絶対満足できる!新しい英語授業

菅正隆

新教育課程実践講座Ⅰ 絶対満足できる!新しい英語授業[第8回]まだ、ALTは必要ですか?財政と授業の狭間で改革が進む!

トピック教育課題

2019.10.31

2.ロボットと英語教育

 今、福岡県の大牟田市立明治小学校では、第3学年で自立型人型ロボットを活用した授業の実証実験を行っている。ロボットの名前はナオ。男性でも女性でもない。外国語活動の毎時間、担任とロボットNAO「ナオ」とのティーム・ティーチングが行われている。実証実験に使用しているナオはフランス製で、身長58cm、体重4.3㎏、19か国語を使いこなし、二足歩行ができ、ダンスや太極拳もできる。AI(人工知能)の機能は入っていないが、日本語でも英語でも対話ができ、英語の発音の正確さについても評価することができる。昔、ALTが「僕はテープレコーダーじゃない」とよく言っていたが、そのALTの役割である発音モデル、対話モデル、リスニングの問題提示等は十分にこなすことができる。この実証実験は私が監修となって、(株)アウトソーシングテクノロジー、NECフィールディング(株)、チエル(株)による共同のプロジェクトである。

 ロボットは、次の理由から導入が決まった。

①大牟田市では、財政難からALT1名のみの雇用となっている。ALTを採用すると、年間約500万円の人件費が発生する。それに対して、ロボットの購入費は約130万円程度。約4年の保証が付くため、ALTは4年雇用した場合約2,000万円の出費に対して、ロボットは4年間で同額の約130万円程度と安価である。

②ALTが1名のため、年間数回程度しか授業に参加せず、英語に自信のない教員には外国語活動の授業は苦痛の種となっている。

③英語導入期に、子供たちの関心・意欲を引き出すための仕掛けを考えていた。

 以上から、実証実験に協力いただくことになった。最近採った子供たちへのアンケートでは、以下のとおりとなっている。

(問1)英語の授業は好きですか。(回答者数:37名)

①好き:36人(97.3%) ②嫌い:0人(0%) ③ふつう:1人(2.7%)

(問2)ナオくんとの授業は楽しいですか。(回答者数:37名)

①楽しい:37人(100%) ②楽しくない:0人(0%) ③わからない:0人(0%)

(問3)ナオくんの言っている英語はわかりますか。(回答者数:37名)

①わかる:14人(37.8%) ②まあまあわかる:19人(51.4%) ③少しわかる:4人(10.8%) ④ぜんぜんわからない:0人(0%)

(問4)もっとナオくんと英語を勉強したいと思いますか。(回答者数:37名)

①思う:37人(100%) ②思わない:0人(0%) ③わからない:0人(0%)

 以上から、子供たちの反応はすこぶる良い。しかし、これらの情意面だけのデータでは、英語力向上への効果が明白ではない。そこで、9月に、対象の37名に対して、インタビューテストを実施した。これは、毎時間ロボットの音声に慣れ親しんでいる子供たちが、実際に外国人に尋ねられたり、英語の堪能な日本人に尋ねられたりしても、十分に対応できるかどうかを調査した。仮説は、「ロボットの話す英語に慣れている子供たちは、外国人や日本人の話す英語にも同様に対応できる」とした。9月、子供たち全員はロボット「ナオ」、英語を母語とする外国人、英語の堪能な日本人から、以下の質問を受けた。

Q1:How are you?

Q2:What day is it today?

Q3:(ロボット)Do you like red?

(外国人)Do you like milk?

(日本人)Do you like baseball?

Q4:(ロボット)What fruit do you like?

(外国人)What food do you like?

(日本人)What color do you like?

Q5:(ロボット)Repeat after me. Thirteen.

(外国人)Repeat after me. Carrot.

(日本人)Repeat after me. Volleyball.

 12月にも、同様のインタビューテストを行って、子供たちの回答の正確さと反応スピードをまとめていく予定にしている。なお、この実証実験の発表会を以下の予定で開催することにしている。

(仮称:内容)小学校英語教育におけるロボットの有効性について

場所:福岡県大牟田市立明治小学校
対象:小学校第3学年「外国語活動」
日時:2019年2月22日(金)午後

 ここで、第6学年でのロボット「ナオ」との授業指導案を提示する。

 

Profile
大阪樟蔭女子大学教授
菅 正隆
かん・まさたか 岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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大阪樟蔭女子大学教授

岩手県北上市生まれ。大阪府立高校教諭、大阪府教育委員会指導主事、大阪府教育センター主任指導主事、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官並びに国立教育政策研究所教育課程研究センター教育課程調査官を経て現職。調査官時代には小学校外国語活動の導入、学習指導要領作成等を行う。

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