絶対満足できる!新しい英語授業

菅正隆

新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第10回]今、教員・学校がなすべきこと!残り1年、待ったなしの外国語活動・外国語の授業

トピック教育課題

2020.01.01

新教育課程実践講座Ⅰ
絶対満足できる!新しい英語授業

[10]今、教員・学校がなすべきこと!
残り1年、待ったなしの外国語活動・外国語の授業

大阪樟蔭女子大学教授 菅 正隆

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.10 2019年2月

1.今、教員・学校がなすべきことは何か

 全国各地の小学校や教育委員会を訪れると、様々な研修が行われている。多くの場合、道徳についてであったり、評価全般であったり、外国語であったりと、新学習指導要領の全面実施に向けて研修に余念がない。中でも、外国語活動・外国語には多くの時間を費やしている。これは、外国語活動が中学年に移行したことや、高学年で教科化されたことへの不安を払拭する狙いもある。そこで、教員や学校が今、何をなすべきかについてまとめてみた。

(1)時間確保の問題

 2020年度からは、中学年で35時間、高学年で70時間の授業が実施されることとなる。本年度は、国からは中学年最低15時間(総合的な学習の時間15時間を利用)、高学年最低50時間(従前の35時間に加えて、総合的な学習の時間15時間を利用)を実施するように伝えられ、行事等で若干の時間減もあるが、ほぼ全ての学校で実施されている。では、移行期間2年目の来年度はどうか。私の試算では、全面実施に合わせて、中学年で35時間、高学年では70時間の授業を前倒しして行う学校は、おおよそ70%程度ではないかと踏んでいる。そのためにどのように時間を確保するつもりなのか。ある学校では、クラブ活動の時間を外国語の時間に変えたり、職員会議を16時から行うなど苦肉の策が続く。そして、そのしわ寄せが子供たちや先生方を直撃する。

 ある市では、来年度は中学年で25時間、高学年では65時間と傾斜をかけることにしている。一気に全面実施と同じ時間の確保ができないとの理由からである。しかし、ここで問題になるのは、時間の確保は2019年度のことだけではなく、2020年度以降も見据えて考えなければならないことだ。

(2)時間の活用

 また、外国語活動や外国語の授業時間数をどのように考えればよいか。ある市では、中学年の外国語活用は、第1週目は15分のモジュール(短時間学習)を朝学習として週3回、第2週目は45分を1回として実施している。これは、効果が高いとの理由で今後も継続していくとしている。中学年では集中力に欠く子供も多く、15分の短時間で語彙や表現をインプットして、それらを用いて、45分でアウトプットさせるという手法を取っている。また、ある市の高学年の外国語では、上記の組み合わせを1週間の中で行って成果を上げている。

 つまり、子供の状況から考えて、週に何度も英語に触れることで、英語への抵抗感を減らし、楽しく外国語活動を行っているのである。子供にとっては普段使用しない英語など、1週間も離れていると忘れるものである。つまり、週に1回よりも、複数回英語に触れる方が効果的なのである。

(3)カリキュラム作成

 高学年では2020年度から教科書を使用することになる。そして、“We Can!”は絶版となる。現在、教科書は検定中であるが、2月には合否が、そして、4月には見本本を見ることができる。その後、各地で採択が行われ、最終的に使用教科書が決定するのは、2019年8月頃である。その時点から教科書が使用され始めるまでの約半年間で、カリキュラムを組まなければならない。

 一方、中学年では、当面、“Let’s Try!”を使うことから、35時間のカリキュラムについては事前に作成しておくことである。それを活用して、5年生のカリキュラムと連動しておかなければならない。

 なお、5、6年の教科書はページ数が多く、厚くなることが予想される。情報では平均146ページほどになるとのことである。これでは、1ページ1ページ教科書を教えようとすると、時間が足りなくなる。そこで、カリキュラム作成時には、目の前の子供たちの状況を考えながら、指導の軽重やスキップする(指導を行わない)単元などがあってもよい。教科書については昔から「教科書を教えるのではなく、教科書で教えるのである」と言われるように、学習指導要領の目的は語彙や表現の定着にはない。それ以上に、コミュニケーション能力の素地を育てたり、コミュニケーション能力の基礎を育てたりすることにあることを忘れてはいけない。

(4)評価の在り方

 全国を回ると、先生方から「評価はどうすればよいのですか」「評価の方法を教えてください」と評価に関することを引きも切らずに尋ねられる。評価への関心が高いことは良いことではあるが、その前に指導がしっかりと行われているかである。指導もできない教師が、評価を語るのはおかしい。しっかりと指導した上で、その指導が子供たちの能力を向上させているかどうかを見るのが評価である。つまり、指導と評価の一体化である。

 なお、国から評価に関する指針が未だに出ていない。最近の情報では、2019年の夏までには出したいとの意向である。またまた、これで学校現場は混乱の渦の中である。

 なお、一時、評定の考え方を無くす方向に中央教育審議会で話されていたが、結論としては、今後も評定を利用することが決まった。

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菅正隆

大阪樟蔭女子大学教授

岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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