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Q&Aスクール・コンプライアンス

菱村幸彦

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選 Q24 教員の兼職・兼業には、どのような制約がありますか。

NEW学校マネジメント

2020.11.26

最新 Q&A スクール・コンプライアンス120選
第1章 教職生活のコンプライアンス

菱村 幸彦
国立教育政策研究所名誉所員

『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選』2020年10月

Q24 教員の兼職・兼業には、どのような制約がありますか。

◯二足のわらじは原則禁止

 本業以外に他の仕事をすることを「二足のわらじを履く」といいます。サラリーマン社会では、二足のわらじを履くと、とかく批判を受けやすいものです。

 かの森鷗外も軍医として陸軍省に勤めながら、文筆活動をするというので、いろいろ批判を受けたといいます。森鷗外とならべるのはおそれ多いですが、私も30代から勤務のかたわら教育雑誌にものを書いてきました。ただ、在職中は本務を疎かにしているという批判を招かないよう、職場では原稿を書かないなど、常に気を配ってきました。

 これは教師も同じです。教師が本務の他の仕事をするときは、本務を疎かにしていると思われないよう注意する必要があります。それに兼業には一定の手続がありますから、定められた手続をとることが必要です。

 かつて、都立高校の定時制課程の教員が許可を受けずに、私立大学の講師を兼ねているのが発覚し懲戒処分を受けたことがありました。これは無断で兼業したのがいけないのであって、正式に教育委員会の許可を受けていれば、問題にならなかったケースです。

 では、教員の兼業は、どのような制約があるのでしょうか。

 まず、公務員が本務以外の仕事を兼業することは、原則的に禁止されています。この点について、地方公務員法は、「職員は、任命権者の許可を受けなければ......営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」(38条)と定めています。

 法律の文章はややこしいですが、分かりやすく言い直すと、公務員は、任命権者の許可なしでは、①営利会社や営利団体の役員になってはいけない、②自ら営利企業を営んではならない、③報酬を得て他の仕事をしてはならない、ということです。

 公務員の兼業を原則として禁止する理由としては、①本務の遂行に能率の低下を招くおそれがある、②職務上の利害関係が生じるおそれがある、③職務の品位を損ねるおそれがあることなどが挙げられます。

 しかし、一切の兼業が禁止されるわけではありません。任命権者の許可を受ければ、公務員も本務以外の仕事をすることができます。

◯公立学校教員の特例

 公立学校の教員については、一般の公務員とは違った扱いとなっています。教育公務員特例法に特例規定があって、兼業の制約が一般の公務員より緩められているのです。

 教育公務員特例法17条は、「教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者(県費負担教職員については市町村教育委員会)において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる」と定めています。

 ここで注目すべき点は、地方公務員法が、「従事してはならない」と兼業禁止を前提としているのに対して、教育公務員特例法は「従事することができる」と兼業肯定を前提としていることです。

 つまり、教員の場合は、「教育に関する職」や「教育に関する事業」であるなら、原則として、兼業をしてもいい、しかも兼業先から給与を受けてもいい、というわけです。

 

 

Profile
菱村 幸彦(ひしむら・ゆきひこ)
京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課 長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等 学校長などを歴任。現在、国立教育政策研究所名誉所員。
著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ 教育法規』(教育開発研究所)、『管理職のためのスクール・コンプライアンス』(ぎょうせい)、『戦後教育はなぜ紛糾したのか』(教育開発研究所)、 『はじめて学ぶ教育法規』(教育開発研究所)、『やさしい教育法規の読み方』 (教育開発研究所)など多数。

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最新 Q&Aスクール・コンプライアンス120選 ハラスメント、事件・事故、体罰から感染症対策まで

2020年10月 発売

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菱村幸彦

菱村幸彦

国立教育政策研究所名誉所員

京都大学法学部卒業。昭和34年文部省入省。教科書検定課長、高等学校教育課長、総務審議官、初等中等教育局長、国立教育研究所長、駒場東邦中学校・高等学校長などを歴任。著書に『校長が身につけたい経営に生かすリーガルマインド―身近な事例で学ぶ教育法規』『はじめて学ぶ教育法規』『やさしい教育法規の読み方』(いずれも教育開発研究所)など多数。

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