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渡辺敦司

教育Insight STEAM教育のAは「リベラルアーツ」

NEWトピック教育課題

2020.03.01

教育Insight
STEAM教育のAは「リベラルアーツ」

教育ジャーナリスト 渡辺敦司

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.8 2019年12月

 新しい時代の初等中等教育の在り方を検討している中央教育審議会で、論点整理案が固まりつつある。この中で、STEAM(科学、技術、工学、芸術、数学)教育のうちA(Arts)を「リベラルアーツ」と捉えた上で、総合的な学習の時間や高校の総合的な探究の時間・理数探究を核に実施を求める方向になっている。

文学、歴史にまで拡張

 4月の諮問では、高校教育の在り方として「STEM教育の推進」が検討事項に盛り込まれていた。これを受けて、9月4日に開かれた初等中等教育分科会の教育課程部会では、国立教育政策研究所(国研)の松原憲治総括研究官らがヒアリングに応じ、その内容は10月15日の「新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループ(WG)」や、その上部組織である「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」の同25日会合にも報告された。

 そこでは、諸外国の例を参照しながら、「統合型のSTEAM教育」の目的には①科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材育成を志向するもの②すべての児童生徒に対する市民としてのリテラシーの育成を志向するもの
―があると整理。
さらに、初期のSTEAM教育を「統合型STEM教育にArts(デザイン、感性等)の要素を加えたもの」だとした上で、近年では▽現実社会の問題を創造的に解決する学習を進める上で、あらゆる問いを立てるために、Liberal Arts(A)の考え方に基づいて、自由に考えるための手段を含む美術、音楽、文学、歴史に関わる学習などを取り入れるなどSTEM教育を広く横断的に推進していく教育▽取り扱う社会的課題によって、STEMを幹にしてART/DESIGNやROBOTICS、E-STEM(環境)など様々な領域を含んだ派生形が存在し、さらには国語や社会に関する課題もあり、いわゆる文系、理系の枠を越えた学びとなっている
―との考えが紹介されている。

 その上で、STEAM教育と新学習指導要領の「総合的な探究の時間」や共通教科「理数」に親和性があることを一覧表で示しながら、教育課程部会では主に▽STEAM教育は、課題の選択や進め方によっては強力な学ぶ動機付けとなる。そのためにはSTEAMのAの範囲を芸術、文化、経済、法律、生活、政治を含めた、できるだけ広い範囲として捉え、定義することが重要▽高校新指導要領の総合的な探究の時間・理数探究と、STEAM教育とは滑らかにつながっている。これらの関係性をしっかりと学校に伝えていくことが重要▽STEAM教育などの教科等横断的な学習を高校で進める上では、普通科、専門学科、総合学科など学科の別も考慮する必要がある▽特に学習意欲に課題を抱える生徒が集まる学校で探究的な学習をどのように進めるかは、これからの課題▽小学校の生活科から、小・中学校の総合的な学習の時間、高校の総合的な探究の時間に至る学習経験や資質・能力の積み重ねを考えることも重要▽STEAM教育などの教科等横断的な学習を進める上では、各教科の学習を学校段階で円滑に接続させることも重要
―という意見があったとしている。

 また、高校WGの主な意見には▽STEAM教育については、新指導要領下における実践展開の選択肢の一つとして位置付けることが穏当。新指導要領とSTEAM教育との親和性は十分に高い。STEAM教育の「学際科学」的視点を総合的な探究の時間に導入することは、幼・小・中・高を見通した総合的な学びの体系全体にとっても、大きな可能性がある▽STEAM教育の導入により、格差が生じる可能性について危惧しており、STEAM教育は全ての高校に導入する必要があるのか▽現在、厳しい立場にある生徒ほどSTEAM教育や探究学習が必要。米国の調査では、ドリル学習だけでは格差が拡大するという結果もある。STEAM教育のレベルをどうするかは検討の必要があり、エリーティズムではないSTEAMの在り方が必要。学習意欲に課題がある生徒にはSTEAM教育や総合的な探究の時間は難しいという議論があるが、実際にやってみると全く違う▽STEAM教育の導入には、現場への分かりやすさが必要。ステークホルダーの納得を分かりやすく得られるような見えやすい姿があるとよい。総合的な探究の時間とSTEAM教育をクロスさせる具体的な単元イメージがあったほうがよい
―があったとしている。この中には慎重な意見も含まれているが、特別部会長で高校WG主査の荒瀬克己・大谷大学教授は「懸念も大事にしながら進めていこう、という議論だ」と補足した。

大学から高校、初中全体の課題に

 STEAM教育をめぐっては、学習指導要領の改訂を提言した16年12月の中央教育審議会答申にも、プログラミング教育や算数・数学、理科に関連してAのないSTEM教育に関する言及がある。これを受けて、17年3月と18年3月に告示された新指導要領では、理数教育の充実が図られた。

 一方、18年6月の文部科学省「Society 5.0に向けた人材育成に係る大臣懇談会」省内タスクフォース(特別作業班、TF)報告「Society 5.0に向けた人材育成〜社会が変わる、学びが変わる〜」では「文理分断からの脱却」を掲げる中で、大学に「STEAMやデザイン思考などの教育」を求めていた。

 さらに、19年5月の教育再生実行会議第11次提言では「技術の進展に応じた教育の革新」として、初等中等教育段階でSTEAM教育を推進するため、総合学習や総合探究、理数探究等で問題発見・解決的な学習活動の充実を図ることを提言した。

 経済産業省が6月にまとめた「『未来の教室』ビジョン」(「未来の教室」とEdTech研究会第2次提言)でも、①学びのSTEAM化②学びの自立化・個別最適化③新しい学習基盤づくり
―を柱に据えている。

 Society 5.0時代への対応を課題とする政府部内の様々な思惑もからみながら、文科省の初中教育行政では今後、高校に限らず小・中学校でも、新指導要領の下で総合学習や総合探究・理数探究を核としたカリキュラム・マネジメント(カリマネ)により、Aをリベラルアーツ(一般教養)と広く捉えたSTEAM教育を推進することが求められていくものとみられる。

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