Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第3回] さまざまな学習場面への転移を意識した端末活用

トピック教育課題

2021.12.10

Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第3回]
さまざまな学習場面への転移を意識した端末活用

[回答者]茨城大学准教授 小林裕紀

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.3 2021年8月

 

Q

1人1台端末の日常的な活用について、具体的にどのような活用事例が考えられるのでしょうか。

 

A

他の学習場面に転移できる活用

 日常的な活用を推進するためには、ある教科の特定の学習場面だけで活用できるといった事例ではなく、教科を問わず、授業内外も含めて、さまざまな学習場面に転移できる活用を意識することが重要です。具体的には、次の5つの活用が考えられます(図1)。以下に順を追って、それぞれの活用について具体例を示していきます。


図1

撮って活用する


図2

 カメラ機能は端末の機種を問わず活用でき、学校種や学年に関係なく活用場面を見出すことができます。例えば、小学校1年生の生活科において、大事に育ててきたアサガオの写真を撮り、書き込みをしてカードを作成する事例が挙げられます(図2)。お気に入りの角度から撮影したアサガオに、ぴったり合うイラストやメッセージを添えてカードを作り、友達同士やおうちの人に見せて、感想を交流します。他にも2年生の算数科において、身の回りにある形(三角形や四角形)を見つける際に、カメラ機能を活用したり、生活科の町たんけんにおいて、カメラ機能で気になった場所やインタビュー動画を撮影したりする実践も見られます。高学年や中学校では、体育の他、理科の実験の様子を撮影し、考察に活かしたり、グループ交流に活用したりすることも可能です。

 このように、撮影された画像や動画は、その後、伝える学習活動(プレゼンテーション)に活用されることも十分に考えられます。カメラ機能の活用は、撮影するだけに留まらず、日常的なプレゼンテーション等、多様な展開を期待できます。「撮って活用する」ことは日常的な活用の第一歩と言えるでしょう。

置き換えて活用する

 レポート作りや新聞制作は、これまでの学校教育の中で、たびたび用いられてきたアウトプットの一つです。1人1台端末を、このレポート作りや新聞制作といったアウトプットの場面で活用してみましょう。これまでの手書きの方法をICTに置き換えてみるのです。学校教育向けの専用アプリがあればよいですが、用意されていなくても、一般的な書類作成やスライド作成アプリで十分ですので、端末の機種を問わず実践できます。

 ICTを活用することで、制作後においても気軽に修正することができます。写真も複数枚同じ位置にレイアウトできたり、表やグラフを用いたりすることも容易にできますし、インタビュー動画や実験映像などを載せることもできるのです。また、共同編集の機能を活用してみることで、これまでにない学びが生まれそうです。

 振り返りについても同様です。「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、自らの学習を振り返ることは、学校種を問わず極めて重要です。だからこそ、毎時間や単元末の振り返りは、効率良く実施したいものです。そこで、1人1台端末の活用です。選択式や自由記述から構成されるフォームを作ります。フォームの作り方は、動画配信サイトに公開されていますので、ヒントにしてください。ICTを使うことで短時間で行えることから、継続的に実施できます。また、蓄積されたデータを計量的に扱えます。そして、蓄積されたデータを見直す機会を設定することで、子どもたちは自らの学びを再認識できるようになるでしょう。また、教師にとっては、授業改善の手がかりを得ることにもつながりそうです。

すでにあるものを十分に活用する

 GIGAスクール構想では、1人1台端末の整備とともに、高速大容量で安定したネットワークも整備されることになっています。そこで見直したいのが、デジタル教材の活用です。中でも、質の高いコンテンツが豊富に用意されているNHK for Schoolの活用です。近年では、教科の学習以外にプログラミングや情報活用能力、STEM教育にも対応した番組作りが行われています。活用可能性は十分にありそうです。

 従来通り、一斉視聴による活用も考えられますが、1人1台端末の環境を活かすならば、番組やクリップ(短い動画)を指定できるプレイリスト機能を使って、家庭において視聴する課題を出してみたり、グループで学習を進める際に、課題に応じてグループ視聴したりする活用がおすすめです。

 

 本稿で紹介した以外にも、クラブ活動、学校行事等の特別活動といった教科の学習外での活用も考えられます。日常的な活用が求められる今、活用イメージをぜひ広げてみてください。そして「まずはやってみる」。これが新しいことに取り組むときの大原則と心得て、ぜひ第一歩を踏み出してみましょう。

 

 

Profile
茨城大学准教授
小林 裕紀 こばやし・ゆうき
 公立小学校教諭を経て2015年4月より現職。専門は教育工学、情報教育、ICTを活用した実践研究。文部科学省ICT活用教育アドバイザー、文部科学省委託事業「小学校プログラミング教育の円滑な実施に向けた教育委員会・学校等における取組促進事業」委員等を歴任。主著『カリキュラム・マネジメントで実現する学びの未来STE(A)M教育を始める前に[カリキュラム・マネジメント実践10』中川一史・小林祐紀・兼宗進・佐藤幸江(編著・監修)翔泳社(2020)、『小学校プログラミング教育の研修ガイドブック』小林祐紀・兼宗進・中川一史(編著・監修)翔泳社(2019)ほか。

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