スクールリーダーの資料室

ライブラリ編集部

スクールリーダーの資料室 昭和26年学習指導要領を読んでみよう(下)

トピック教育課題

2019.10.12

Ⅴ 学習指導法と学習成果の評価

 学習をする方法と、学習の成果を評価する方法とは、二つながら教育を効果的にするために大いに研究しなければならないことである。したがって、本書においてもこれらについて詳細に述べるべきであろうが、これらについては、すでにいくつかの手びき書も刊行されており、また今後も各教科について詳細なものが編集されることになっているから、ここでは、指導法と評価について重要と思われる点を指摘しておくにとどめたい。

1. 教育課程と学習指導法

 教育課程は、学校の指導のもとに児童・生徒のもつすべての経験や活動の系列であるということは、すでに述べたところである。児童・生徒が望ましい経験を重ね、有効な活動を行うためには、学習内容の計画のみではじゅうぶんではない。学習内容のよい選択とともに、すぐれた指導法がそれに伴わなければならない。前に、学校における学習経験の組織は、それによい指導法が伴わなければならないといったのも、こうしたわけからである。学習指導法が適切に行われることによって、はじめて望ましい知識・理解・態度・習慣・鑑賞・技能を養うことができる。

 指導法は教育内容から離れて、それだけが独立して存在するものではない。内容から離れた方法は、一つの空虚な概念にすぎない。個々の教材をよく研究し吟味することによって、それに最も適した指導法が考え出される。また教育課程が児童・生徒の発達に即さねばならないということは、同時に指導法が児童・生徒の発達に応じたものでなければならないことを意味する。それがために、児童・生徒をよく理解することが有効な指導法を考える基礎となる。すなわち、教材の研究と児童・生徒の理解とは、学習指導法を考える場合の基礎となるものである。このように、教育課程と学習指導法とは密接に結びついている。われわれは常に両者の深い関係を忘れてはならないのである。

2. 学習の指導を効果的に行うには、どんな問題を研究すべきであるか

 学習の指導とは、教師が児童・生徒の学習に協力し、これを援助して、能率的効果的に学習が行われるようにすることである。したがって、よい学習指導が行われるためには、教師としては、次のような問題をじゅうぶん研究する必要があろう。

(a)学習指導の方法は、児童・生徒の発達段階に即して、それに適応するものでなくてはならないこと。
 学習指導の方法には、多様なものがある。しかしすべての方法がすべての学年に適するとはいえない。主として、低学年に有効な方法もあろうし、また、高学年において有効な方法もあろう。また同じ方法でも低学年と高学年とではその取扱いを異にしなければならないであろう。したがって児童・生徒の知的、社会的、情緒的、身体的などの発達段階の特性に応じて、学習指導の具体的な方法をどのようにくふうしたらよいかは、教師にとって基礎的な研究問題である。

(b)学習者に対して、どうしたら学習の目的をじゅうぶんにはあくさせることができるかということ。
 学習者みずからが、今どのような問題を研究しようとしているか、どのような題材の学習に当っているかということを、じゅうぶん自覚していなければ、有効な学習をすすめることはできない。このことは、言い換えれば、児童や生徒が学習の目的をよく理解し、目的に向かって進もうとする意欲をもち、学習の始めから終りまで、この目的意識が持ち続けられなければないないということである。したがって、学習者に学習の目的をはあくさせるには、どうすべきかの研究はきわめてたいせつであるといわねばならない。

(c)学習者の知識や経験的背景についてよく知ること。
 すべての学習は、学習者が既にもっている知識や経験を土台として発展する。したがって、教師は児童や生徒が既にどのような知識や経験をもっているかをよく知って、適切な材料を与えるようにしなければならない。

(d)児童・生徒の思考活動の性質をよく知ること。
 学習は思考のみによって行われるものではないが、その大部分は児童・生徒の思考活動に依存している。したがって、児童や生徒の思考活動の発達、その性質について知らなければ、効果的な学習の指導はできないといえる。

(e)多様な各種の指導法を用いること。
 児童・生徒の学習を刺激するとともに、学習の効果をあげるためには、学習の進行の過程に応じ、教材の性質に応じ、多様な各種の指導法を用いる必要がある。終戦後の教育の新しい展開に伴って、それ以前の指導の方法がすべて否定される傾向があった。しかし、それらの中にも、今日の新しい教育のうちに適切に生かすことによって、じゅうぶん効果的な学習を進めていくことのできる方法もあることを忘れてはならない。また、視覚聴覚の教材・教具を豊富に用いること、学校図書館をじゅうぶんに活用することなどは、児童・生徒の経験を豊かにする上に欠くことができないであろう。

