「Ⅱ.新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」の改訂について(通知) 2文科初第3号 令和2年4月1日

トピック教育課題

2020.04.02

2文科初第3号
令和2年4月1日


各都道府県・指定都市教育委員会教育長
各都道府県知事
附属学校を置く各国公立大学法人の長
各文部科学大臣所轄学校法人理事長      殿
構造改革特別区域法第12条第1項の認定を
受けた各地方公共団体の長
厚生労働事務次官

文部科学事務次官
藤 原 誠
(印影印刷)

「Ⅱ.新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」の改訂について(通知)

 令和2年度における学校の教育活動の再開等の考え方については,令和2年3月 24 日付け元文科初第 1780 号文部科学省事務次官通知(「令和2年度における小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等について(通知)」)によりお示ししたところですが,4月1日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の提言等を踏まえて,同通知の別添「Ⅱ.新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」を,別紙のとおり改訂しましたので,お知らせします。
 都道府県・指定都市教育委員会におかれては所管の学校(高等課程を置く専修学校を含み,大学及び高等専門学校を除く。以下同じ。)及び域内の市区町村教育委員会に対して,都道府県私立学校主管部課におかれては所轄の学校法人等を通じて,その設置する学校に対して,国公立大学法人におかれてはその設置する附属学校に対して,文部科学大臣所轄学校法人におかれてはその設置する学校に対して,構造改革特別区域法(平成 14 年法律第 189 号)第 12 条第1項の認定を受けた地方公共団体の学校設置会社担当課におかれては所轄の学校設置会社及び学校に対して,厚生労働省におかれては所管の高等課程を置く専修学校に対して周知されるようにお願いします。
 なお,本通知は,地方公共団体については,地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 245条の4第1項の規定に基づく技術的助言及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和 31 年法律第 162 号)第 48 条第1項の規定に基づく指導・助言であることを申し添えます。

<本件連絡先> 省略

Ⅱ.新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン

(令和2年4月1日改訂版)

1.臨時休業の実施にかかる考え方について

(1)児童生徒等又は教職員の感染が判明した学校の臨時休業の考え方について
 児童生徒等又は教職員の感染が判明した場合には,都道府県等の衛生主管部局と学校内における活動の態様,接触者の多寡,地域における感染拡大の状況,感染経路の明否等を確認しつつ,これらの点を総合的に考慮し,臨時休業の必要性について都道府県等の衛生主管部局と十分相談の上,実施の有無,規模及び期間について判断することになります。【参考資料参照】

  • ※学校保健安全法(昭和 33 年法律第 56 号)
    (臨時休業)
    第 20 条 学校の設置者は,感染症の予防上必要があるときは,臨時に,学校の全部または一部の休業を行うことができる。

 

 この場合,感染の事実や感染者の人数のみで臨時休業を判断するのではなく,学校内に既に感染が拡大している可能性や今後拡大する可能性について,個別の事情をみながら,臨時休業すべきか否かを判断します。具体的には,以下のとおりです。

 ア.学校内における活動の態様
  感染者が,学校内でどのような活動を行っていたかを確認します。屋外で主に活動していた場合と,狭い室内で特定の少人数で過ごしていた場合,不特定多数との接触があり得た場合など,活動の態様によって感染を広めているおそれは異なってくることから,感染者の校内での活動状況などを確認します。
 イ.接触者の多寡
  上記「ア.」と同様,不特定多数との接触があった場合などは感染を広めているおそれが高まることから,接触者の多寡を確認します。
 ウ.地域における感染拡大の状況
  地域において,感染者が出ていない場合や,地域における感染経路がすべて判明していて,学校関係者とは接点が少ない場合などには,学校の臨時休業を実施する必要性は低いと言えます。
 エ.感染経路の明否
  学校内で感染者が複数出た場合,学校内で感染した可能性もあり,臨時休業を実施する必要性は高まります。
  一方,感染経路が判明しており,学校外で感染したことが明らかであって,他の児童生徒等に感染を広めているおそれが低い場合には,学校の臨時休業を実施する必要性は低いと言えます。
 オ.その他
  新型コロナウイルス感染症は,まだ解明されていないことが多い感染症であり,また感染者の活動の態様によっても感染拡大の可能性も異なってくることなどから,感染者数などによる一律の学校の臨時休業の基準を定めることは困難です。感染者が発生した場合には上記の点に留意して個々の事例ごとに学校の臨時休業の必要性,実施する場合の規模や期間について,衛生主管部局と十分に相談の上,検討してください。

