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『学校教育・実践ライブラリ』Vol.11 2020年2月配本 2030年のコミュニティと「総合学習」の可能性|日本大学教授 佐藤 晴雄

NEWトピック教育課題

2020.03.11

学校教育・実践ライブラリ』Vol.11 2020年2月配本

2030年のコミュニティと「総合学習」の可能性|日本大学教授 佐藤 晴雄

コミュニティ・スクールの将来

 2019年5月現在、コミュニティ・スクール(以下「CS」)は全国7601校(717教育委員会)にまで急増した。CS急増の背景には法改正のみならず、コミュニティの活性化や「社会に開かれた教育課程」の推進という動きがあることも見逃せない。「社会に開かれた教育課程」にとって地域社会との連携が不可欠だが、とりわけ「総合的な学習の時間」(以下「総合」)ではその連携が強く求められてくる。

 このように、CSは地域等の学校経営参画の仕組みにとどまらず、「総合」をはじめとする教育活動にも積極的な関わりが求められるようになり、コミュニティづくりにも大きく寄与することになろう。

新学習指導要領における「総合の扱い」

 中教審答申(2016年)は、2030年の社会と子供たちの未来の章で「子供たち一人一人が、予測できない変化に受け身で対処するのではなく、主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが重要」だとする。

 そして、「新学習指導要領解説総合的な学習の時間編」は、「地域との連携に当たっては、よりよい社会を作るという目的の下、コミュニティ・スクールの枠組みの積極的活用や、地域学校協働本部との連携を図ることなどにより地域社会と共にある学校を実現することが期待されている」と述べる。そして、「地域の素材や地域の学習環境を積極的に活用したり、児童が地域の一員として地域の人々と共に活動したりする」取組は、「学校を地域に開くことにもつながり、保護者や地域との信頼関係を築く大きな要因となると共に、学校を核として地域社会も活性化していく」と述べ、「『次世代の学校・地域』を創生していくことにもつながる」と解説する。

 そもそも「総合」の特徴の一つは、教科書を使用しないことから学校や教師の裁量の範囲が広い点にある。児童生徒の視点からは、教科書による受け身的な学習よりも、課題に主体的に向き合う学習に適していることになる。

これから求められる地域人材の育成

 少し古いが内閣府の「地方再生に関する特別世論調査」(09年調査)によると、「地域が元気になるために特に期待する政策」という問いに「地域の人材を育成するための特色ある教育の充実」を選択した者の割合は、05年23.6%から07年40.1%に増えている。なお、09年は質問内容が少し変えられたためか、34.3%に減少したが、05年比では増加している。

 これら数値を見る限り、30年にはその数値が50%を超えるものと予測でき、地域人材育成がますます強く求められるであろう。

CSの活用と本部との連携

 それでは、「CS の枠組みの積極的活用や、地域学校協働本部との連携」にどう取り組めばよいのか。

(1)学校運営協議会を地域情報のハブとして活用する

 まず、学校運営協議会(以下「協議会」)の委員には多様な分野に属する人材を集めて、協議会を情報・資源ネットワークのハブに位置付けることが望まれる。保護者や地域住民であっても、様々な職業や属性を有する者を委員に据え、学識経験者も多様な専門性を有する委員を任命するのである。これら人材には教職員よりも社会の変化により敏感な者が多いと言ってよい。

 そうして多様な委員が一堂に会する協議会をハブに位置付ければ、地域教育資源の活用や情報の聴取等が効率的に行うことができる。実際、議事として「地域人材の活用」を取り上げた学校は87.7%となり、「教育課程」も78.2%と多い(佐藤、2019)。これら議事は各教科よりも「総合」を視野に入れていると考えられ、今後も地域人材・資源を活用した「総合」や特色ある教育課程編成に協議会の意見を活かすことが期待される。

(2)学校運営協議会と地域学校協働本部の関係

 協議会と地域学校協働本部との関係を、〇本部を協議会の下部組織に置くタイプ、〇下部組織ではないが、両者を連携させるタイプ(コーディネーター等が両者の媒介役になる)、〇両者は連携させず分立するタイプに分けた場合、校長の成果認識が最も高いのは「連携」タイプである(佐藤、2019)。

(3)必要課題と要求課題の協議

 ところで、社会教育では学習課題を必要課題と要求課題に分けて捉える。必要課題は、指導者が学習者にとって必要だと捉える課題で、学校教育における教科書に盛られた学習課題が当てはまる。一方、要求課題は学習者が望む課題であり、学習者のニーズを取り込む課題になる。この捉え方は「総合」にも応用されてよい。

 「総合」の場合には教科書がないため、要求課題のみならず、必要課題も学校で設定できる。しかし、これら課題は地域性に大きく左右されることから、学校のみの判断によるよりも、学校運営協議会に諮り、何が必要で、地域の子供たちが何を求めているのかを議論し、必要な情報を収集することによって深まるはずである。

[参考文献]
・佐藤晴雄『コミュニティ・スクール-増補改訂版』エイデル研究所、2019年
・佐藤晴雄編『コミュニティ・スクールの全貌』風間書房、2018年

Profile:
佐藤 晴雄(さとう・はるお) 日本大学文理学部教育学科教授。
東京都大田区教育委員会、帝京大学助教授などを経て2006年から現職。中央教育審議会専門委員(初等中等教育分科会)、文部科学省コミュニティ・スクール企画委員などを歴任。博士(人間科学)大阪大学。日本教育経営学会理事、日本学習社会学会会長など。主な著書に、『コミュニティ・スクールの成果と展望』(ミネルヴァ書房)、『教育のリスクマネジメント』(時事通信社)、『新・教育法規解体新書』(東洋館出版社)ほか多数。

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