絶対満足できる!新しい英語授業

菅正隆

新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第11回]間違った子供への負荷が英語嫌いを生み出す! 「読むこと」「書くこと」の指導の在り方

トピック教育課題

2020.01.03

新教育課程実践講座Ⅰ
絶対満足できる!新しい英語授業

[11]間違った子供への負荷が英語嫌いを生み出す!
「読むこと」「書くこと」の指導の在り方

大阪樟蔭女子大学教授 菅 正隆

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.11 2019年3月

1.「読むこと」の指導の在り方

(1)「読むこと」とは

 「読むこと」は、主に高学年から取り扱うことになる。このことは、学習指導要領の解説において以下のように記されている。「『聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身につけるようにする』とは、中学年の外国語活動で外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませたことを踏まえ、(中略)『読むこと』、『書くこと』については、中学年の外国語活動では指導しておらず、慣れ親しませることから指導する必要があり、『聞くこと』、『話すこと』と同等の指導を求めるものではないことに留意する必要がある」とあり、これからも分かるように、この二つの技能については、慣れ親しませる段階に留め、過度の負担を子供たちに強いるべきではないとしていることが分かる。

 そして、「『読むこと』、『書くこと』に関しては、英語の文字の名称の読み方を活字体の文字と結び付け、名称を発音すること、四線上に書くことができるようにするとともに、中学年の外国語活動を通して、『十分に音声で慣れ親しんだ簡単な語彙や基本的な表現』について、読んだり書いたりすることに細かな段階を踏んで慣れ親しませた上で、『語順を意識しながら書き写すことができるようにする』、『自分のことや身近で簡単な事柄について、例文を参考に書くことができるようにする』といった実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能となることをめざす必要がある」(下線筆者)とある。下線部から分かるように、「読むこと」や「書くこと」においては、普段から無理をせず、スモールステップで、少しずつレベルを上げていくことが求められている。

 次に、「読むこと」についての注意点を示す。

 「読むこと」には二つの面がある。一つ目は、英文を音読するという「読むこと」である。これは、例えばI like to watch baseball.の1文があるとする。これを、声を出して読むことが音読である。また、この音読にも二つあり、一つは、英文の意味を捉えずに、単に機械的に発音やリズム、イントネーションなどに注意しながら英語を読む音読と、意味を捉えながら英文を読んでいく音読とがある。「読むこと」の二つ目は、英文の表す意味を理解しながら「読むこと」である。これは、音読なしに、黙読しながら意味を理解していく「読むこと」である。先ほどのI like to watch baseball.であれば、音読せずに「野球を見るのが好き」と意味を捉えていくことである。日本語の小説を読むときのように、黙読しながらストーリーを追っていくことを考えれば、最終的には、英語においても、英文を黙読しながら意味を捉えていくことができることが最終段階なのである。そこで、「国語」の授業を考えてみると、教科書の本文を音読させたり、音読練習を宿題に出したりしている。これは、日本語を正しく読めるようにすることであるが、読んでも内容を100%理解できない場合もあり、後で担任が意味を説明したりしている。英語の「読むこと」もこれとほぼ同等である。ただし、英語は日本語と異なり、意味を主に指導すると、英語特有の発音やリズムで読むことができなくなる恐れがあり、意味を理解させる前に、まずは音読から取り組ませなければならないのである。

(2)「読むこと」の指導

 「読むこと」の指導では、意味よりも、単語の発音、音の連結やリズム、イントネーションに注意しながら読ませていくことである。そのために、モデルとなる読み方を何度も聞かせ、真似をさせながら繰り返し音読させる。そして、音読の後に、意味を捉えるための日本語訳を与えるのではなく、ジェスチャーや、ピクチャーカードを利用して、英文と内容についてのイメージを連結させることが大切である。

(3)具体的な「読むこと」の指導

 例えば、次の文章があるとする。

 I want to be a dancer. I like P.E. I like dancing. I’m good at dancing. What do you want to be? Thank you.

①モデル・リーディング(モデルの音読を聞く)

②コーラス・リーディング(意味は特に捉えずに、担任の後について音読をする)

③インディビジュアル・リーディング、バズ・リーディング(個人で音読練習をする)

④ペア・リーディング(ペアで読み合う)

⑤グループ・リーディング(グループで読み合う)

⑥モデル・リーディング(意味を捉えながら音読する。ピクチャーカードやジェスチャーを加える)

⑦コーラス・リーディング(意味を捉えながら、担任の後について音読する)

⑧インディビジュアル・リーディング、バズ・リーディング(意味を考えて音読練習をする)

⑨ペア・リーディング(ペアで読み聞かせをする。相手に意味が伝わるように音読をする)

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菅正隆

菅正隆

大阪樟蔭女子大学教授

岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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