極的に参加してくれます。運動会は「丸太切り競争」「縄ない対決」など地域色あふれる競技で大いに盛り上がり、準備や片付けも率先して手伝ってくださいます。学習発表会には保護者とそのOBの方で結成した「御槙劇団」の趣向を凝らした創作劇が披露され、会場から万雷の拍手を浴びます。保護者の中には、この豊かな自然の中で子どもたちに教育を受けさせたいと考え、都会から移住された方もおられ、過疎高齢化が進んでいる御槙地区に新しい風を吹き込んでいます。
昭和30年2月に完成した現校舎は、当時珍しい鉄筋コンクリートの土台に、地元の山から切り出した木材が使用されています。現在のように道路が整備されておらず、協力して必要な材料を運ぶなど地域を挙げて校舎改築に御尽力いただいたそうです。昨年度、本校に着任した日、「新しい校長先生と話したくてなあ」と地域の方が突然校長室を訪れ、新校舎建築当時の苦労や学校への思いを語ってくださいました。その時、校長室に飾ってある改築前の学校の様子を描いた絵を見ながら「学校や子どもたちは地域の宝やけん、何でも協力するで」と、心強い言葉をいただきました。優しいタッチで描かれたこの絵から、地域の方の温もりと確かなつながりを日々感じています(写真2)。このように、地域とのつながりを生かした教育活動や温かい学校支援が本校をしっかりと支えてくれる「根っこ」です。
現在、全校児童は13名。2年生の在籍がないため、1・3年、4・5年、6年の3学級編制です。児童は登校すると、「みまき委員会」の仕事や学級園の世話、運動場の草引きなど朝から一生懸命取り組みます。授業はもちろんのこと、どんな活動でも前向きに取り組み、その姿は下級生児童へと受け継がれています。全員が兄弟姉妹のように仲が良く、一人一人の良さや特性を存分に発揮しています。互いに認め合い、受け止め合うその姿勢は、私たち教職員も大いに学ぶところです。人・事とまっすぐ向き合う教育活動、校訓「みがく まなぶ きたえる」が本校の幹です(写真3)。言葉の頭文字を順に読むと「みまき」、地域名・学校名となるこの校訓を中心に学校経営に取り組んでいます。児童には、「心を磨く 進んで学ぶ 体を鍛える」と、より具体的に伝えています。
心を磨く【徳】:挨拶・仲間づくり・美化活動
進んで学ぶ【知】:協働的な学び・ICT活用
体を鍛える【体】:健康増進・レジリエンス
教職員は、この幹に沿って、互いに研鑽しながら授業改善に取り組み、児童とともに汗を流し、心に寄り添う指導や支援に努めています。しかし、児童も教職員もまだまだできていないことや未熟な面がたくさんあります。それも理解した上で、互いに補い合いながら教育活動に真摯に取り組んでいます。
私の信条は「教育は人なり」。人とのつながりを最も大切にしたいと考え、「まず、自分から心を開く」ことを心掛けています。在室中、校長室の扉はいつも開けています。来客や教職員、児童等誰でも気兼ねなく声を掛け、入ってきていただきたいからです。相談事など必要な場合は閉めますが、基本的には開けるようにしています。気軽に声を掛けてくださる方が増えたり、教職員が「ちょっといいですか?」と言いやすくなったり、まずまずの好感触です。児童からの「校長先生、遊びましょう」のお誘いも大歓迎です。つながりを強く更に広げる、根から幹・枝葉へつなぐことが私の役割と考え、校長室の入口にある鏡で表情と心を整え、どんな時も上機嫌で対応するようにしています(写真4)。
地域とのつながりを生かした教育活動、苗立てから田植えに草刈り、穫れた米の活用まで考える本格的な米作り、「御槙地区自然を守る会」とともにサギソウの自生地である源池公園を整備する環境保護活動、「山里の元気につなげたい」と地元主婦の方がオープンさせた民宿「みまきガーデン」との交流など、たくさんの温もりに支えられ、児童は生きる力や愛郷心を育んでいます(写真5)。また、ICTの活用で学びの機会が豊富になり、多様な人と距離を気にせず交流することができるようになりました。どんどん枝葉が伸びそうです。
つながりを支えに、今日も「みがく まなぶ きたえる」学校を目指し、校長として「人」を大切に、絆をつなぎ続けます。