絶対満足できる!新しい英語授業
新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[最終回]小学校から中学校に英語指導を円滑に引き継ぐ! 中学校で「英語嫌い」を量産しないために、小中で何をすべきか
トピック教育課題
2020.01.05
2.学習環境を整える
(1)英語学習は環境から(教室)
全国の外国語活動を行っている教室を見ると、クラスの教室を使っているところから、英語ルームなどの特別な教室を使っているところまで、さまざまである。電子黒板が各教室に設置されている場合やクラス規模が大きい場合には、それぞれの教室で授業を行っている場合がほとんどであるが、クラス規模があまり大きくなく、電子黒板の数にも限りがある場合には英語ルームなどの特別教室を使っている。子供たちにとって、英語ルームでの学習はどこか特別な感覚を抱いて授業を受けていることから、興味・関心も高い。毎時間、授業で使う教材教具を準備することを考えれば、英語ルームに教材教具を常時ストックしておき、授業前に短時間で用意して授業に臨むことができるので便利である。
(2)英語学習は環境から(机・椅子)
教室であろうと英語ルームであろうと、子供たちがどのような状態で授業を受けているかである。机や椅子の両方を使用している場合、机を外していて椅子のみの場合、机も椅子も使わずに床に直接座っている場合などが見られる。ある学校では、英語ルームの机と椅子を外し、4人に1台ずつ布団のない状態のコタツが置かれている。これは、4人で活動を行う場合、コタツ上の一枚のボードが非常に便利だとの理由からである。このようにさまざまではあるが、中学校の英語教育につなげる意味でも、小学校の英語導入時から机と椅子のある教室で授業を進めていただきたい。机と椅子のない所で自由に歩き回り、時には走り回り、さまざまな活動ができた子供たちが、「英語=遊び」のイメージを残したまま中学校に進学すると、机と椅子にがんじがらめにされ、英語を勉強させられている感が強くなり、イメージも悪くなりかねない。そこで、小学校でも、他の教科同様、英語も勉強であり、しっかり学ぶべきものであると感じさせるためにも、机と椅子のある教室で授業を行うことである。活動を行う場合には、机と椅子を移動させるなどして工夫することである。
(3)IT機器の充実
今後、英語教育ではIT機器が不可欠なものとなる。教科書やテキスト、黒板を使ったこれまでのアナログの授業から、コンピュータ、電子黒板、タブレット等のデジタル機器を使った授業へと変わっていく。これに関しても地域間格差が生まれ、指導に支障を来すところも出てくるであろう。教育整備は教育委員会の役目とし、しっかりと格差是正に努力すべきである。そして、これにともない、悉皆研修や校内研修等の充実を図ることも急務である。
3.中学校入学時にすべきこと
小学校での4年間の英語授業を踏まえ、中学校では何をすべきか。特に、入学時の英語の授業では子供たちはどのようなことをするべきであろうか。
(1)自己紹介を英語でさせる
小学校では、授業の中でさまざまな発表をしている。例えば、自己紹介、他己紹介、一日の生活、自分のできること、行ってみたい国や地域、憧れの人、自分たちの町や地域、夏休みの思い出、小学校の思い出、将来の夢、中学校でしたいこと、などである。これらを基に、第1時間目では、クラスを和ませるためにも、1人ずつ自己紹介を行わせてみたい。その場合、以下のような例文を参考に、自分のことを伝えるスピーチを考えて発表させる。1挨拶、2名前、3出身小学校、4中学校でしたいこと、5挨拶などの順に発表させる。
(自己紹介)
Hello, everyone.(Nice to meet you.)My name is Suzuki Saki.
I’m from Sakura elementary school. My best memory is my school trip. I went to Kyoto. It was interesting.
In this junior high school, I want to join the chorus. I like singing.
I want to have a great time with you.
Thank you.
(2)小学校での学習の確認
また、小学校で学習したことが、どれくらい定着しているか判断するために以下の確認をする。
①アルファベットの大文字と小文字、ローマ字の確認
・大文字のAからZまでの26文字と小文字aからzまでの26文字を順に書かせる。
・担任が発音する文字を書かせる。
・文字を提示して、その文字を発音させる。
・自分の名前をアルファベットの文字を用いて書かせる。
②クラスルームイングリッシュの確認
・挨拶で用いるクラスルームイングリッシュの質問に答えさせる。
How are you?
What day is it today?
What’s the date today?
How is the weather today?
・実際にクラスルームイングリッシュを使って、反応を見る。
Close your eyes.
Open your textbook to page seven.
Turn the page.
Close your textbook.
Raise your hands.
Put your pencil down.
③聞くことの確認
・担任の質問を聞き、ワークシートに答えを書かせる。
What sport do you like?
What food do you like?
What color do you like?
What animal do you like?
・担任のスモールトークの内容を確認する。
Hello. I’ll introduce my daily life. I usually get up at 6:00. I have breakfast at 6:30. I go to school at 7:00. I eat lunch at 12:30 with you. I spend all day at school. I usually go home at 6:00. I have dinner at 7:00 with my family. And, I go to bed at 11:00. Thank you.
Q1:先生は何時に起きますか。
Q2:先生は何時に家に帰りますか。
Q3:先生は何時に寝ますか。
④読むことの確認
・先生の友達のことが書かれたプリントを配布して、内容を確認する。
Hello. My name is Yui, Maiko’s Friend. Nice to meet you. I live in Tokyo. I like sushi very much, but I’ don’t like wasabi. I can dance very well. I can’t run fast. I like reading books. Thank you.
Q1:結衣はどんな食べ物が好きですか。
Q2:結衣は何が苦手ですか。
Q3:結衣は何をすることが好きですか。
以上は、テストとして行うのではなく、子供たちの現状を把握し、指導につなげるものである。したがって、小中学校間で大きな指導の隔たりがある場合には、小学校に改善をお願いしたり、これから行う授業の内容を考える際の資料として活用することで、中学校の英語教育の入り口が確定できるのである。
Profile
大阪樟蔭女子大学教授
菅 正隆
かん・まさたか
岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。