 (2)感染者がいない学校も含めた,地域一斉の臨時休業等の考え方について
 現在,地域によっては,新規感染者数や感染経路が明らかでない感染者が急激に増加している地域も出てきている状況です。4月1日の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(以下,「専門家会議」という。)の提言では,「感染拡大警戒地域」について次のように示しております。

『①「感染拡大警戒地域」
○直近1週間の新規感染者数やリンクなしの感染者数が,その1週間前と比較して大幅な増加が確認されているが,オーバーシュート(*1 p4脚注参照。爆発的患者急増)と呼べるほどの状況には至っていない。また,直近1週間の帰国者・接触者外来の受診者についても,その1週間前と比較して一定の増加基調が確認される。
○重症者を優先する医療提供体制の構築を図ってもなお,医療提供体制のキャパシティ等の観点から,近い将来,切迫性の高い状況又はそのおそれが高まっている状況。』

 このような地域においては,感染拡大を抑える観点から,「3つの条件が同時に重なる場」(*2)を避けるための取組(行動変容)を徹底するため,自治体首長から,外出自粛要請や,集会・イベント・会食などの行動制限メッセージの発信等がなされることが考えられますが,その際には,学校の運営のあり方についても,以下のとおり検討する必要があると考えられます。

  1)学校運営上の工夫について
 学校への通学にあたって,電車等の公共交通機関を利用している場合には,もっぱら徒歩圏内から通学している場合とは異なり,通学中に児童生徒等に感染が生じたり,児童生徒等から感染が拡大したりする可能性が高まります。このため,通学に電車等の公共交通機関を利用している場合には,時差通学や分散登校等の工夫について検討することも考えられます。同様に,教職員が通勤に公共交通機関を利用している場合においても,時差出勤等の工夫について検討することが考えられます。
  2)臨時休業をする場合の考え方について
 4月1日に示された専門家会議の提言では,「感染拡大警戒地域」においては,「その地域内の学校の一斉臨時休業も選択肢として検討すべきである」とされています。
 このことも踏まえ,地域の感染状況に応じて,自治体の首長が地域全体の活動自粛を強化する一環として,学校の設置者に臨時休業を要請することも考えられます。この場合には,他の社会・経済活動の一律自粛と合わせて行うことにより,その効果が発現されるよう留意することが必要です。
 なお,今後,日本のどこかの地域で「オーバーシュート」(爆発的患者急増)が生じた場合には,3月 19 日に専門家会議で示された見解に基づき対応することとなります。

(参考)「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(令和2年3月 19 日新型コロナウイルス感染症対策専門家会議)(抜粋)

