絶対満足できる!新しい英語授業
新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第10回]今、教員・学校がなすべきこと!残り1年、待ったなしの外国語活動・外国語の授業
トピック教育課題
2020.01.01
2.授業で教員に求められること
新学習指導要領全面実施まで残り約1年。この間、教員は授業の中で何をなすべきか。この1年は貴重な時間になる。全面実施時に失敗しないためにも、以下の事柄にチャレンジしてもらいたいと思う。
(1)楽しい授業実践を心がける
子供にとって、英語は日常生活とはかけ離れたものである。教室を一歩出ると、英語とかけ離れた日本語の世界にどっぷりと浸る。このような環境下で英語を好きにすることは容易なことではない。そこで、英語をいかに楽しく学ばせるかが大きなポイントとなる。歌やチャンツやゲームなどで面白おかしく授業をすることはできるが、これにも限界がある。子供の知的レベルが上がると、これらは、子供にとってお遊びとしか映らず、プライドを傷つけることにもつながる。そこで、思考を伴う活動や、考える時間を与えて自分の考えや意見を主張できる場面を提供することが求められる。つまり、楽しい授業とは年齢に合致した知的な活動であり、子供たちの情意フィルター(抵抗感)を下げて、「できた」という体験を積ませることである。
(2)必然性のある活動を組む
子供にとって、例えば、隣同士で名前や誕生日を聞き合う活動ほど楽しくないものはない。なぜか。明らかに知っていることについて英語を使って聞き合うことの意味が分からないから腑に落ちないのである。中学生程度であれば、パターンプラクティスとして無理やり活動をさせることもできるが、小学生にとっては、なぜこの活動をするのかが伝わらない場合には、効果も薄い。
(3)成就感・達成感を体験させる
(1)にもあるように、「できた」「分かった」などの達成感や成就感の積み重ねが、子供たちの英語への意欲や関心を高めることになる。これは、体育の授業を思い起こせば、容易に理解できる。水泳の授業を考えてみよう。全く泳げなかった子供が、ある日、5mほど泳げるようになったとする。自分では、「やった!」「泳げた」と内心思っているはずである。さらに、心の中では「もっと泳げるかもしれない」「やってみよう」と自分に言い聞かせるはずである。これと同じことが言える。英語は体育と同じ実技科目なのである。「聞いてなんぼ」「言ってなんぼ」の世界である。その経験を積ませる場面や状況を教師がいかに用意できるかが、授業の成功と失敗の分岐点なのである。
(4)子供を褒める
様々な活動では、中々表現が出てこない子供や、聞き取れなかったりする子供も多い。そのとき、子供たちのやる気を削がないために一番大切なことは、教師の声かけである。「もう少しだね」「うまくなってきたね」の一言が子どものやる気を引き出すことになる。また、上手にできたときには「よく頑張ったね」「すごい」などの褒め言葉で、子供たちはさらにやる気が増すものである。英語嫌いをつくらないためにも、常に子供の活動を観察しながら、適切な声かけをすることである。
(5)スモールステップを踏む
テキストや教科書の範囲を終わらせようとして、無理に授業を推し進めたり、子供の状況に合わない高度な内容を指導したりすることは英語嫌いを生み出す元凶である。何度も言うが、小学校の「外国語活動」「外国語」では、定着を求めるものではなく、英語に対する抵抗感を生み出さない、誰とでも楽しく英語を使って話ができる、人の話を一生懸命に聞く、英語を読もうとする、書こうとするなどの、英語に対する前向きな子供たちを育てることを第一義としている。したがって、あまりハードルは上げず、一歩一歩階段を上るように、スモールステップで指導していくことを忘れてはいけない。
(6)英語を使おうとする姿勢
英語を苦手としている教師は多い。
子供たちにとって、教師はあこがれの的である。そのあこがれの存在が、英語から逃げようとすればするほど、子供たちも真似をして逃げ出してしまう。英語の発音がどうのこうの、文法がどうのこうのと言う前に、まず使ってみることである。そして、英語を使うモデルになることが大切である。
(7)日々の授業から、指導力と英語運用能力の向上を図る
英語指導力や英語運用能力は日々の授業で向上させることができる。それはチャレンジである。指導力向上のためには、これをやってみよう、あれをやってみようと授業で様々なアイデアに取り組んでみることである。また、英語運用能力向上には、まずは恥ずかしがらずにクラスルームイングリッシュを使ってみること。もし、間違っていればALTに直してもらえばよい。気にすることはない。無料の先生が隣にいると思えばよい。そして、この積み重ねで、英語を正しく使える教師に変身することができる。
以上のように、外国語活動において(1)〜(7)を意識した授業を構成すると次のようになる。
“Let’s Try! 2”外国語活動指導案(45分)
1.単元 What do you want?(Unit7-1)
2.主題 ほしいものは何かな?
3.本時の目標と評価のポイント(評価を行う)
(1)野菜や果物の名称に慣れ親しむ。(知識・技能)
(2)スリーヒントクイズを作り、友達と出し合ったり答えたりしている。(思考・判断・表現)
4.スモールトーク(導入:文字を示しながら)
Hello. I like mushrooms, potatoes, and peaches. Yesterday, I went to the supermarket. I bought some vegetables and some fruits. I bought many peaches and ate them at home. So, I was very happy.
5.授業案
Profile
大阪樟蔭女子大学教授
菅 正隆
かん・まさたか
岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。