スクールリーダーの資料室

ライブラリ編集部

スクールリーダーの資料室 昭和26年学習指導要領を読んでみよう(下)

トピック教育課題

2019.10.12

学習指導要領 一般編(試案)
昭和26年(1951)改訂版 文部省

Ⅲ 学校における教育課程の構成

3. 年間計画と週計画

 教育課程は、児童生徒のもつ望ましい諸経験の連続的な過程を示すものである。学習指導の計画をたてる場合には、この連続的な過程を大きく三つの側面に分けることができる。一つは、1年あるいはそれ以上にわたる長期の指導計画であって、これを年間計画と呼ぶことができる。次には、数週間または2~3か月にわたる学習活動の計画であって、単元の計画あるいは一つの題材についての指導計画がこれに当る。そして、これらの指導計画は、日々あるいは、1週間を単位としてのさらに細分された指導計画を必要としてくる。

 これらの指導計画の三つの部分は、それぞれの特色をもってはいるが、しかしおのおのが切り離され孤立したものではなく、互に関連をもち、全体として児童生徒の経験の発展を期すものである。

 全体としての指導計画の三つの部分のうち、単元の計画については、すでに述べたから、ここでは、
(1)長期の学習計画
(2)月次計画及び週計画
について述べることにする。

(1)年間計画のたて方

 年間計画は、日課表を作ったり、週計画をたてたりする際に、その背景となる指導計画のわく組であるといえる。文部省や教育委員会でなされる教育課程構成の基準や示唆を手がかりとしながら、各学校では年間をとおしての大まかな指導計画をまずたてる必要がある。

 これには、教科の学習、特別教育活動、その他学校の行うすべての教育活動が含まれ、きわめて包括的な計画である。学校における年間計画は、学校長・教職員などが協力してたてるのであるが、児童・生徒や、地域社会の人々の意見を聞くことも望ましい。たとえば、運動会・学芸会・旅行など、学校の行ういろいろな行事などは、児童・生徒・地域社会の人々の意見を聞くほうが、実情に合致した適切な計画がたてられるからである。

 このような学校全体としての年間計画をもとにして、次にはそれぞれの学級の具体的な年間計画がたてられることになる。

 以下年間計画をたてるに当って考慮すべきおもな事項を掲てみよう。

(a)教育の一般目標や、各教科の目標が、全体としてじゅうぶんに達成されうるように具体化されていること。

 年間計画は、いうまでもなく、教育目標を達成するための、年間をとおしての実践的な学習や活動についての計画である。したがって、前年度の年間計画をそのまま用いたり、無批判に他校の計画を模倣すべきものではなく、それぞれの学校の教育の目標を適切に具体化したものでなくてはならない。また、小学校・中学校・高等学校では、児童・生徒の発達段階の特性から考えて、教育の計画のたて方にも、おのずから違ったものがあろうから、その点をじゅうぶんに考慮しておく必要がある。

(b)各教科の関連をできるだけ考慮すること。

 教科間の連絡がふじゅうぶんであれば、その結果児童・生徒の学習活動は、断片的なものとなり、空隙ができたり、むだな重複があったりすることになる。それをさけるためには、各教科の教材排列や学習する単元の構成や配列において、無理なく関連をはかることのできるものは、できるだけその関連をはかることが必要であろう。児童・生徒の生活経験の発展は、季節や行事と関係するところが多いから、このことを考えて、各教科の学習内容の配列を、関連づけることも、一つの効果的な方法であろう。

(c)年間をとおして、児童生徒の生活経験がどのように発展していくか、その発展の契機となるものを予想して、計画の中に取り入れること。

 児童・生徒の生活は、いろいろな条件に左右されて発展していくといえる。したがってどのような機会に、どのような有効な生活経験が、発展していくかということを予想して計画することは、よい計画をたてるに当って欠くことのできない事がらである。そのためには、たとえば、前にも述べたように、季節の変化に適応した計画であるとともに、いろいろな行事を考慮し、これを適切に取り入れていることが必要となろう。行事には、学校・地域社会・国家・国際社会を単位とした行事もあるし、またいろいろな公共の団体の行う行事、たとえば、さまざまな奉仕活動や、教養や健康を高め生活の安全をはかる行事などがある。さらに学校放送のようにあらかじめ日時の定められたプログラムを指導計画のうちに適切に取り入れることもよいことである。また適切な学習環境の設定をも考慮しておくことがよいであろう。

(d)地域社会の各種の機関との連絡を密接にしておくこと。

 現代の学校教育では、学習は単に、学校内だけで行われるのではなく、広く地域社会を舞台として行われている。児童・生徒は、学習の必要に応じて、地域社会のいろいろな機関や場所に出かけて学習を行う機会が多い。したがって、1年の指導計画をたてるに当っては、あらかじめそれらの公共の機関や団体との連絡をじゅうぶんにとっておく必要がある。どのような時期に、どのような方法で、それらの機関や団体のところに調査や見学のために出かけたり、また、そこからどのような学習の援助を受けるのが適切であるかを調べておくことは、きわめて有効である。そうでなければ、せっかくの計画も不満足に終ったり、あるいは中止しなければならないようなことが起るであろう。

