Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第1回] 授業内での活用から日常的なICTの活用へ
トピック教育課題
2021.10.04
Q&A どうなる! どうする? GIGAスクール[第1回]
授業内での活用から日常的なICTの活用へ
[回答者]放送大学教授 中川一史
(『新教育ライブラリ Premier II』Vol.1 2021年4月)
Q
1人1台端末は、これまでのような共有のコンピュータとは違い、いつも子どもたちの手元にあります。どのような活用場面を想定すれば良いのでしょうか。
A
ご質問にありますように、GIGAスクール前の学校で40台くらいを使いまわして共有で使っていたPCと、手元にあって常時使える1人1台端末は、まったく使い方が異なります。
これまで、学校でのPCは、授業内での効果的な活用のみを想定してきました(図1の①)。全校で共有しているので、なかなか1人1台で活用できる機会も少なく、ここぞ! というところだけでしか使えなかったからです。しかし、今後、占有になることで、日常的に活用することが可能になりました(図1の④)。いつも全員が同時に使うことばかり想定するのではなく、ある子だけ、気になる情報収集を自分の端末でちょっとだけ行う、ある子は紙のワークシートでまとめているけどある子は端末でまとめている、そういうことも当たり前にしていきたいものです。
文部科学省が2020年に公開した「GIGAスクール構想の実現へ」では、「すぐにでも・どの教科でも・誰でも使えるICT」として、「検索サイトを活用した調べ学習」「文章作成ソフト、プレゼンソフトの利用」などが例として紹介されています(図2)。これらの活用頻度を上げることで、だんだん検索の仕方やプレゼン資料作成も上手になっていくものと思います。
また、占有の端末になるということは、授業以外での活用(図1の②③)も積極的に進めていきたいものです。日常的な活用は、これまでの限られた台数での端末活用の際には、あまり着目されなかった箇所でもあります。学校内でも、朝の会、休み時間、クラブ活動などでの活用が想定できます。授業で調べきれなかったことをアクセスしたり、まとめきれなかったレポートの続きを作成したりするなどが考えられます。また、委員会活動の際に、「今日は使うかもしれないな」と、自分で判断して持参するなども考えられます。また、家庭への持ち帰りも、多くの自治体や学校へ今後広がりそうです。学校と家庭をどうつないでいくのか、今後検討が必要です。
いずれにしても、整備当初は、子どもたちにも「端末への目新しさ」がとれません。気になって仕方がないだろうし、いろいろな使い方の問題も出てくると思います。しかし、そのインターバルを経ないと、当たり前に使う状態にはなりません。これは大人でも同じですよね。
文部科学省が2020年に公開した「教育の情報化に関する手引き(追補版)」によりますと、「(略)これからの学びにとっては、ICTはマストアイテムであり、ICT環境は鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識し、その整備を推進していくとともに、学校における教育の情報化を推進していくことは極めて重要である」と、示しています。文房具と同様に子どもたちにとって不可欠なものになるには、できるだけ使いづらい状況を排除しながら、子ども一人ひとりに寄り添っていくことが大事です。
子どものツールへの関わり方も、授業そのものの在り方も、GIGAスクール構想が、これらを再考する機会になることを心から望んでいます。
[参考文献]
●文部科学省(2020)「GIGAスクール構想の実現へ」https://www.mext.go.jp/a_menu/other/index_00001.htm(2021.03.25取得)
中川一史・赤堀侃司編著『GIGAスクール時代の学びを拓く! PC1人1台授業スタートブック』(2021年4月、ぎょうせい)
Profile
中川 一史 なかがわ・ひとし
横浜市の小学校教師、教育委員会、金沢大学助教授、メディア教育開発センター教授を経て2009年より現職。博士(情報学)。内閣府「青少年インターネット環境の整備等に関する検討会」委員、文部科学省「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」委員、教科書研究センター「デジタル教科書に関する調査研究委員会」委員長他、教育の情報化に係る多数の委員を歴任。最近の編著書に『GIGAスクール時代の学びを拓く!PC1人1台授業スタートブック』(2021年、ぎょうせい)。