Ⅱ.状況分析

  • 7.地域ごとの対応に関する基本的な考え方
     今後,日本のどこかでオーバーシュートが生じた場合には,地域ごとに断続的に発生していくことが想定されます。こうした状況下では,社会・経済機能への影響を最小限としながら,感染拡大防止とクラスター連鎖防止の効果を最大限にしていく観点から,地域の感染状況別にバランスをとって必要な対応を行っていく必要があります。
     感染状況が拡大傾向にある地域では,まん延のおそれが高い段階にならないように,まずは,地域における独自のメッセージやアラートの発出や一律自粛の必要性について適切に検討する必要があります。その場合,社会・経済活動への影響も考慮し,導入する具体的な自粛内容,タイミング,導入後の実施期間などを十分に見極め,特に「感染拡大が急速に広まりそうな局面」や「地域」において,その危機を乗り越えられるまでの期間に限って導入することを基本とすべきだと考えます
  • 8.学校等について
     政府は,2月 27 日に,全国の小中高・特別支援学校の一斉臨時休校を要請しました。学校の一斉休校については,3.で触れたように,北海道においては他の取組と相まって全体として一定の効果が現れていると考えますが,学校の一斉休校だけを取り出し「まん延防止」に向けた定量的な効果を測定することは困難です。
     また,この感染症は,子どもは重症化する可能性が低いと考えられています。一方では,中国等では重症化した事例も少数例ながら報告されており,更に,一般には重症化しにくい特性から,無症状又は症状の軽い子どもたちが,高齢者等を含む家族内感染を引き起こし,クラスター連鎖のきっかけとなる可能性などを指摘する海外論文なども見られており,現時点では,確たることは言えない状況であると考えています。ただし,上記7.の「感染状況が拡大傾向にある地域」では,一定期間,学校を休校にすることも一つの選択肢と考えられます。  (下線は文部科学省)

 

2.学習指導に関すること

 (1)家庭学習について
臨時休業期間中に児童生徒が授業を十分に受けることができないことによって,学習に著しい遅れが生じることのないよう,可能な限り,家庭学習を課す等の必要な措置を講じるなど配慮すること。特に,臨時休業が長期にわたり,令和2年度の教育課程の実施に支障が生じる場合には,主たる教材である教科書に基づく家庭学習を臨時休業期間中に課すよう,工夫が求められること。
その際,児童生徒の家庭学習が円滑に進むよう,学校及び児童生徒の実態等を踏まえて,教科書と併用できる適切な教材を提供いただくことが重要であること。文部科学省においても,児童生徒の円滑な家庭学習を支援する教材等を「子供の学び応援サイト」(*3)に随時掲載しており,家庭学習を課す際に本サイトを活用いただくことも考えられること。

 (2)登校日の設定について
家庭学習を課すことに加えて,各学校が児童生徒の学習状況の確認や補習等の学習指導を適切に行うとともに,生徒指導,児童生徒等の健康観察を適切に行う観点から,児童生徒等や学校の実態に応じて登校日(授業日を含む。以下同じ。)を適切に設定することも考えられること。その際には,例えば,児童生徒等を分散させて登校させ,人が密集しない環境を確保する等,最大限の感染拡大防止のための措置等を講じること。

 (3)その他の指導の工夫について
また,登校日以外の日においても,児童生徒の学習状況の確認等のための家庭訪問を行ったり,体調面にも配慮した上で特に配慮を要する児童生徒など一部児童生徒については登校させたりするなど,きめ細かな対応のための工夫を行うことも考えられること。ただし,その際,教職員の勤務負担が過重とならないようにするとともに,児童生徒及び教職員の健康管理についても十分に留意する必要があること。

3.教科書の取扱いに関すること

 入学や新学期開始に際し,給与する教科書について,通常,入学式や始業式等,児童生徒の登校日の際に給与することとされているが,出席停止や臨時休業等,児童生徒や各学校の状況に応じて,例えば保護者のみを対象とした学校説明会等の場を活用して給与する等,各学校に納入された教科書が遅滞なく児童生徒に給与されるよう対応すること。

4.学校給食休止への対応に関すること

 臨時休業に伴い学校給食を休止する際には,関係事業者等と十分協議を行うなど,関係者の理解と協力を得られるよう留意すること。

5.非常勤職員等の業務体制の確保に関すること

 学校の臨時休業においては,各地域や学校の実情に応じ,非常勤職員を含む職員全体の働く場の確保を図るとともに,組織全体としての業務体制の確保に万全を期すこと。具体的には,授業がない場合であっても,非常勤講師の場合は授業準備や児童生徒の家庭学習の支援,学校用務員の場合は学校施設の修繕,給食調理員の場合は給食調理場等の清掃,消毒,寄宿舎の職員の場合は寄宿舎の清掃や消毒,寄宿舎運営に係る検討等の業務,特別支援教育支援員の場合は教材準備の補助の業務等を行うことが考えられ,補助金事業により配置される職員等を含め,他の職員についても休業期間中も何らかの業務に携わることが可能であると想定されるところであり,各教育委員会等において,当該非常勤職員についてはその任用形態や学校の運営状況等を,補助金事業により配置される職員についてはその補助目的を踏まえながら,適切に対応すること。
 なお,基本的には上記の通り類似の業務を行うことにより対応することが考えられるが,これが困難である場合には,例えば,本人の同意を得て業務内容を変更して新たな業務を行わせることなど,適切に対応することが考えられること。

