最新 教育課題解説ハンドブック

ぎょうせい

『最新 教育課題解説ハンドブック』Q&A 携帯電話等をめぐる問題

学校マネジメント

2020.12.18

『最新 教育課題解説ハンドブック』
〈スクール・マネジメント〉

教育課題研究会(代表:石塚等・横浜国立大学教職大学院教授)/編

『最新 教育課題解説ハンドブック』

◆携帯電話等をめぐる問題

Q 文部科学省は、令和2年7月31日付けで「学校における携帯電話の取扱い等について(通知)」を公表し、中学校においては条件付きで持ち込み容認へと方針を転換しました。この通知の趣旨と携帯電話をめぐる問題について説明してください。

1  通知の趣旨

 これまで児童生徒の学校における携帯電話の取扱いに関する方針等については、「児童生徒が利用する携帯電話等をめぐる問題への取組の徹底について(通知)」(平成20年7月25日付け20文科初第49号初等中等教育局長、スポーツ・青少年局長)及び「学校における携帯電話の取扱い等について(通知)」(平成21年1月30日付け20文科初第1156号初等中等教育局長)の通知が示されていました。これらの通知が示された当時、児童生徒による携帯電話のメールやインターネットの利用が増加するに伴い、学校非公式サイト(いわゆる「学校裏サイト」)等において「ネット上のいじめ」が起こったり、また、いわゆる出会い系サイト等の有害情報を介して犯罪に巻き込まれたりするなどの問題が深刻化し、防止・解決策と指導体制の強化が求められました(以下「平成21年通知」)。

 上記の通知から約10年を経て、今日は、一方で自然災害発生時や児童生徒が犯罪に巻き込まれたときなどに、携帯電話を緊急の連絡手段として活用することの期待も高まっています。令和元年5月、文部科学省「学校における携帯電話の取扱い等に関する有識者会議」が設置され、関係諸団体からのヒアリングを経て、7月に「審議のまとめ」が公表されました。これを踏まえて文部科学省は、「学校における携帯電話の取扱い等について(通知)」(令和2年7月31日付け2文科初第670号初等中等教育局長)を発しました(以下「令和2年通知」)。

2  「平成21年通知」の内容

 「平成21年通知」では大きく5点が示されていました。第一に、「携帯電話等の利用の実態の把握について」です。児童生徒が携帯電話の使用に過度に依存している状況や携帯電話を通じたいじめが生じること、そして場合によっては犯罪等に巻き込まれたりするなど、多くの問題が生じています。児童生徒の携帯電話等に関する利用実態の把握に努めることが求められています。

 第二に「学校における携帯電話の取扱いに関する方針の明確化について」です。通知の中では「指針例」を示し、「発達段階を考慮し、小中学校においては、学校への児童生徒の携帯電話の持ち込みについては、原則禁止とすること」、「児童生徒の通学時における安全等の観点等特別やむを得ない事情から、携帯電話の学校への持ち込みが必要と判断される場合は、学校長の判断により、例えば居場所確認や通話機能に限定した携帯電話の持ち込みを可能とすること」、「学校への持ち込みを認める場合には、校内での使用を禁止したり、登校後に学校で一時的に預かり、下校時に返却したりするなど、学校での教育活動に支障がないように配慮すること」とし、これら「指針例」に基づき、学校において指針を作成・実施するに当たっては、保護者等へ周知し、理解を得た上で、協力体制を構築することの重要性を指摘しています。

 第三に「『ネット上のいじめ』等に関する取組の徹底について」です。いじめにつながる書き込みが掲示板やメールを用いてなされるなど、携帯電話の使用が密接に関わってきたと言えます。

 第四に「学校における情報モラル教育の取組について」です。課題としては、学校全体及び家庭との連携によって取り組んでいくこと、「各教科等の指導の中で、小学校低学年から発達段階に応じて」取り扱う必要があること、また、その際、文部科学省の作成による「指導モデルカリキュラム」や「指導事例」等を教材として有効活用することが指摘されています。

 第五に「有害情報に関する啓発活動の推進について」です。国及び地方公共団体は「青少年有害情報フィルタリングソフトウェア」の普及を図ることや「インターネットの適切な利用に関する広報啓発等を行うこと」は、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(平成20年6月18日)において明示されています。

3  中学校での一定条件による許可(「令和2年通知」追加事項)

 携帯電話の使用については、原則の考え方は「平成21年通知」と同様と言えます。しかし、すでに指摘したように自然災害発生時や児童生徒が犯罪に巻き込まれたときなどに、携帯電話を緊急の連絡手段として活用することの期待も高まってきました。そして前出の有識者会議での協議を経て「令和2年通知」においては、特に中学校における携帯電話の取扱いについて、以下のことが追加されたことが大きな特徴と言えます。

 第一に「生徒が自らを律することができるようなルールを、学校のほか、生徒や保護者が主体的に考え、協力して作る機会を設けること」。第二に「学校における管理方法や、紛失等のトラブルが発生した場合の責任の所在が明確にされていること」。第三に「フィルタリングが保護者の責任のもとで適切に設定されていること」。第四に「携帯電話の危険性や正しい使い方に関する指導が学校及び家庭において適切に行われていること」。

 これらの事項について、学校と生徒・保護者との間で合意がなされ、必要な環境の整備や措置が講じられていることが求められます。そしてこれら一定の条件を満たした上で、学校又は教育委員会を単位として持込みを認めるものとなりました。

 なお、「令和2年通知」では、特別支援学校について「各学校及び教育委員会において、学校及び地域の実態を踏まえて判断すること」とし、「その際、学校での教育活動に支障がないよう配慮すること」が明記されました。

◉ポイント
1.携帯電話について、児童生徒による利用の実態を把握し、学校での取扱いの方針を明確にする必要がある。特に「ネット上のいじめ」について対策を講じるとともに、情報モラル教育を実践していく必要がある。

2.「令和2年通知」では、中学校については条件を満たした上で持込みを認める方針を示している。携帯電話の正しい管理方法やフィルタリング措置等の対策が条件となっている。特に、学校と生徒・保護者が共通理解の上、合意することが必要かつ重要である。 

                                                                     [加藤 崇英]

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