(f)個人差について配慮を怠らないこと。
 児童・生徒は、その興味・能力・必要においてそれぞれ個人差をもっている。教育は個々の児童・生徒の可能な最大限の発達を願って行われるものであるから、個々の児童・生徒のもつ個人差について、じゅうぶんな注意が払われ、それに適応した指導法がとられねばならない。

(g)学習環境の改善をはかること。
 児童・生徒の学習の進歩や、行動の変化は、その環境に左右されるところが多い。児童・生徒の望ましい成長発達を期しうるように、常に学校の設備や施設・材料について、これを改善し、常に合理的でしかも新鮮な学習環境を作り出すようにくふうしなければならないであろう。

(h)常に教師としてののぞましい態度を保つこと。
 教師は、児童・生徒の学習のよき案内者であるとともに、その一挙手一投足は、児童・生徒の成長発達にとっての有効な環境となっている。したがって、教師たるの望ましい資質を身につけ、よい学習のふんい気を作りだすように努めなければならない。

 以上は、研究すべきおもな項目をあげたにすぎない。これらの事項については、さらにいっそうつき進んだ研究を必要とするであろう。この研究のためには、文部省から発行された「小学校における学習の指導と評価」「小学校社会科学学習指導法」「中学校・高等学校における一般学習指導法」は役だつところが多いであろう。

3. 学習成果の評価

 児童や生徒の望ましい成長発達を助けるために、われわれは、教育課程の構成に苦心したり、学習指導法についてくふうしたりする。教育課程や学習指導法が、はたして児童・生徒の望ましい発達に寄与したかどうかということは、児童・生徒のうちに望ましい思考や行動の変化が起ったかどうかによって判断される。ひとりひとりの児童・生徒の思考や行動が教育の目標に照して、どのように変化したか、そして、それは民主的な社会の進歩に対してどんなに役だったかを絶えず反省して行くことが、学習成果の評価の本来の意味である。

 このような評価を絶えず行うことによって、児童・生徒の進歩の程度を知りうるとともに、指導法や教育課程が適切であったかどうかをも反省することができる。したがって、評価を行うことによって、個々の児童・生徒の学習成果を知って、これからの指導の出発点をはっきりさせたり、その指導計画に改善を加えたりする手がかりを見つけだすことができる。こうしたことによって学習指導の効果をいっそう高めることができるのである。

 以上は学習の成果の評価の意味を教師の側から考えたのであるが、これを学習する児童や生徒の側に立って考えてみると、このような評価をするということは、自分の学習がその目ざすところにどれだけ近づいているかを、はっきり知る機会となり、これによってかれらもまた、これからの学習をいかにすべきかを考える材料を得ることができ、学習の効果をあげていくくふうをすることができる。さらにたいせつなことは、児童や生徒は、かれら自身の学習について自己評価を行うことによって、かれら自身のうちに評価の眼を養うことができ、民主的な成員としてのよい資質を得ることができるのである。

 このような評価は、教育の効果を高めるために欠くことのできないものである。しかし、学習成果の評価を、適切に行うためには、評価の観点が正しく教師にとらえられていなければならない。評価の観点は、指導の目標とか、ねらいとかいわれるものと表裏の関係をなすもので、目標をひるがえせば、評価の観点となるものである。したがって、教師としては、指導計画をたてるに当って、指導の目標を具体的にはっきりととらえておく必要がある。学習成果の評価が、往々にして、形式的になったり、その要点を失ったものとなったりするのは、教師が、指導の目標なり、ねらいなりを、学習の対象・教材の性質に応じて、具体的に分析して明確にしていないことに基くことが多い。

 また、評価は、評価しようとする対象に対して、これが正しく行われなければ、その価値を失うことになる。ことに教育の目標がただ児童・生徒の知識や技能を高めることのみならず、民主的な生活のしかたを習得させようとする場合、評価の対象は広く人格の発達の各方面にわたらねばならない。そこで、単に知識や技能の進歩の状況を客観的に調べる方法のみならず、全体的に人格の発達をも判断できる方法を用いねばならない。すなわち評価には、各種の方法があるが、それらを評価の目的に照して適切に用いるとともに、常に人格の全体的発達の観点から、これを総合的に判定することを忘れてはならないのである。

 各種の評価の方法は、それぞれその特色をもつとともに、それぞれの限界をもっている。どの評価の方法も一つだけでは完全とはいえない。われわれは、数多くの評価の方法を研究し、その長所と短所とを知り、いくつかの方法をあわせ用いることによって、学習の成果をあらゆる面から正しくとらえるように努めなければならない。

 個々の評価の方法については、昭和22年度の学習指導要領一般編に詳細に述べられ、またその後文部省から発行されたいくつかの手びき書にも、これを補って詳しく述べられているから、これらの書物をじゅうぶんに参照せられたい。

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