個を生かした教育課程編成の在り方

トピック教育課題

2019.07.01

通常の学校における特別支援教育についても学校の教育目標が重要

 通常の学校においても、個に応じた教育課程を編成する上で、学校の教育目標が重要であることは変わりがない。

 特別支援学級においては、学校の教育目標を踏まえた学級の目標を明確にし、学級の目標を踏まえて、教科・領域等の目標を設定し、個に応じた指導を行う必要がある。加えて、特別支援学級においても、当該学年の通常の学校の学習指導要領に準じた教育課程を編成するのが原則であるので、当該学年の目標もしっかりと把握し、同学年の通常の学級の目標と遊離することがないようにしなければならない。学校内でのインクルーシブ教育を進める上で、交流及び共同学習は極めて重要であり、そのためには、特別支援学級と通常の学級が相互に共通認識を持つことが必要となるが、その要となるのが学校の教育目標であることを意識しなければならない。

 通級指導教室の場合は、子どもが一定時間、通常の学級を離れることによる疎外感が生じることがないように留意したい。通級による指導では個に応じた指導を行いやすいが、在籍する通常の学級における学習を念頭に入れて、子どもの全体的な教育課程の中に、通級における指導内容を位置付けなければならない。通級による指導においては、特別支援学校学習指導要領を参考にして自立活動等を行う場合と各教科の内容の補充を行う場合があるが、いずれにおいても在籍する通常の学級の目標や教科等の目標と関連させながら、指導内容・方法を個別に検討する必要がある。

 通級による指導の対象ではないが、支援を必要とする通常の学級に在籍している子どもについても、学校の教育目標を核にした教育課程の編成が求められる。基本的には、図1の特別支援学校における場合の「部の目標」をカットすれば、この概念図を適用することが可能となろう。特に図1の右の流れを重視し、子どもの特性に応じて個別にできるだけ多くの子ども像を描いて、個に応じた教育課程を編成する必要がある。

PDCAのサイクルに基づく個に応じた教育課程の見直し

 特別支援学校においても通常の学校においても、学校の教育目標を核にすることが重要になるが、常にPDCAサイクルを通して、学校の教育目標から個別の目標に至る系統性や構造を見直す必要がある。その際には、学校の教育目標には、法令等に定められた目的や目標を踏まえるというトップダウンの側面と、地域や学校や子どもの実態に即したものであるというボトムアップの側面の両者を念頭に置かなければならない。

 学校の教育目標には継続性が求められるが、個に応じた教育課程編成の中核をなすものであるので、図1に示すような系統化や構造化が難しい場合は、学校の教育目標の再検討を早急に行う必要がある。

 個に応じた指導を行う際には、「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」が重要となるが、学校の教育目標を意識した作成・活用が求められる。「木を見て森を見ず」ということに陥らないように、個は学校全体の教育課程の中に位置付いて、初めて生きて輝くという視点を忘れないでほしい。

 

Profile
上越教育大学教授
河合 康
かわい・やすし 筑波大学大学院博士課程心身障害研究科単位取得。筑波大学文部技官、上越教育大学准教授等を経て、現在上越教育大学臨床・健康教育学系教授、特別支援教育実践研究センター長。平成25-26年度、上越教育大学附属小学校長。専門は特別支援教育の行政・制度・歴史・教育課程。主な著書としては、『理解と支援の特別支援教育』コレール社(共著)、『特別支援教育ー理解と推進のために』福村出版(共著)、『よくわかる障害児教育』ミネルヴァ書房(共著)等。

 

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