(e)学習する単元や題目が適切に排列されていること。

 単元や学習の題目などを、どのような順序で配列するかの計画は、学校の年間計画の中で重要な位置を占めるものである。単元や題目の配列に当って考慮すべきおもな事項としては、次のものをあげることができる。

(ⅰ)その学年やその教科の目標が、全体としてじゅうぶんに達成されるように、いくつかの単元や題材を選ぶこと。

(ⅱ)単元や題目の相互の間に有機的な、発展的な関係が考えられていること。

(ⅲ)学習内容や学習活動と季節や行事との関連は、無理なく取り上げられる限りにおいて考えること。

(ⅳ)各単元や各題材の指導に配当される時間は、単元や題材の学習内容を考えて適切に定めること。

(ⅴ)単元や題材の配列は、弾力性をもち、児童・生徒の関心や問題の発展に応じて、修正しうるものであること。

(ⅵ)年間計画は弾力性をもち、実施の過程においてたえず改善されうるものであると考えていなくてはならないこと。

 あらかじめたてた年間計画は、決して固定した動かしがたいものであると考えてはならない。実施の過程において、児童・生徒の活動の発展や学校や地域社会の事情から、新しい計画をつけ加えたり、すでに計画したものを修正したりすることができるように、弾力的な計画がたてられる必要がある。

(2)月次計画と週計画のたて方

 月次計画は、あらかじめたてられた年間計画に基いて、およそ、1か月ぐらいを単位として、さらに詳細な具体的な学習指導案をたてるために作られるものである。年間にわたっての計画と異なって、月単位ぐらいであれば、たとえば、学校や地域社会の行事にしても確定してくるし、学習活動の具体的な発展について見とおしもつけやすい。

 年間計画のような長期間の学習指導計画は、長期間にわたっての学習指導計画の見とおしであるだけに、それを実施していった場合に、実際の経過との間にいろいろのずれが生れてくる。したがって、学習指導計画をたてなおしていくことが必要とされる。また実施の結果に基いて反省を加え、あらかじめたてた計画にも、新しい学習活動をつけ加えるとか、実施の順序をかえるというように、具体的に改善をしていく必要も起ってこよう。

 月次計画は、主として右のような理由からたてられるものである。週計画と違って、月単位の計画では、一つの単元、あるいは一つのまとまった学習の題目などの一連の大きなまとまりをもつ学習活動についての全体的な計画がたてやすい場合が多い。

 1週間の指導計画において、各種の学習活動をどのように組み合わせ、それに対してどのように時間を配当するかについては、特別なくふうを必要とする。週計画は、年間計画・月次計画と同じように、小学校と中学校とでは、細部においていろいろな違いがあるから、一様にはいえないが、ここでは週計画をたてるに当って、両者に共通に参考となる基準を示してみよう。

(a)計画は、児童・生徒や学校の必要によって、変えうるような弾力性をもったものであること。

(b)弾力性をもつといっても、児童会・生徒会のような活動、その他の打合せの会などのように定期的に行われる活動は、1週の一定の日に定めておくほうが望ましい。

(c)各週の計画には、特別教育活動の時間配当を、適切に取り入れておく必要がある。

(d)1週の計画の中で、身体的・知的・社会的・情緒的な各方面の経験が全体としてつり合いがとれるようにすること。したがって、各教科の1年間の配当時間は、1週間を単位として定める必要がある。

(e)各教科間の連絡をはかること。教材・教具・教室・運動場の利用・見学・調査の活動、その他の学習活動で教師間の連絡をじゅうぶんにとる必要のあることが多い。したがって、教師間の連絡を密接にすることは指導上必要であり、またそれは効果的であり、能率的でもある。

(f)1週間のうちで、いつ学習の能率が高まるかを考えて、計画をたてること。

 学習の能率は、週の初めよりも、1、2日あとに上昇し、いったん下がってまた週末に近くいくぶん上昇するということがいわれている。このような児童生徒の心身の疲労の度合と、学習のための作業困難度とがよく考え合わされて、1週間の教科配当をすることが望ましい。

 なお、日々の指導計画については、「Ⅱ、1.小学校の教科と時間配当」において述べておいたから、これを参照されたい。

(3)小学校・中学校・高等学校の年間計画および週計画

 前項では、各段階の学校に通ずる指導計画の一般的な事項について述べた。この項では、各段階の学校の指導計画をたてるに当って、特に考慮すべき事項を述べることにする。

(a)小学校の年間計画と週計画

 小学校では、原則としてひとりの教師が、その学級の全教科の指導を行うのがたてまえになっている。したがって、高等学校と比較して、教科間の連絡はとりやすい。しかも、その発達段階から考えて、ことに低学年では、いくつの教科の学習内容を統合して行うほうが効果的な場合がある。小学校の年間計画をたてるに当っては、このような小学校の特殊な事情と、児童の発達段階の特性をじゅうぶんに考慮することが必要である。

