プレミアムPOCKET BOOK スクールリーダー必読! 知っておきたい「著作権」のルール OK? NG? 教職員のための著作権のルール

トピック教育課題

2020.10.21

本記事は2020年8月時点の法令によります。必要に応じて最新の法令を参照ください。 

以下のQ&Aでは「著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる規定」に関する事例を取り上げる。

 教員研修会などでは、「本を授業で利用する場合はコピーしてもOKか?」というような質問がしばしばみられるが、本といっても様々な内容や用途のものがあるし、授業の中でも使い方によって許諾が必要な場合・それが必要でない場合がある。

 そもそもOKかどうかは本来、著作権者に尋ねるべきものであって、第三者に聞いても仕方がない。「無断で利用してよいか(その条件を満たしているか)?」を尋ねる意図かと考えられるが、他人の財産を無断で利用しようとするのであれば、それが許容されるような前提条件が必要である。確かに教育活動は非常に公共性が高い営みであり、しかも多くの場合、営利を目的とした活動ではないが、「教育目的であれば」という大雑把な前提はもたないほうがよい。

 本章の章末に「著作権を制限する規定」の一覧(表4)を示すので、知っておくと便利な規定として参考にされたい。


Q 個人でアカウントをもっているSNS やブログに、自分が好きなアーティストの写真や音楽ファイルを貼り付けることは私的使用に当たり、著作権者の許諾を得る必要はないと考えてよいか。

A 私的使用目的の複製が著作権者の許諾を得ずに行えるのは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において著作物の複製物が使用されることについて、著作権者が干渉することはプライバシーの面からも慎重である必要があり、そのような閉鎖的空間における利用であれば著作権者の利益を害することはないと考えられるからである。

 しかし、SNSやブログなどに著作物を掲載するということは、家庭内のような閉鎖的空間の中で利用しているのではなく、世界中に発信していることになる。したがって、個人のアカウントのSNSやブログであってもそのようなメディアに著作物を掲載することは、著作権者に無断で行える行為には当たらない。

Q 保護者に対して家庭における感染症予防のための留意事項を周知するため、最新の医学雑誌から正しい手洗いの方法、家具調度の殺菌の方法などに関する説明を抜粋して、学校だよりのプリントに掲載したいが、著作権者の許諾を得る必要はないか。

A 感染症の予防に関する説明を、例えば校長や養護教諭が執筆し、その補足や裏付けとして専門的な書籍等の文章から引いてくることを引用といい、著作権法では、公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内であれば、著作権者の許諾を得る必要はないとされている。

 公正な慣行とは、例えば引用部分を「 」でくくること、本文と引用文の間に質的・量的な主従関係があることなどが必要といわれており、それに加えて出典を明示しておくことも必要である。

 逆に考えると、感染症予防の説明を医学雑誌の専門記事だけで構成したり、校長や養護教諭が表現した部分が引用文よりも明らかに少ない体裁にとどまったりした状態で学校だよりに載せるようなことは引用には当たらない。

Q 環境保全の必要性について専門家が解説した新聞記事を、総合的な学習の時間での話し合い活動の材料としてコピーして 児童生徒に配付したいが、著作権者の許諾を 得る必要はないか。また、同僚教職員で問題 意識を共有するため、そのコピーを職員会議や学年会、教科連絡会で配布してよいか。

A 授業の過程で教科書以外の副教材として新聞記事のコピーを配付して学習させる場合、そのような複製については著作者の許諾を得る必要はない。ただし、著作物の種類・用途、複製の部数・態様に照らして著作権者の利益を不当に害する場合には、授業の過程で使用する目的であっても、著作権者に無断で複製することはできない。

 例えば、アプリケーション・ソフトは著作物の種類、ワークブックは著作物の用途、豪華な上質紙によるカラー印刷製本は複製の態様といった観点から著作権者の利益を不当に害すると考えられる。

 また、同じ記事を同じ教員がコピーする場合であっても、職員会議などで配付するためであれば、授業の過程で使用するものではないので、著作権者の許諾が必要になる(このようなコピーについては、3章(2)で説明する著作権等管理事業者の中に包括的な契約の窓口になっている団体がある)。


Q 地域の歴史や伝統文化を学ぶプログラムを市内の複数の学校で展開し、単元の節目に学校間のネットワークをつないで遠 隔システムにより同時合同授業を実施するこ とを計画している。その際、A校の児童生徒 が教室で名所の風景写真(写真集に掲載され たもの)を提示したり、B校の児童生徒がその町を舞台にした音楽を歌唱したり、C校の 児童生徒が地元出身の作家の作品を朗読したりすることが考えられる。これらの行為と著作権の関係をどう考えればよいか。

A A校の児童生徒が同校の教室で風景写真を提示することは、複製には当たらない。B校の児童生徒が同校の教室で音楽を歌唱することは、非営利・無料・無報酬の演奏に当たり、著作権者の許諾は必要ない。C校の児童生徒が同校の教室で小説などを朗読することは、非営利・無料・無報酬の口述に当たり、著作権者の許諾は必要ない。

 それらの行為をネットワークでつないだ他校に送信することは公衆送信に当たるが、同時遠隔授業における著作物の公衆送信については、著作権者の利益を不当に害するようなものでない限り著作権者の許諾を得る必要はない。

 また、これらの学校のうち、ある学校に関しては同時遠隔授業に参加できず、他校の間の遠隔授業を録画したものを視聴することにより、後日オンデマンドで参加するような場合は、著作物の公衆送信について許諾を得る必要はないが、学校の設置者が著作権者等の団体に補償金を支払う必要がある。

Q 高校の入試問題に小説、新聞記事、写真などの著作物を用いた問題を出題する場合、著作権者の許諾を得る必要はないと考えてよいか。

A 入試問題を公正に実施するためには、出題内容の秘密が確保される必要があるため、事前に著作権者の許諾を得なければならないとすることには無理がある。したがって、入試だけでなく、学校の定期テスト、資格試験、検定試験、入社試験などでもその中で著作物を利用する場合に著作権者の許諾を得る必要はない。しかし、当該試験の終了後に、その内容を公開する必要に応じてホームページや広報誌等に出題内容を掲載する場合や、過去問集を作成する場合(いわゆる入試問題の二次利用)は、秘密を保持しなければならない必要性はなくなっているので、その際の複製や公衆送信については著作権者の許諾を得なければならない。

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