ミドルリーダーが創るこれからの学校

大脇康弘

ミドルリーダーが創るこれからの学校 第9回 スクールリーダーの「学びの場」をつくる

トピック教育課題

2019.07.12

ミドルリーダーが創るこれからの学校 

第9回 スクールリーダーの「学びの場」をつくる
『新教育課程ライブラリ Vol.9』2016年9月

スクールリーダー・フォーラムを紡ぐ

 猛暑が続く夏、筆者は秋のスクールリーダー・フォーラムに向けた諸準備、特にフォーラム冊子の編集作業に取り組んだ。スクールリーダー・フォーラム(SLF)は、学校づくりを支援しスクールリーダーを育成するために、スクールリーダーの「学びの場」を創る取組みである。2002年度に創設されてから現在まで毎年度1回(2003年度は2回)開催され、2016年度で第16回となる。運営主体は大阪教育大学・大阪府教育委員会・大阪市教育委員会合同プロジェクトであり、三組織の企画委員から構成される企画会議が推進組織となる。また、近年では福井大学、鳴門教育大学の各教職大学院の参加・報告を得ている。

 フォーラムでは、スクールリーダーが学校づくり実践を対象化し、省察し、再構成する営為を協働して取り組むことを軸に、テーマに関する理論・政策・実践が連関するようにプログラムを構成する。

 第16回フォーラムのテーマは「学校のコラボレーション:協働・持続・創発」である。学校における教職員の協働は常に課題とされてきたが、学校の専門人材(養護教諭、スクールカウンセラー:SC、スクールソーシャルワーカー:SSW、キャリアカウンセラー:CC)と教職員の協働、学校ボランティアと教職員の協働、さらには学校と地域の連携協力など、学校づくりの実践は新たな段階に入っている。つまり、学校の内なる協働に加えて、学校の内と外を結ぶ連携協力が問われているのである。そこでは、専門人材が教育と医療・福祉・社会を結ぶマージナルパースン(境界人)となり、新たな教育体制、学校づくりの一歩となるかもしれない。教職員と専門人材の「多職種協働」について理論的・実践的考察が求められている。

 フォーラムの基調講演者は水本徳明・同志社女子大学教授で「学校のコラボレーションを拓くのはけっこう大変なのだ、でも頑張ろう」との原稿が寄せられている。また、学校現場からの発信として、大阪市立咲くやこの花中学校高等学校校長の森知史氏が併設型中高一貫教育校の実践を報告し、大阪府立港高等学校校長の吉田景一氏が同窓会とコラボしたキャリア教育の実践を報告する。その後、大阪独自の「ピアノとチェロの共演」をフロアで体感する。以上の第一部を受けて、第二部はラウンドテーブル形式で報告者30名が学校づくりにおける協働の実践をじっくり語り・聴くことになる。180分間の取組みはあっという間に過ぎて、末松裕基・東京学芸大学講師による総括講演「学校のコラボレーションへの挑戦」によってまとめと掘り下げが行われる。

「チームとしての学校」について

 今回のフォーラムのテーマは、中央教育審議会答申「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」(2015.12.21)とも深く関係している。答申は、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)で明らかにされた、教員の厳しい教育労働環境を改善するために、教職員と専門人材の「多職種協働」を「チームとしての学校」というコンセプトに落とし込んだ点で注目される。

 「チームとしての学校」像とは、「校長のリーダーシップの下、カリキュラム、日々の教育活動、学校の資源が一体的にマネジメントされ、教職員や学校内の多様な人材が、それぞれの専門性を生かして能力を発揮し、子供たちに必要な資質・能力を確実に身に付けさせることができる学校」と答申は述べている。

 そのために、多職種の専門人材を学校に導入し、教職員と役割分担し、連携協働することによって、教職員が教育活動に専念できる体制を作るとする。そして、管理職は学校をマネジメントする能力を高めることが求められるとする。

 けれども、答申が施策化することによって、学校の個業―分業・協業システム、教員の役割と活動がどのように転換するのかについて言及することを避けている。これまでの教職員の協働と、教職員と専門人材の「多職種協働」が並列する形で記載されているのである。

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特集 カリキュラムからみる不登校対応

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大脇康弘

大阪教育大学連合教職大学院教授

教育経営学・教師教育学専攻。大学・教育委員会の連携事業としてスクールリーダー・フォーラム事業を組織し、日本教育経営学会実践研究賞を受賞。『学校をエンパワーメントする評価』『「東アジア的教師」の今』『学校を変える授業を創る』など。

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