6.子供の居場所確保に関すること

 「1.臨時休業の実施にかかる考え方について」に基づき臨時休業を行う場合には,保護者が休暇を取得するなどの協力が必要となるが,子供の居場所確保に向けた取組を行うかどうかについては,当該学校を臨時休業とした趣旨を踏まえ,児童生徒等の間での感染拡大リスクを考慮し,慎重に判断する必要がある。
 その上で,子供の居場所確保に向けた人的体制の確保や学校の教室等の活用等を実施する場合には,一斉臨時休業期間中の対応として示した「新型コロナウイルス感染症防止のための小学校等の臨時休業に関連した放課後児童クラブ等の活用による子どもの居場所の確保について(依頼)」(令和2年3月2日付け文部科学省初等中等教育局長ほか連名通知)の例を参照した対応を行うこと。その際,以下の点には特に留意すること。

 (1)学校の教室等の活用
 学校の臨時休業に伴い,放課後児童クラブ,放課後等デイサービスにおいて通常時より利用児童のニーズが高まることが考えられるため,密集性を回避し感染を防止すること等から,一定のスペースを確保することが必要である。
このため,教室,図書館,体育館,校庭等が利用可能である場合は,国庫補助を受けて整備した学校施設を使用する場合であっても財産処分には該当せず,手続は不要であり,積極的に施設の活用を推進すること。
 また,放課後等デイサービスについても,学校の臨時休業期間においては,放課後等デイサービス事業所が学校施設を活用してサービスを提供した場合でも報酬を請求することを認めるので,教室, 図書館,体育館,校庭等が利用可能である場合は,積極的に施設の活用を推進すること。

 (2)給食提供機能の活用
 子供の居場所確保にあたり,児童生徒等に対して学校給食の調理場や調理員を活用して昼食を提供することも工夫の一つと考えられ,地域の実情やニーズに応じて対応を判断いただきたいこと。

7.幼稚園を臨時休業する場合の預かり保育等の提供に関すること

 「1.臨時休業の実施にかかる考え方について」に基づき幼稚園の臨時休業を行う場合には,幼稚園は一人で家にいることができない年齢の幼児が利用していることを踏まえ,感染拡大防止のための万全の対策を講じた上での預かり保育の提供等を通じて,保育を必要とする幼児の居場所確保に向けた取組を検討いただきたいこと。
 特に,子ども・子育て支援新制度や幼児教育・保育の無償化において保育の必要性の認定を受けている幼児であって,保護者が医療関係等で仕事を休めない場合などについては積極的な対応を検討いただきたいこと。
 これらの居場所確保の取組に当たって昼食を提供することも工夫の一つと考えられるため,地域の実情やニーズに応じて対応を判断いただきたいこと。

脚 注

*1  専門家会議提言の p4 脚注には,以下のとおり記載されている。オーバーシュート:欧米で見られるように,爆発的な患者数の増加のことを指すが,2~3 日で累積患者数が倍増(3 月 31 日時点での東京では 8.5 日毎に倍増)する程度のスピードが認められるものを指す。異常なスピードでの患者数増加が見込まれるため,都市の封鎖いわゆるロックダウンを含む速やかな対策を必要とする。

*2 「3 つの条件が同時に重なる場」:これまで集団感染が確認された場に共通する「①換気の悪い密閉空間,②人が密集している,③近距離での会話や発声が行われる」という3つの条件が同時に重なった場のこと

*3 子供の学び応援サイト(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/gakusyushien/index_00001.htm

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