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教職 その働き方を考える

高野敬三

教職 その働き方を考える[第9回]協働を通して成長する教員

NEWトピック教育課題

2020.01.07

教職 その働き方を考える
[9]協働を通して成長する教員

明海大学副学長 高野敬三

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.9 2019年1月

●本稿のめあて●
学校には、個業型の学校と協働型の学校があると言われています。教員が成長するためには、教員個人の研究や修養のみでは限界があり、教員が他の教員との協働を通した取組が求められてきました。今回は、教育課題が多様化・複雑化した学校にあって、学校外との協働の必要性について中教審答申で示されたポイントをみていきます。

個業型の学校

 教員としての職業、つまり教職の中核をなしているのは、授業であり、その授業というものは、基本的には、教室という閉ざされた空間で行われています。特に、全科を担当する教員が学級担任となっている小学校においては、学校行事や学年行事など他の学級と合同で実施する活動はあるものの、授業や学級経営については一人の全科教員が実施することから他の教員と相互に関与しにくいのが実情です。

 また、教員には、それぞれ、自分で確立した教育方法、教育技術がありそれらを他の教員との比較で優劣を語られることを回避する傾向にあることも事実です。教員が個別完結的に教育活動を遂行する組織的特性・職務遂行上の特性をもっている学校のことを個業型の学校といいます。個業型の学校には、一人の教員が教室という限られた空間の中で児童生徒と親密な関係、それに基づく人間教育ができるといったそれなりのメリットはありますが、教員同士が深く関わり合いをもち児童生徒の豊かな教育環境を協力しながら作り上げていくことには限界があると考えられています。

協働型の学校

 他方、協働型の学校というものもあります。人との連携を基調とした学校であり、教員間や教員と教員以外の間で協働関係が成り立っている学校です。学校の教育目標を達成するために、教員が他の教員等とで協力して、取り組むべき問題を相互に理解・共有して、問題の解決や改善に向けて互いに関与しながら協力していく学校です。こうした学校においては、一人一人の教員が個人的に獲得・修得した教育方法や教育技術を学校内外の人々と共有し、さらに優れた知識・技能を生み出して、集団として教員が活用することが可能となります。

協働を通して成長する教員

 一人、教員の力量というものは、個人の研究と修養である程度、伸長することができるのは当然ではありますが、教員一人一人がもっている実践的知識というものには限界があります。教員は、初任者の段階から他の教員との交流や協働を通してはじめて自己の足らざるを認識して、教員としての成長が図られるものです。つまり、教員は自らの教育実践を捉え直し、他の教員等のもつ知識や技能を自分のものとしていくことにより、自らが実施している教育実践を主体的に再構築するなかで成長すると言えます。

 筆者が、大学を卒業して教壇に立った初めは、教科指導がうまくできない時期がありました。また、担任を担当した2年目には、他のクラスと比べて、自分の受け持つ生徒の心をとらえることのできるクラス経営ができずに悩んでいた時期がありました。こうしたときに声をかけてくださったのが同じ教科や同じ学年等の先生方でした。そうした先生方の勧めで、他の先生方の授業を見せていただき、自己の授業をベテランの先生方に見てもらい、改善点などについてディスカッションを行いました。また、クラス経営についても、他のベテランの担任教員のホームルーム活動を見せていただき、自己の足らざるを認識して、自己変革を行いました。いわゆる「マネ」をする指導、生徒の心をとらえる達人の技を「ヌスむ」ことを積極的に取り入れていきました。こうしたことを通して、自分の壁を乗り越えることができました。そして、他の教員と連携した協働による教育効果が絶大であることに気付いていきました。

学校外との協働を進める学校

 ここまでは、学校内における教員同士の協働関係について述べてきましたが、今の時代、学校に求められていることは、学校と学校外との人材との協働についてです。

 いじめや暴力行為等の問題行動の発生、不登校児童生徒数、特別支援学級・特別支援学校に在籍する児童生徒数、日本語指導が必要な外国人児童生徒数等の増加など、多様な児童生徒への対応を学校は行っています。しかしながら、こうした課題は、複雑に関連し合っていたり困難化を極めており、教員だけで対応することが、質的な面でも量的な面でも難しくなってきています。同時に、子供たちが自ら課題を発見し、解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習の充実など授業革新を図っていくことが学校には求められています。このような中、新たな教育課題に的確に対応し、教員としての本来の職務を着実に遂行していくためには、教員が子供と向き合える時間を確保するとともに、教員一人一人が持っている力を高め、発揮できる環境を整えていくことが急務となっています。

 平成27年12月中央教育審議会答申「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」では、目指すべき連携・協働の姿として、「地域とともにある学校への転換」「子供も大人も学び合い育ち合う教育体制の構築」と「学校を核とした地域づくりの推進」をあげています。その上で、地域全体で未来を担う子供たちの成長を支える仕組みづくりが大切であるとして、子供に対してどのような資質を育むのかという目標を共有して地域社会と学校とが協働することを提唱しています。前号において、外部人材の活用について述べましたが、学校の教員がすべて子供の教育に責任をもつことから生じる教員の多忙を解消する上でも、地域の様々な機関や団体等がネットワーク化を図りながら、学校、家庭及び地域が相互に協力し、地域全体で学びを展開していく「子供も大人も学び合い育ち合う教育体制」を構築することが必要です。こうした取組があってこそ、新学習指導要領が求めている「社会に開かれた教育課程」の実現に結び付くと考えます。本答申で言われている「地域学校協働本部」を教育委員会が本腰を入れて設置することが求められます。

 

 

Profile
明海大学副学長
高野敬三

たかの・けいぞう
昭和29年新潟県生まれ。東京都立京橋高校教諭、東京都教育庁指導部高等学校教育指導課長、都立飛鳥高等学校長、東京都教育庁指導部長、東京都教育監・東京都教職員研修センター所長を歴任。平成27年から明海大学教授(教職課程担当)、平成28年度から現職、平成30年より明海大学外国語学部長、明海大学教職課程センター長、明海大学地域学校教育センター長を兼ねる。「不登校に関する調査研究協力者会議」委員、「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会議」委員、「中央教育審議会教員養成部会」委員(以上、文部科学省)を歴任。

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