教職 その働き方を考える
教職 その働き方を考える[第7回]事務職員の活用・参画
トピック教育課題
2019.10.25
教職 その働き方を考える
[第7回]事務職員の活用・参画
明海大学副学長 高野敬三
●本稿のめあて●
学校には、教員の他、事務職員が配置されています。今回は、この学校事務職員とは何か、その職務にはどのようなものがあるかを詳解します。その上で、学校が多忙化する状況を踏まえて、国がこれまで提言してきた答申等から、学校経営に事務職員がどのように参画することが求められているのかをみていきます。
学校事務職員
学校教育法第37条では、「小学校には、校長、教頭、教諭、養護教諭及び事務職員を置かなければならない」(中学校にも準用)と規定されています。同様に、同法第60条では、「高等学校には、校長、教頭、教諭及び事務職員を置かなければならない」と規定(特別支援学校にも準用)されています。また、平成21年の同法施行規則の一部改正の施行により、これまで、小中学校に事務主任を置くことができるとされていた規定を、新たに、校長の監督を受け、事務職員その他の職員が行う事務を総括する者として、「事務長を置くことができる」ようにしました。なお、高等学校については、従前から、「事務長を置くもの」とされていました(特別支援学校にも準用)。
学校事務職員の定数
それでは、学校事務職員の数はどのような根拠で配当されているかです。学校事務職員の定数については、小中学校と高等学校とでは、異なる法律で定められています。小中学校の事務職員の定数は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(いわゆる「義務標準法」)で規定されています。高等学校の事務職員の定数は、公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(いわゆる「高校標準法」)で規定されています。都道府県や区市町村は、これらを標準として、校長、教頭及び教諭等と併せて、事務職員の定数を条例で定めることとなります。
義務標準法によれば、小中学校への事務職員の定数の基本は1名であり、小学校において27学級以上、中学校において21学級以上であると複数配置(2名)となっています。
また、高校標準法によれば、大雑把に、5学級までであると事務職員定数は2名、6学級から7学級までであると3名、8学級から9学級であると4名となります。
なお、これらはあくまで標準であることから、地方公共団体においては、加配措置を行うこともあります。
小中学校においては、学級数、つまり、児童生徒数と比べ、極めて少ない数の事務職員となっており、区市町村によっては、独自に、区市町村の費用で事務職員を雇用している場合が多いと聞いています。
学校事務職員の職務内容
それでは、学校事務職員の職務にはどのようなものがあるのでしょうか。前号においても述べましたが、事務職員の職務は実に多岐にわたります。学校で行われるほぼすべての教育活動については、事務職員の下支えがあって成り立っています。学校段階や学校規模等によって分掌事務は様々ではありますが、学校の物品管理、施設(営繕を含む)、文書の収受・保存、在学証明など各種証明書の発行、調査統計、児童生徒の入学、転出、卒業、学校徴収金、教科書の給付、学校給食に関わることなどです。
多岐にわたる職務内容ではありますが、不思議なことに、学校事務職員の職務を規定する「標準職務表」を定めている区市町村教育委員会は、全国公立小中学校事務職員研究会が行った調査(平成24年度文部科学省委託事業・学校マネジメントの役割を担う学校事務)によると、16.5%となっており、多くの教育委員会では定めておりません。
事務職員の学校経営への活用・参画
それでは、ここで、学校が社会の変化に対応するため、さらには、事務職員が学校経営に参画するように、国がこれまで出した学校事務に係る提言等をみてみましょう。
平成16年の中央教育審議会(以下、「中教審」)「学校の組織運営の在り方について―学校の組織運営に関する作業部会の審議のまとめ」では、「より効果的、効率的な事務処理を図り」「学校経営の専門スタッフとして中心的な役割を担うことが期待される」として、「事務処理の効率化、標準化や職員の資質向上のため、事務の共同実施を推進する」ことが必要としています。平成19年の中教審答申「今後の教員給与の在り方について」では、「教員が抱える事務負担を軽減するため」「学校運営に一層積極的に関わる」ことや「事務の共同実施の促進」「質の向上のための研修の充実」を求め、「大規模な学校や事務の共同実施組織に事務長(仮称)を置くことができるように」制度を整備することを求めています。この答申により、先に述べた「事務長」が制度化されます。さらには、平成27年の中教審答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」では、「学校の事務が複雑化・多様化していることに伴い、事務職員が、より権限と責任を持って学校の事務を処理することが期待さ」れるとして、事務機能の強化を推進するための事務の共同実施組織の制度の整備を求めています。この答申により、平成29年3月に学校教育法の一部を改正して、事務職員の職務規定を「事務に従事する」から「事務をつかさどる」と文言を改めました。裏を返せば、学校マネジメントの中核となる校長・教頭等の業務負担が増加する状況にあって、学校におけるマネジメント機能を十分に発揮できるようにするため、事務職員がその専門性を生かして、学校の事務を一定の責任を持って自己の担当事項として処理し、より主体的・積極的に校務運営に参画することが求められました。また、同年同月、地教行法と義務標準法の一部改正を行い、学校事務の共同実施が制度化されました。この学校事務の共同実施とは、「日常は各校で勤務している学校事務職員が週1回程度一つの学校に集まるなどして、複数の学校の事務業務を共同で行うもの」で、平成29年度現在、34の都道府県、12の政令市、1137の区市町村で実施されています。
これまでみてきたように、今後、学校事務職員が学校経営に積極的に関与することが求められてくるため、何といっても、小中学校では1人が基本である定数について法令上の見直しをする必要があります。また、定数の見直しを図るとともに、教員の多忙化の解消のため、新たに、教員が授業に専念できるようにするため、様々な文書事務などを担当する「スクールセクレタリー」などの創設も期待したいところです。
Profile
明海大学副学長
高野敬三
たかの・けいぞう 昭和29年新潟県生まれ。東京都立京橋高校教諭、東京都教育庁指導部高等学校教育指導課長、都立飛鳥高等学校長、東京都教育庁指導部長、東京都教育監・東京都教職員研修センター所長を歴任。平成27年から明海大学教授(教職課程担当)、平成28年度から現職、平成30年より明海大学外国語学部長、明海大学教職課程センター長、明海大学地域学校教育センター長を兼ねる。「不登校に関する調査研究協力者会議」委員、「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会議」委員、「中央教育審議会教員養成部会」委員(以上、文部科学省)を歴任。