 年間を通じての学習指導計画をたてるに当って、よく行われる一つの方法がある。それは教科の関連を強調して、特定の教科、たとえば社会科を中心にして、他の教科の学習内容を統合していこうとするやり方がそれである。自然に関連し、融合しうる学習内容の場合には、他の教科の内容を融合してとり扱うことは効果的であり、能率的であり、また望ましいことであるが、すべての場合に、それが可能であるとはいえない。形の上で統合を求めても、児童・生徒の経験のうちには統合されない場合がある。したがって、かような指導計画をたてる場合には、こどものうちにいかに、経験が統合されるかをよく研究した後になされねばならない。形の上の無理な統合は、学習の効果を高めるゆえんとはならない。

 その他、年間計画や、さらに週計画をたてるに当って考慮すべき事項は、前項で述べた原則的な事がらが小学校に適用しうるであろう。また、日課表や週計画については、Ⅱ、1.小学校の教科と時間配当のところで述べてあるので、それを参照されたい。

(b)中学校の年間計画、週計画

(ⅰ)教科間の連絡
 小学校では、ひとりの教師が、その学級の全教科を担当するのがたてまえであるから、教科間の連絡も、教科の自然の統合もなしやすい。しかし、中学校以上では、教科別担任が原則としてとられているから、ややもすると教科間の連絡がふじゅうぶんとなる。その結果、生徒の学習経験が断片的になって、すきまができたり、むだな重複があったりすることがある。したがって特に中学校以上では、学年や学期の初めに、さらに週の初めに、教師相互の連絡を密にして、各教科の有機的な連関をつけることが必要となってくる。

(ⅱ)選択教科の組合わせ
 中学校においては必修教科と選択教科とがある。もちろん選択教科のうちどれをえらぶかは生徒の自由であるが、生徒が選択する前に、生徒や地域社会の必要に基いてどのような選択教科を学校が設けるのが適当であるかを定めなくてはならない。すなわち、生徒の希望、さらには職員組織や学習に必要な施設、地域社会の必要などを考慮して、それに基いて学校としての可能の範囲を定め、その範囲内においてできるだけ多くの組合せを設ける必要がある。わけても職業・家庭科の仕事の組合せについては特にこの考慮が必要であろう。

(ⅲ)学校保健計画
 保健体育科のうちの健康教育に関する課程は、中学校では70時間以上をこれに当てることになっている。こうした一連の教材をどの学年に配置するか、それが各教科における健康に関する学習とどんな関係にあるか、その学校の全学年を通しての健康教育の計画の中に、どのような位置を占めるかというようなことについて、じゅうぶん考えて計画をたてなければならない。そのためには、学校保健委員会のようなものを設けて、その意見をじゅうぶんに反映させることも一つの方法であろう。

(ⅳ)特別教育活動の計画
 ホーム-ルーム・生徒会・生徒集会・クラブ活動のような教育的に有効な活動についても、あるものは毎週一定の時間に行い、あるものは、特定の時期に行うなど、その地域の事情や生徒の必要に応じて適切な年間計画をたてる必要がある。また、これらの活動と教科の学習との連関、結合についても適切な考慮が払わるべきである。

(c)高等学校の年間計画、週計画

 小学校・中学校の年間計画および週計画において考えた事がらのうち、教科間の連絡をはかるとか、特別教育活動の計画をたてるというようなことは、高等学校の場合にも、じゅうぶん考慮されるべきことである。特に、生徒の学習指導をいっそう効果的にするために、各教師がその担任の教科についての進度の計画をたて、他の教科を担任している教師と連絡をとることは、きわめて必要である。しかし高等学校では、選択教科の範囲が広いこと、および単位制を採用している関係上、年間計画や週計画のうちで学校全体としてなすべき重要なことは、時間割の作成である。そこで次に時間割の作成について述べることにする。これには次のような手順が必要とされよう。

(ⅰ)予備調査
 生徒の素質・能力・興味・将来の志望などを調べ、生徒とその両親と教師との三者で、選択する教科を定めることが必要であろう。そのためには、両親と教師との懇談会を開いて選択制の趣旨を徹底させるとともに、生徒の志望を明確にするために、予備調査表のようなものを用意して、これに記入させ、さらに個別的指導を行う機会をもつことが必要である。

 第1学年では、3年間を見とおして、どんな教科をどんな順序で学習するかを決め、第2、第3学年ではすでに学習した教科とその単位の数とを考慮して決めるのがよいであろう。

(ⅱ)予備登録
(ⅲ)教科と教師と教室の割当を決め、選択表を作成配布する。
(ⅳ)本登録
(ⅴ)以上で、週時間割が決まるが、その際、生徒集会・図書館の使用・クラブ活動・ホーム-ルームの時間などを適当に教科の時間割の中に織りこむことが必要である。

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